「生物学的精神医学」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
19行目: 19行目:
===近年の動向===
===近年の動向===


 20世紀末における生物学的精神医学の立場は、[[wikipedia:Eric R Kandel|Eric R Kandel]](1998)の論文<ref><pubmed>9545989</pubmed></ref>に明確に述べられている。Kandelは、(1) すべての精神活動は、脳の活動に由来する。精神疾病を特徴づける行動障害は、その原因が環境起源であっても、脳機能の障害である。(2) 遺伝子、遺伝子発現、そのタンパク質産物は、脳のニューロン間の相互結合のパタンの重要な決定要因(determinants)である。環境的、発達的要因や学習も、遺伝子発現に変化をもたらすことを通じて、ニューロン結合のパタンの変化を生じ、行動変化として現れる。(3) 精神療法が、長期の行動変化をもたらす場合には、それは、おそらく、学習を通じて、遺伝子発現が変化し、[[シナプス]]結合の強さが変化したからであろう。脳画像技術の進歩により、精神療法の結果を定量的に評価できるようになるであろう、と述べた。実際に、その後の機能画像を用いた研究によれば、[[認知行動療法]]により、[[強迫性障害]]では、亢進していた右[[尾状核]]の代謝が減少し、恐怖では、辺縁系と傍辺縁系の活性が減少し、これらの変化は治療効果と関連すること、そして、同様の変化が[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]([[SSRI]])でも認められ、精神療法と薬物療法に共通する生物学的機序が示唆された<ref><pubmed>16520823</pubmed></ref>。
 20世紀末における生物学的精神医学の立場は、[[wikipedia:Eric R Kandel|Eric R Kandel]](1998)の論文<ref><pubmed>9545989</pubmed></ref>に明確に述べられている。Kandelは、


 生物学的精神医学研究の近年の動向としては、(1) 臨床研究の倫理指針が整備され、(2) 遺伝子解析、認知機能、脳画像、精神生理学、血液生化学検査、治療による変化などさまざまな方法を組み合わせた統合的アプローチが行われ、(3) 生物学的所見の診断への応用研究がはじまり、病因・病態研究から、新しい治療薬の開発と臨床試験も行われるようになってきていることが挙げられる。
#すべての精神活動は、脳の活動に由来する。精神疾病を特徴づける行動障害は、その原因が環境起源であっても、脳機能の障害である。
#遺伝子、遺伝子発現、そのタンパク質産物は、脳のニューロン間の相互結合のパタンの重要な決定要因(determinants)である。環境的、発達的要因や学習も、遺伝子発現に変化をもたらすことを通じて、ニューロン結合のパタンの変化を生じ、行動変化として現れる。
#精神療法が、長期の行動変化をもたらす場合には、それは、おそらく、学習を通じて、遺伝子発現が変化し、[[シナプス]]結合の強さが変化したからであろう。脳画像技術の進歩により、精神療法の結果を定量的に評価できるようになるであろう、
 
 と述べた。実際に、その後の機能画像を用いた研究によれば、[[認知行動療法]]により、[[強迫性障害]]では、亢進していた右[[尾状核]]の代謝が減少し、恐怖では、辺縁系と傍辺縁系の活性が減少し、これらの変化は治療効果と関連すること、そして、同様の変化が[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]([[SSRI]])でも認められ、精神療法と薬物療法に共通する生物学的機序が示唆された<ref><pubmed>16520823</pubmed></ref>。
 
 生物学的精神医学研究の近年の動向としては、
 
#臨床研究の倫理指針が整備され、
#遺伝子解析、認知機能、脳画像、精神生理学、血液生化学検査、治療による変化などさまざまな方法を組み合わせた統合的アプローチが行われ、
#生物学的所見の診断への応用研究がはじまり、病因・病態研究から、新しい治療薬の開発と臨床試験も行われるようになってきている
 
 ことが挙げられる。


==解析手法==
==解析手法==

案内メニュー