104
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
28行目: | 28行目: | ||
近年、時間相関単一光子計数法とpulsing laserの相性の良さから、時間分解能の向上により、蛍光寿命を比較的短時間で取得することが可能となった。 蛍光寿命は、GFPおよびそのcolor variantタンパクでは、1-5 nsec、希土類錯体などは、1µsec、pyren coronenなどは、400, 200 nsecである。上述のように、FRETが起きると蛍光寿命を表す減衰曲線の傾きが変わる。これを基にFRETを観察する。 | 近年、時間相関単一光子計数法とpulsing laserの相性の良さから、時間分解能の向上により、蛍光寿命を比較的短時間で取得することが可能となった。 蛍光寿命は、GFPおよびそのcolor variantタンパクでは、1-5 nsec、希土類錯体などは、1µsec、pyren coronenなどは、400, 200 nsecである。上述のように、FRETが起きると蛍光寿命を表す減衰曲線の傾きが変わる。これを基にFRETを観察する。 | ||
=== | === その他の検出方法 === | ||
====Anisotropyを測定する方法==== | |||
一つの蛍光団のストークスシフトが小さい場合、励起スペクトルと蛍光スペクトルの重なりが大きい。このような蛍光団では、同一の蛍光団同士で、Homo-FRETが生じる。Homo-FRETは、蛍光強度および蛍光寿命は変化しないが、異方性が変わる。この原理を用いて、一般的には、分子同士のクラスターの度合いなどに応用されている。 | |||
<br> | <br> | ||
35行目: | 42行目: | ||
<br> GFPのcolor variant、CFPおよびYFPなどの開発以来、FRETは積極的に細胞内イメージングに取り入れられ始めた。1997年、Miyawakiらによって、Calcium indicator, Cameleonが開発され<ref><pubmed>9278050</pubmed></ref>、さらに、cAMP, cGMP<ref><pubmed>11140757</pubmed></ref>, リン酸化を初めとした細胞内シグナル伝達の重要なターゲット分子のFRETプローブが次々と作製され、細胞内の活性の局在などの解明に大きく貢献してきた。 脳神経分野においては、林らが、2000年初期に記憶の最小単位分子と言われているカルシウムカルモデュリンキナーゼII (CaMKII)の活性<ref><pubmed>15788767</pubmed></ref>、シナプスの構造を制御するactinの重合を可視化するためのFRETプローブが開発された<ref><pubmed>15361876</pubmed></ref>。1990年代後半からの2光子顕微鏡の発達により、神経回路ネットワークを保持したスライスおよびin vivoで神経活動を観察可能になり、脳のスライスにおいては、波長依存的な蛍光の吸収が生じるため、DonorとAcceptorの2波長を測定する蛍光強度比を測定するよりも、蛍光の散乱、吸収によって変化しない蛍光寿命測定法が発達してきている。安田グループは、蛍光寿命測定を基に、神経細胞樹状突起上の微小構造、棘突起(スパイン)において、スパインの構造的変化を誘導するシグナル伝達分子の活性化の変化を観察することに成功している<ref><pubmed>19295602</pubmed></ref><ref><pubmed>18556515</pubmed></ref><ref><pubmed>21423166</pubmed></ref>。 マウス個体においては、神経回路ネットワークにおけるシナプスの役割を解明する目的で、フェレットにCaMKII probeを導入し、神経回路ネットワークに変化を起こした時のCaMKIIの活性化の変化を観測している例がある<ref><pubmed>22160721</pubmed></ref>。また、神経活動をモニターする目的で、膜電位プローブVSFP2.3/2.42によって、マウスのヒゲ刺激による入力先であるbarrel cortexでの入力特異的な神経の活性化が観察されている。 神経細胞内のカルシウム濃度を測定するために、オレゴングリーンの蛍光寿命の変化から、カルシウム濃度を測定し、アストロサイトでのカルシウム濃度が、アルツハイマー様マウスと正常マウスで違うことが報告されている<ref><pubmed>19251629</pubmed></ref>。 | <br> GFPのcolor variant、CFPおよびYFPなどの開発以来、FRETは積極的に細胞内イメージングに取り入れられ始めた。1997年、Miyawakiらによって、Calcium indicator, Cameleonが開発され<ref><pubmed>9278050</pubmed></ref>、さらに、cAMP, cGMP<ref><pubmed>11140757</pubmed></ref>, リン酸化を初めとした細胞内シグナル伝達の重要なターゲット分子のFRETプローブが次々と作製され、細胞内の活性の局在などの解明に大きく貢献してきた。 脳神経分野においては、林らが、2000年初期に記憶の最小単位分子と言われているカルシウムカルモデュリンキナーゼII (CaMKII)の活性<ref><pubmed>15788767</pubmed></ref>、シナプスの構造を制御するactinの重合を可視化するためのFRETプローブが開発された<ref><pubmed>15361876</pubmed></ref>。1990年代後半からの2光子顕微鏡の発達により、神経回路ネットワークを保持したスライスおよびin vivoで神経活動を観察可能になり、脳のスライスにおいては、波長依存的な蛍光の吸収が生じるため、DonorとAcceptorの2波長を測定する蛍光強度比を測定するよりも、蛍光の散乱、吸収によって変化しない蛍光寿命測定法が発達してきている。安田グループは、蛍光寿命測定を基に、神経細胞樹状突起上の微小構造、棘突起(スパイン)において、スパインの構造的変化を誘導するシグナル伝達分子の活性化の変化を観察することに成功している<ref><pubmed>19295602</pubmed></ref><ref><pubmed>18556515</pubmed></ref><ref><pubmed>21423166</pubmed></ref>。 マウス個体においては、神経回路ネットワークにおけるシナプスの役割を解明する目的で、フェレットにCaMKII probeを導入し、神経回路ネットワークに変化を起こした時のCaMKIIの活性化の変化を観測している例がある<ref><pubmed>22160721</pubmed></ref>。また、神経活動をモニターする目的で、膜電位プローブVSFP2.3/2.42によって、マウスのヒゲ刺激による入力先であるbarrel cortexでの入力特異的な神経の活性化が観察されている。 神経細胞内のカルシウム濃度を測定するために、オレゴングリーンの蛍光寿命の変化から、カルシウム濃度を測定し、アストロサイトでのカルシウム濃度が、アルツハイマー様マウスと正常マウスで違うことが報告されている<ref><pubmed>19251629</pubmed></ref>。 | ||
また、報告数は少ないが、神経分野にて、Homo-FRETも応用されている。例として、CaMKIIは、dodecamerを形成しているが、異方性の変化を基に、その構造中にdimerの単位が存在し、活性化に伴うdimer同士の位置関係が変化することが明らかにされている<ref><pubmed>0901913106</pubmed></ref>。 | |||
== 将来展望 == | == 将来展望 == |
回編集