「バーグマングリア」の版間の差分

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=== 神経活動制御  ===
=== 神経活動制御  ===


 放射状線維上に形成される薄片状突起は、プルキンエ細胞樹状突起のシナプスを5個程度の単位で包囲し、機能的に独立した[[ミクロドメイン]]を形成する。バーグマングリアにはグリア型グルタミン酸輸送体の[[EAAT1]]([[GLAST]])および[[EAAT2(GLT1)]]が発現し、プルキンエ細胞の興奮性シナプス間隙に放出されたグルタミン酸を素早く取り込む。グルタミン酸はグリア細胞内でグルタミンに代謝され、ニューロンに取り込まれた後再度グルタミン酸に変換される。グリア型グルタミン酸トランスポーターによるグルタミン酸の取り込みは、(1)神経伝達を終了させ、興奮性シナプス後電流の早いキネティクスを可能にする、(2)シナプス外へのグルタミン酸漏出を抑える、(3)グルタミン酸刺激の持続による興奮毒性を抑える、などの生理的機能をもつ。  
 放射状線維上に形成される薄片状突起は、プルキンエ細胞樹状突起のシナプスを5個程度の単位で包囲し、機能的に独立した[[ミクロドメイン]]を形成する。バーグマングリアにはグリア型グルタミン酸輸送体の[[EAAT1]]([[GLAST]])および[[EAAT2]]([[GLT1]])が発現し、プルキンエ細胞の興奮性シナプス間隙に放出されたグルタミン酸を素早く取り込む。グルタミン酸はグリア細胞内でグルタミンに代謝され、ニューロンに取り込まれた後再度グルタミン酸に変換される。グリア型グルタミン酸トランスポーターによるグルタミン酸の取り込みは、(1)神経伝達を終了させ、興奮性シナプス後電流の早いキネティクスを可能にする、(2)シナプス外へのグルタミン酸漏出を抑える、(3)グルタミン酸刺激の持続による興奮毒性を抑える、などの生理的機能をもつ。  


 バーグマングリアに特に発現の多いEAAT1の欠損マウスでは、生後発達期における平行線維-プルキンエ細胞間シナプスにおける[[シナプス後電流]]の遷延<ref><pubmed> 12878755 </pubmed></ref>と外傷に対する遅延性[[神経細胞死]]の拡大<ref><pubmed> 9753165 </pubmed></ref>が見られる。また、プルキンエ細胞シナプスのミクロドメイン区画化が不完全になり、近接するプルキンエ細胞を支配する登上線維シナプスからのグルタミン酸漏出や異所的シナプスの形成による登上線維多重支配が見られる<ref><pubmed> 16775144 </pubmed></ref>。  
 バーグマングリアに特に発現の多いEAAT1の欠損マウスでは、生後発達期における平行線維-プルキンエ細胞間シナプスにおける[[シナプス後電流]]の遷延<ref><pubmed> 12878755 </pubmed></ref>と外傷に対する遅延性[[神経細胞死]]の拡大<ref><pubmed> 9753165 </pubmed></ref>が見られる。また、プルキンエ細胞シナプスのミクロドメイン区画化が不完全になり、近接するプルキンエ細胞を支配する登上線維シナプスからのグルタミン酸漏出や異所的シナプスの形成による登上線維多重支配が見られる<ref><pubmed> 16775144 </pubmed></ref>。  


 バーグマングリアにはカルシウムイオン透過性[[AMPA型グルタミン酸受容体]]が発現し、グルタミン酸刺激に対しCa<sup>2+</sup>流入が起こり、内向き[[wikipedia:ja:整流性|整流性]]の速い電流応答を示す。生体内では登上線維および平行線維に由来するグルタミン酸を受容すると考えられるが、バーグマングリアとプルキンエ細胞の発火は必ずしも同期せず、Ca<sup>2+</sup>-伝達物質放出連関や[[短期可塑性]]などの応答特性も異なることから、プルキンエ細胞シナプスからの漏出ではなく、登上線維および平行線維終末付近でバーグマングリアに対する異所性(シナプス外)の放出があると考えられる<ref><pubmed> 16107641 </pubmed></ref>。バーグマングリアには[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]も発現し、プルキンエ細胞樹状突起および細胞体の抑制性シナプスの付近に集積する<ref><pubmed> 12486165 </pubmed></ref>。神経伝達物質応答能があるため、バーグマングリアは求心性線維終末の位置を検知し、シナプス周辺に薄片状突起を発達させることが可能になるのかもしれない。バーグマングリアのAMPA型受容体の透過性を変化させると、グリア突起が退縮してミクロドメインが解離し、登上線維、平行線維ともシナプス後電流が遷延し、さらには登上線維異所支配が誘発される<ref><pubmed> 11340205 </pubmed></ref>。  
 バーグマングリアにはカルシウムイオン透過性[[AMPA型グルタミン酸受容体]]が発現し、グルタミン酸刺激に対し[[カルシウム|Ca<sup>2+</sup>]]流入が起こり、内向き[[wikipedia:ja:整流性|整流性]]の速い電流応答を示す。生体内では登上線維および平行線維に由来するグルタミン酸を受容すると考えられるが、バーグマングリアとプルキンエ細胞の発火は必ずしも同期せず、Ca<sup>2+</sup>-伝達物質放出連関や[[短期可塑性]]などの応答特性も異なることから、プルキンエ細胞シナプスからの漏出ではなく、登上線維および平行線維終末付近でバーグマングリアに対する異所性(シナプス外)の放出があると考えられる<ref><pubmed> 16107641 </pubmed></ref>。バーグマングリアには[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]も発現し、プルキンエ細胞樹状突起および細胞体の抑制性シナプスの付近に集積する<ref><pubmed> 12486165 </pubmed></ref>。神経伝達物質応答能があるため、バーグマングリアは求心性線維終末の位置を検知し、シナプス周辺に薄片状突起を発達させることが可能になるのかもしれない。バーグマングリアのAMPA型グルタミン酸受容体の透過性を変化させると、グリア突起が退縮してミクロドメインが解離し、登上線維、平行線維ともシナプス後電流が遷延し、さらには登上線維異所支配が誘発される<ref><pubmed> 11340205 </pubmed></ref>。  


 バーグマングリアには[[代謝型グルタミン酸受容体]]、[[ATP受容体]]([[P2Y受容体]])、[[NO受容体]](NO受容体という分子は無いと思いますので、ご確認下さい)なども発現し、電流応答の特性に寄与すると考えられる。自発運動中の動物において、バーグマングリアに強いCa<sup>2+</sup>濃度上昇が起こり<ref><pubmed> 19447095 </pubmed></ref>、しばしば波状に伝播していくのが観察されるが<ref><pubmed> 19211787 </pubmed></ref>、バーグマングリアの活動の生理的意義についてコンセンサスは得られていない。
 バーグマングリアには[[代謝型グルタミン酸受容体]]、[[ATP受容体]]([[P2Y受容体]])、[[NO受容体]](編集コメント:NO受容体という分子は無いと思いますので、ご確認下さい)なども発現し、電流応答の特性に寄与すると考えられる。自発運動中の動物において、バーグマングリアに強いCa<sup>2+</sup>濃度上昇が起こり<ref><pubmed> 19447095 </pubmed></ref>、しばしば波状に伝播していくのが観察されるが<ref><pubmed> 19211787 </pubmed></ref>、バーグマングリアの活動の生理的意義についてコンセンサスは得られていない。


== 病理  ==
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