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== 構造 == | == 構造 == | ||
大脳皮質聴覚野は他のモダリティーの感覚野と同様、複数の領野より構成されている。[[wikipedia:ja:霊長類|霊長類]]の聴覚皮質の領野構成に関して多くの研究が行われ、現在17の領野が同定されている<ref name=ref2 /> <ref name=ref1 /> <ref name=ref4><pubmed>1583155</pubmed></ref> <ref name=ref6><pubmed>16774452</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed>7701330</pubmed></ref>。その枠組みに関して、Kaasらがサルの聴覚皮質をモデルに、コア‐ベルト‐パラベルト構造の概念を提唱している<ref name=ref2><pubmed>11050211</pubmed></ref> <ref name=ref1><pubmed>11745645</pubmed></ref>。[[そのうち、[[一次聴覚野]](primary auditory cortex; A1)、[[R野]](rostral area)と[[RT野]](rostrotemporal area)がコア領域を構成し、そのいずれにも明確な[[周波数地図]]が見られ、隣接する領野の周波数地図は[[wikipedia:ja:鏡対称|鏡対称]]になっている。コアを取り囲むようにして、[[CL野]](caudolateral area)、 [[CM野]](caudomedial area)、[[MM野]](midmedial area)、[[RM野]](rostromedial area)、[[RTM野]](medial rostrotemporal area)、[[RTL野]](lateral rostrotemporal area)、[[AL野]](anterolateral area)と[[ML野]](middle lateral area)がベルト領域を構成し、そのいずれの領野にも周波数地図が見出されている<ref name=ref6 />。ベルト領域の更に外側部に位置する[[CPB野]](caudal parabelt)と[[RPB野]](rostral parabelt)がパラベルトを構成する。コアとベルトは外側溝内に位置し、パラベルトは上側頭回に位置する。(編集コメント:この内容について図があればと思います) | |||
最近の脳機能イメージング法を用いた研究により、[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]においても、聴覚野にコアとベルト、およびパラベルト領域が存在することが報告され、外側ベルトは[[上側頭回]]に位置し、パラベルトは[[上側頭溝内]]に位置する<ref name=ref10><pubmed>21160558</pubmed></ref>。Woodsらによると、ヒトのコア領域のすべての領野に周波数地図が存在するが、その他の領域には周波数地図が見られない<ref name=ref10 />。しかし、Striem-Amitらによると、ヒト聴覚野の広範な領域に周波数地図が見られ、上側頭溝内にも明確な周波数地図が存在する<ref name=ref9><pubmed>21448274</pubmed></ref>。従って、ヒトでは、パラベルト領域にも周波数地図が存在する可能性がある。 | |||
コア‐ベルトの概念は[[wikipedia:ja:げっ歯類|げっ歯類]] | コア‐ベルトの概念は[[wikipedia:ja:げっ歯類|げっ歯類]]にも当てはめることができるようである。例えば、[[wikipedia:ja:モルモット|モルモット]]の聴覚皮質には、明確な周波数地図を持つA1野とDC野(Dorsocaudal field)を取り囲むようにして、他の領野が存在している<ref name=ref5><pubmed>17050828</pubmed></ref>。これはコアーベルトの考え方で捉えることができるが、パラベルトに相当する領域は同定されていない。最近、げっ歯類の[[島皮質]]領域に聴覚領野が見出され、低周波数の[[wikipedia:ja:純音|純音]]に広い領域で応答する<ref name=ref8><pubmed>18424777</pubmed></ref> <ref name=ref12><pubmed>22118307</pubmed></ref>。 | ||
== 機能 == | == 機能 == | ||
聴覚皮質の機能に関する大きな枠組みとして、Romanskiらが聴覚野から[[前頭葉]]へ背側を通る"where"経路と腹側を通る"what"経路の概念を、[[視覚系]] | 聴覚皮質の機能に関する大きな枠組みとして、Romanskiらが聴覚野から[[前頭葉]]へ背側を通る"where"経路と腹側を通る"what"経路の概念を、[[視覚系]]に倣って提唱しているが<ref name=ref11><pubmed>10570492</pubmed></ref>、個々の領野の機能は明らかになっていない。領野間の線維連絡や階層性に関してさえ、視覚系ほど明らかにされていない。コウモリは周波数定常音と周波数変調音成分を含む定位音を発し、目標物から戻ってくる反響音(こだま)と聴き比べて獲物の捕獲や障害物の回避を行うため、聴覚皮質各領野の機能分担が明確にされてきた<ref name=ref13><pubmed>8071892</pubmed></ref>。しかし、多くの[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]やヒトでは、コウモリのように限られた聴覚情報のみを処理するのではなく、音声一般に対する処理能力が要求されるため、聴覚系がそれに対応するように適応したと考えられる。一方、システムとしての聴覚系に多くの非線形要素が含まれているため、その特徴を解明する一般的な方法は恐らく存在しない。それぞれの研究者のアドホックなアプローチで、徐々に解明が進むものと思われる。覚醒動物で、同定した細胞の反応選択性を調べ、細胞反応と動物行動の関係を調べる戦略は考えられる。覚醒動物で得られた大脳皮質に関する知見の一つとして、A1とベルトの境界にピッチ受容候補領域が同定されている<ref name=ref3><pubmed>16121182</pubmed></ref>。 | ||
==関連項目== | ==関連項目== |