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=== 細胞周期制御系 === | === 細胞周期制御系 === | ||
細胞周期は細胞周期制御系によって調節されており、[[wikipedia:ja:サイクリン依存性キナーゼ|サイクリン依存性キナーゼ]](cyclin-dependent kinase : Cdk)ファミリーがその中心タンパク質として知られている。これらのキナーゼ活性が細胞周期に依存して上下することにより、細胞周期の進行、停止を調節する。この細胞周期依存的な活性はCdk調節因子である[[wikipedia:ja:サイクリン|サイクリン]](cyclin)に依存しており、Cdkとサイクリンが結合したサイクリン−Cdk複合体(cyclin-Cdk complex)を形成した時、キナーゼ活性を示し細胞周期が進行する。[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]には主に4種類のCdkと4種類のサイクリンが存在し、それぞれの時期を制御している(表2)<ref name=ref1 | 細胞周期は細胞周期制御系によって調節されており、[[wikipedia:ja:サイクリン依存性キナーゼ|サイクリン依存性キナーゼ]](cyclin-dependent kinase : Cdk)ファミリーがその中心タンパク質として知られている。これらのキナーゼ活性が細胞周期に依存して上下することにより、細胞周期の進行、停止を調節する。この細胞周期依存的な活性はCdk調節因子である[[wikipedia:ja:サイクリン|サイクリン]](cyclin)に依存しており、Cdkとサイクリンが結合したサイクリン−Cdk複合体(cyclin-Cdk complex)を形成した時、キナーゼ活性を示し細胞周期が進行する。[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]には主に4種類のCdkと4種類のサイクリンが存在し、それぞれの時期を制御している(表2)<ref name="ref1" />。 | ||
上記のサイクリンの合成と分解が細胞周期におけるCdk活性を調節する主要な要因であるが、その他にもCdk活性を微調整する機構が存在する。[[wikipedia:ja:Cdk阻害タンパク質|Cdk阻害タンパク質]](Cdk inhibitor protein : CKI)と呼ばれるタンパク質は、Cdkまたはサイクリン-Cdk複合体と結合することにより、サイクリン存在下でもCdkの活性を阻害する。CKIには[[wikipedia:p16INK4a|p16<sup>INK4a</sup>]]、[[wikipedia: | 上記のサイクリンの合成と分解が細胞周期におけるCdk活性を調節する主要な要因であるが、その他にもCdk活性を微調整する機構が存在する。[[wikipedia:ja:Cdk阻害タンパク質|Cdk阻害タンパク質]](Cdk inhibitor protein : CKI)と呼ばれるタンパク質は、Cdkまたはサイクリン-Cdk複合体と結合することにより、サイクリン存在下でもCdkの活性を阻害する。CKIには[[wikipedia:p16INK4a|p16<sup>INK4a</sup>]]、[[wikipedia:CDKN2B|p15<sup>INK4b</sup>]]、[[wikipedia:CDKN2C|p18<sup>INK4c</sup>]]、[[wikipedia:CDKN2D|p19<sup>INK4d</sup>]]の4種類が属する[[wikipedia:INK4|INK4]]ファミリーと、[[wikipedia:p21Cip1|p21<sup>Cip1</sup>]]、[[wikipedia:p27Kip1|p27<sup>Kip1</sup>]]、[[wikipedia:p57Kip2|p57<sup>Kip2</sup>]]の3種類が属する[[wikipedia:ja:Cip/Kipファミリー|Cip/Kipファミリー]]の2つのファミリーが存在する。INK4ファミリーはG1期において[[wikipedia:Cdk4|Cdk4]]または[[wikipedia:Cdk6|Cdk6]]に対し、[[wikipedia:ja:サイクリンD|サイクリンD]]と競合的に結合することでCdkの活性を阻害する。Cip/Kipファミリーは[[wikipedia:ja:サイクリンE|サイクリンE]]-[[wikipedia:Cdk2|Cdk2]]、[[wikipedia:ja:サイクリンA|サイクリンA]]-Cdk2、また[[wikipedia:ja:サイクリンB|サイクリンB]]-[[wikipedia:Cdk1|Cdk1]]複合体に結合しCdkの活性を阻害する<ref name="ref2"><pubmed>17654117</pubmed></ref><ref name="ref3"><pubmed>22154077</pubmed></ref>。p27Kip1の阻害において、サイクリン-Cdk-CKI複合体のX線結晶解析により、CKIの結合がCdk活性部位の構造を大きく変化させることが明らかにされた。 | ||
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{| border="1" cellspacing="1" cellpadding="1" | {| border="1" cellspacing="1" cellpadding="1" | ||
|+'''表2 主要なサイクリンとCdk''' | |+ '''表2 主要なサイクリンとCdk''' | ||
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|'''サイクリン-Cdk複合体''' | | '''サイクリン-Cdk複合体''' | ||
|'''サイクリン''' | | '''サイクリン''' | ||
|'''Cdk''' | | '''Cdk''' | ||
|'''複合体の機能''' | | '''複合体の機能''' | ||
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|G1-Cdk | | G1-Cdk | ||
|サイクリンD | | サイクリンD | ||
|Cdk4, Cdk6 | | Cdk4, Cdk6 | ||
|開始点あるいはG1後期の制限点の通過促進 | | 開始点あるいはG1後期の制限点の通過促進 | ||
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|G1/S-Cdk | | G1/S-Cdk | ||
|サイクリンE | | サイクリンE | ||
|Cdk2 | | Cdk2 | ||
|DNA複製の開始を促進 | | DNA複製の開始を促進 | ||
|- | |- | ||
|S-Cdk | | S-Cdk | ||
|サイクリンA | | サイクリンA | ||
|Cdk2, Cdk1 | | Cdk2, Cdk1 | ||
|DNA複製の開始に必要 | | DNA複製の開始に必要 | ||
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| M-Cdk | |||
| サイクリンB | |||
| Cdk1 | |||
| [[wikipedia:ja:有糸分裂|有糸分裂]]の促進 | |||
|} | |} | ||
== 発生過程における中枢神経系での細胞増殖 == | == 発生過程における中枢神経系での細胞増殖 == |