「Förster共鳴エネルギー移動」の版間の差分

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== 原理 ==
== 原理 ==


図1のヤブロンスキーダイヤグラムのように、Donorの蛍光団の電子が、励起光により基底状態から励起状態に励起される。励起された電子は、回転エネルギーや振動エネルギーを失いながら、励起状態の底まで行き着く。その後、基底状態に戻る際に、蛍光としてエネルギーを放出する。蛍光の減衰曲線は、速度定数をkとして、図2のように表すことができる。今、Donorの近傍(数nmオーダー)に、Donorの蛍光スペクトルと重なる励起スペクトルを持ったAcceptorが存在するとFRETが起きる(図3)。FRETの起きる速度をKf、Donorの蛍光速度はK-Kfとなり、蛍光寿命の減少、Donorの蛍光強度の減少、Acceptorの蛍光の増加などが観察される。  
図1のヤブロンスキーダイヤグラムのように、Donorの蛍光団の電子が、励起光により基底状態から励起状態に励起される。励起された電子は、回転エネルギーや振動エネルギーを失いながら、励起状態の底まで行き着く。その後、基底状態に戻る際に、蛍光としてエネルギーを放出する。蛍光の減衰曲線は、速度定数をkとして、図2のように表すことができる。今、Donorの近傍(数nmオーダー)に、Donorの蛍光スペクトルと重なる励起スペクトルを持ったAcceptorが存在するとFRETが起きる(図3)。FRETの起きる速度をKfとすると、Donorの蛍光速度はK-Kfとなり、蛍光寿命の減少、Donorの蛍光強度の減少、Acceptorの蛍光の増加などが観察される。  
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FRETの速度定数Kfは、以下の式で規定される。  
FRETの速度定数Kfは、以下の式で規定される。  
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ここで、KDは、Donor蛍光の速度定数、QDはDonorの蛍光の量子収率、kは、DonorとAcceptorの双極子モーメントの相対的関係、rはDonorとAcceptorの距離、Nは、アボガドロ数、nは溶媒の屈折率、FDは、規格化したDonorの発光強度、εAはAcceptorのモル吸光係数。
ここで、<math>k_D<\math>は、Donor蛍光の速度定数、<math>Q_D<\math>はDonorの蛍光の量子収率、、<math>kappa<\math>は、DonorとAcceptorの双極子モーメントの相対的関係、、<math>r<\math>はDonorとAcceptorの距離、N、<math>N<\math>はアボガドロ数、、<math>n<\math>は溶媒の屈折率、、<math>F_D<\math>は、規格化したDonorの発光強度、<math>epsilon_A<\math>はAcceptorのモル吸光係数。


<br> 実際に、変数となりうるのは以下の性質である。
<br> 実際に、変数となりうるのは以下の性質である。
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1.距離r。式が示すように距離の6乗に反比例する。FRET効率が50%になるときの距離を、フェルスター距離(Förster distance)という。
1.距離r。式が示すように距離の6乗に反比例する。FRET効率が50%になるときの距離を、フェルスター距離(Förster distance)という。
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2.Donorの蛍光の遷移双極子モーメントとAcceptorの遷移励起光のための双極子モーメントの相対配向。フルオレセインなど、等方的に蛍光の放射が起きる場合には、κ^2=2/3であるが、GFPをはじめとした配向の定まった蛍光タンパク質などは、各々の値を取る。
2.Donorの蛍光の遷移双極子モーメントとAcceptorの遷移励起光のための双極子モーメントの相対配向。フルオレセインなど、等方的に蛍光の放射が起きる場合には、<math>kappa^2<\math>=2/3であるが、GFPをはじめとした配向の定まった蛍光タンパク質などは、各々の値を取る。
   
   


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==神経科学分野への応用 ==
==神経科学分野への応用 ==


<br> 1992年、緑色蛍光タンパク質(Green fluoresent protein: GFP)のクローニングに始まり、青色蛍光タンパク質CFP、黄色蛍光タンパク質YFPなどの開発以来、FRETは積極的に細胞内イメージングに取り入れられ始めた。1997年、宮脇、Tsienらによって、CFPおよびYFPを利用した、Calcium indicator, Cameleonが開発され<ref><pubmed>9278050</pubmed></ref>、さらに、cAMP, cGMP<ref><pubmed>11140757</pubmed></ref>, リン酸化を初めとした主要な細胞内シグナル伝達子のFRETプローブが次々と作製され、細胞内の活性の局在などの解明に大きく貢献してきた。
<br> 1992年、緑色蛍光タンパク質(Green fluoresent protein: GFP)のクローニングに始まり、青色蛍光タンパク質CFP、黄色蛍光タンパク質YFPなどの開発以来、FRETは積極的に細胞内イメージングに取り入れられ始めた。1997年、宮脇、Tsienらによって、CFPおよびYFPを利用した、Calcium indicator, Cameleonが開発され<ref><pubmed>9278050</pubmed></ref>、さらに、cAMP, cGMP<ref><pubmed>11140757</pubmed></ref>, リン酸化を初めとした主要な細胞内シグナル伝達子のFRETプローブが次々と作製され、細胞内の活性の局在などの解明に大きく貢献した。
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脳神経分野においては、高雄、林らが、2000年初期に記憶の形成に必須なシグナル分子、カルシウムカルモデュリンキナーゼII (CaMKII)の活性化プローブ開発し分散培養系にてCaMkIIの可視化に成功した<ref><pubmed>15788767</pubmed></ref>。
脳神経分野においては、高雄、林らが、2000年初期に記憶の形成に必須なシグナル分子、カルシウムカルモデュリンキナーゼII (CaMKII)の活性化プローブ開発し分散培養系にてCaMkIIの可視化に成功した<ref><pubmed>15788767</pubmed></ref>。
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