9,444
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
21行目: | 21行目: | ||
MGvが主に受ける軸索は同側下丘の[[中心核]](central nucleus of the inferior colliculus, ICC)のニューロンからであり、興奮性入力は[[グルタミン酸]]作動性で[[NMDA型グルタミン酸受容体|NMDA]]/[[AMPA型グルタミン酸受容体]]に作用する。樹状突起には[[代謝型グルタミン酸受容体]]も存在する<ref><pubmed> 10444669 </pubmed></ref>。MGvへの抑制性入力は[[GABA]]作動性であり、[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>]]/[[GABAB受容体|GABA<sub>B</sub>受容体]]に作用する<ref><pubmed> 10322042 </pubmed></ref>。MGvから大脳皮質へは、Core領域([[前聴覚野]](anterior auditory field, AAF)、[[一次聴覚野]](primary auditory cortex, AI)、ネコや[[wikipedia:ja:イヌ|イヌ]]などの[[Posterior auditory field]](編集コメント:日本語訳を御願い致します。) (P))のIII/IV層にトノトピー構造をもって軸索を伸ばす。聴覚野からの下降性の直接入力は興奮性しかないが、[[視床網様核]](reticular thalamic nucleus, TRN)を経由してMGを抑制する系が存在する(図3)。 | MGvが主に受ける軸索は同側下丘の[[中心核]](central nucleus of the inferior colliculus, ICC)のニューロンからであり、興奮性入力は[[グルタミン酸]]作動性で[[NMDA型グルタミン酸受容体|NMDA]]/[[AMPA型グルタミン酸受容体]]に作用する。樹状突起には[[代謝型グルタミン酸受容体]]も存在する<ref><pubmed> 10444669 </pubmed></ref>。MGvへの抑制性入力は[[GABA]]作動性であり、[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>]]/[[GABAB受容体|GABA<sub>B</sub>受容体]]に作用する<ref><pubmed> 10322042 </pubmed></ref>。MGvから大脳皮質へは、Core領域([[前聴覚野]](anterior auditory field, AAF)、[[一次聴覚野]](primary auditory cortex, AI)、ネコや[[wikipedia:ja:イヌ|イヌ]]などの[[Posterior auditory field]](編集コメント:日本語訳を御願い致します。) (P))のIII/IV層にトノトピー構造をもって軸索を伸ばす。聴覚野からの下降性の直接入力は興奮性しかないが、[[視床網様核]](reticular thalamic nucleus, TRN)を経由してMGを抑制する系が存在する(図3)。 | ||
====周波数特性==== | ====周波数特性==== | ||
MGvは個々のニューロンの[[周波数チューニング]]が比較的鋭いが、下丘で見られる様な非常に鋭い周波数チューニングを持つニューロンはあまり見られない。MGvニューロンの潜時は非常に短い。MGvは[[Pars ventrolateralis]] | MGvは個々のニューロンの[[周波数チューニング]]が比較的鋭いが、下丘で見られる様な非常に鋭い周波数チューニングを持つニューロンはあまり見られない。MGvニューロンの潜時は非常に短い。MGvは[[Pars ventrolateralis]](編集コメント:日本語訳を御願い致します。)においてはっきりしたトノトピー構造を持つ。即ち、低周波数音に最適周波数を持つニューロンから高周波数音に最適周波数を持つニューロンまでが一方向に並んでいる。しかし種によってこの構造には差異がある。ラットや[[wikipedia:ja:ウサギ|ウサギ]]では、低周波数に良く応ずるニューロンは背側部に、高周波数に応ずるニューロンは腹側部に位置する<ref><pubmed> 22405210 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16344161 </pubmed></ref>。ネコでは低周波数に応ずるニューロンは腹側部に、高周波数に応ずるニューロンは背側部に位置し逆転している<ref><pubmed> 3973661 </pubmed></ref>。Pars ovoideaは、ネコでは低周波数から高周波数まで応ずるが、ウサギでは低い周波数に選択的に応ずる領域であると考えられている(Paxinos, 2004)。 | ||
=== 背側核 === | === 背側核 === | ||
41行目: | 41行目: | ||
現在知られている知見を持って内側膝状体の担う聴覚情報処理機能を断定することは非常に難しい。しかし視床の一般的な特徴を俯瞰する時、内側膝状体の機能を推測することが可能である。[[Image:Hiroakitsukano Fig3.jpg|thumb|200px|<b>図3 ゲート機構図</b> 赤ニューロンは視床網様核の抑制性ニューロン。]] | 現在知られている知見を持って内側膝状体の担う聴覚情報処理機能を断定することは非常に難しい。しかし視床の一般的な特徴を俯瞰する時、内側膝状体の機能を推測することが可能である。[[Image:Hiroakitsukano Fig3.jpg|thumb|200px|<b>図3 ゲート機構図</b> 赤ニューロンは視床網様核の抑制性ニューロン。]] | ||
内側膝状体や聴覚野に至らずとも下丘までで基本的な聴覚情報処理はされていると考えられている(Paxinos, 2004)。一方、聴覚野は時間的な情報やハーモニーなど音の組合せ情報の処理・認知など高度な役割が与えられている<ref><pubmed> 18436653 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16121182 </pubmed></ref>。内側膝状体はその間に位置し下丘と聴覚野を結び、聴覚野に送るべき情報を選別するゲートであると考えられる<ref><pubmed> 9464683 </pubmed></ref>(図3)。その指令塔の機能を有すると思われる視床網様核が[[腹側視床]]に存在している。視床網様核は視床を囲う様に位置する神経核で、その殆どがGABAニューロンで占められている神経核である。視床から皮質、皮質から視床に至る軸索はほぼ全て視床網様核に側枝を伸ばしている。視床網様核は聴覚野からのフィードバックを元にMGに抑制を与え、[[側方抑制]]などに貢献している(Paxinos, 2004)。さらに視床網様核は前頭葉からの情報を元に内側膝状体に抑制を与え、[[注意]]を向けた対象以外のことに抑制をかけるフィルター機能も有すると考えられている<ref><pubmed> 16837581 </pubmed></ref>。また視床網様核から内側膝状体への抑制回路は[[視覚]]など他のモダリティによる聴覚抑制にも関与している<ref><pubmed> 22101990 </pubmed></ref>。詳しくは'' | 内側膝状体や聴覚野に至らずとも下丘までで基本的な聴覚情報処理はされていると考えられている(Paxinos, 2004)。一方、聴覚野は時間的な情報やハーモニーなど音の組合せ情報の処理・認知など高度な役割が与えられている<ref><pubmed> 18436653 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16121182 </pubmed></ref>。内側膝状体はその間に位置し下丘と聴覚野を結び、聴覚野に送るべき情報を選別するゲートであると考えられる<ref><pubmed> 9464683 </pubmed></ref>(図3)。その指令塔の機能を有すると思われる視床網様核が[[腹側視床]]に存在している。視床網様核は視床を囲う様に位置する神経核で、その殆どがGABAニューロンで占められている神経核である。視床から皮質、皮質から視床に至る軸索はほぼ全て視床網様核に側枝を伸ばしている。視床網様核は聴覚野からのフィードバックを元にMGに抑制を与え、[[側方抑制]]などに貢献している(Paxinos, 2004)。さらに視床網様核は前頭葉からの情報を元に内側膝状体に抑制を与え、[[注意]]を向けた対象以外のことに抑制をかけるフィルター機能も有すると考えられている<ref><pubmed> 16837581 </pubmed></ref>。また視床網様核から内側膝状体への抑制回路は[[視覚]]など他のモダリティによる聴覚抑制にも関与している<ref><pubmed> 22101990 </pubmed></ref>。詳しくは''視床ゲート機構''の項参照。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
56行目: | 56行目: | ||
<references /> | <references /> | ||
(執筆者:塚野浩明、澁木克栄 担当編集委員:渡辺大) |