「パルミトイル化」の版間の差分

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=== 神経細胞における''S''-パルミトイル化の機能  ===
=== 神経細胞における''S''-パルミトイル化の機能  ===


 神経細胞は[[軸索]]と[[樹状突起]]という機能の異なる突起を有する高度に極性化した細胞で、シナプスという微少な接着部位を介して、細胞間の情報伝達が行われている。このシナプス前膜(軸索側:シナプス前膜)と後膜(樹状突起側:シナプス後膜)には、シナプス伝達に関わる特殊なタンパク質が局在化しているが、これら多くのシナプスタンパク質が''S''-パルミトイル化されることが知られている<sup>[7][10]</sup>。PSD-95はシナプス後膜の足場タンパク質として、[[AMPA型グルタミン酸受容体]](AMPA受容体)などの様々な膜タンパク質のシナプス局在を制御する。細胞膜貫通領域を有さないPSD-95がポストシナプス膜直下に局在化するためには、''S''-パルミトイル化が必須である。PSD-95の''S''-パルミトイル化レベルはAMPA受容体のシナプス後膜への集積数を規定するので、シナプス伝達効率を制御しうる重要な翻訳後修飾である。DHHCタンパク質ファミリーのうちDHHC2/15およびDHHC3/7サブファミリーがPSD-95に対するPAT活性を有している<sup>[8]</sup>。[[海馬]]神経細胞においてはDHHC2とDHHC3がPSD-95のシナプス局在に必須のPATであること、それぞれは神経細胞の違った場所で機能しており、特にDHHC2が樹状突起のシナプス近傍で神経活動を感受してPSD-95のパルミトイル化レベルを制御することが示された <sup>[12]</sup>。また、最近AMPA受容体や[[NMDA型グルタミン酸受容体]]自身もパルミトイル化されることが示されている<ref><pubmed>19874789</pubmed></ref>。  
 神経細胞は[[軸索]]と[[樹状突起]]という機能の異なる突起を有する高度に極性化した細胞で、シナプスという微少な接着部位を介して、細胞間の情報伝達が行われている。このシナプス前膜(軸索側:シナプス前膜)と後膜(樹状突起側:シナプス後膜)には、シナプス伝達に関わる特殊なタンパク質が局在化しているが、これら多くのシナプスタンパク質が''S''-パルミトイル化されることが知られている<ref name=Rujun><pubmed>19092927</pubmed></ref>[10]</sup>。PSD-95はシナプス後膜の足場タンパク質として、[[AMPA型グルタミン酸受容体]](AMPA受容体)などの様々な膜タンパク質のシナプス局在を制御する。細胞膜貫通領域を有さないPSD-95がポストシナプス膜直下に局在化するためには、''S''-パルミトイル化が必須である。PSD-95の''S''-パルミトイル化レベルはAMPA受容体のシナプス後膜への集積数を規定するので、シナプス伝達効率を制御しうる重要な翻訳後修飾である。DHHCタンパク質ファミリーのうちDHHC2/15およびDHHC3/7サブファミリーがPSD-95に対するPAT活性を有している<sup>[8]</sup>。[[海馬]]神経細胞においてはDHHC2とDHHC3がPSD-95のシナプス局在に必須のPATであること、それぞれは神経細胞の違った場所で機能しており、特にDHHC2が樹状突起のシナプス近傍で神経活動を感受してPSD-95のパルミトイル化レベルを制御することが示された <sup>[12]</sup>。また、最近AMPA受容体や[[NMDA型グルタミン酸受容体]]自身もパルミトイル化されることが示されている<ref><pubmed>19874789</pubmed></ref>。  


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 後者は末端アルキルを有するパルミチン酸誘導体17-ODYAで、細胞内のパルミトイル化タンパク質を代謝標識し、[[wikipedia:ja:クリックケミストリー|クリックケミストリー]]を利用してタグを導入する方法で、タグを利用して[[wikipedia:Affinity chromatography|アフィニティー精製]]が可能である(図4B)。  
 後者は末端アルキルを有するパルミチン酸誘導体17-ODYAで、細胞内のパルミトイル化タンパク質を代謝標識し、[[wikipedia:ja:クリックケミストリー|クリックケミストリー]]を利用してタグを導入する方法で、タグを利用して[[wikipedia:Affinity chromatography|アフィニティー精製]]が可能である(図4B)。  


 両者は[[質量分析]]と合わせて大規模''S''-パルミトイル化タンパク質探索法として用いられており、既知のパルミトイル化タンパク質に加えて、多くの新規基質が同定されている<ref name=Amy_Cell><pubmed>16751107</pubmed></ref>[7]</sup><ref><pubmed>19137006</pubmed></ref><ref><pubmed>19801377</pubmed></ref>。  
 両者は[[質量分析]]と合わせて大規模''S''-パルミトイル化タンパク質探索法として用いられており、既知のパルミトイル化タンパク質に加えて、多くの新規基質が同定されている<ref name=Amy_Cell><pubmed>16751107</pubmed></ref><ref name=Rujun><pubmed>19092927</pubmed></ref><ref><pubmed>19137006</pubmed></ref><ref><pubmed>19801377</pubmed></ref>。  


[[Image:Palmitoylation Figure4.png|thumb|right|300px|図4 S-パルミトイル化タンパク質の精製方法]]  
[[Image:Palmitoylation Figure4.png|thumb|right|300px|図4 S-パルミトイル化タンパク質の精製方法]]  

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