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''詳細は、[[興奮毒性]]の項目参照。'' | ''詳細は、[[興奮毒性]]の項目参照。'' | ||
また、[[wikipedia:ja:ムラサキガイ|ムラサキガイ]のもつ毒である[[ドウモイ酸]]は興奮性アミノ酸の一つであり、カイニン酸型受容体のアゴニストとして機能することにより、神経細胞死を引き起こす。これが[[wikipedia:ja:貝毒|貝毒]]による[[wikipedia:ja:食中毒|食中毒]]の病態機序と考えられている。1987年11~12月、カナダ東岸で中毒が発生し、[[記憶喪失性貝毒]]として知られるようになった。 | また、[[wikipedia:ja:ムラサキガイ|ムラサキガイ]]のもつ毒である[[ドウモイ酸]]は興奮性アミノ酸の一つであり、カイニン酸型受容体のアゴニストとして機能することにより、神経細胞死を引き起こす。これが[[wikipedia:ja:貝毒|貝毒]]による[[wikipedia:ja:食中毒|食中毒]]の病態機序と考えられている。1987年11~12月、カナダ東岸で中毒が発生し、[[記憶喪失性貝毒]]として知られるようになった。 | ||
一方、かつて[[wikipedia:ja:中華料理店症候群|中華料理店症候群]](Chinese restaurant syndrome)の原因としてグルタミン酸が疑われた事があったが、通常食物に含まれる程度のグルタミン酸はかなりの部分が、[[wikipedia:ja:腸管|腸管]]での局所のエネルギー源として使用されてしまう<ref>'''鳥居邦夫、三村亨'''<br><small>L</small>-グルタミン酸塩類のラットにおける吸収と排泄について<br>''医薬品研究'' (1990)21: 242-256</ref>。また、血中へ入っても脳血液関門を越える事がないので、生理的条件下で中枢神経細胞に影響を与えるとは考えにくい。日本国内外での公的機関による[[wikipedia:ja:食品添加物|食品添加物]]としての安全性評価の結果では毒性は否定され、現在では摂取量には特に上限を設けられていない。 | 一方、かつて[[wikipedia:ja:中華料理店症候群|中華料理店症候群]](Chinese restaurant syndrome)の原因としてグルタミン酸が疑われた事があったが、通常食物に含まれる程度のグルタミン酸はかなりの部分が、[[wikipedia:ja:腸管|腸管]]での局所のエネルギー源として使用されてしまう<ref>'''鳥居邦夫、三村亨'''<br><small>L</small>-グルタミン酸塩類のラットにおける吸収と排泄について<br>''医薬品研究'' (1990)21: 242-256</ref>。また、血中へ入っても脳血液関門を越える事がないので、生理的条件下で中枢神経細胞に影響を与えるとは考えにくい。日本国内外での公的機関による[[wikipedia:ja:食品添加物|食品添加物]]としての安全性評価の結果では毒性は否定され、現在では摂取量には特に上限を設けられていない。 | ||
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===自閉症=== | ===自閉症=== | ||
[[wikipedia:ja:ゲノム|ゲノム]]解析の結果より、[[自閉症関連遺伝子]]が同定された。それの中に[[Shank]]、[[neuroligin]]、[[neurexin]]といった、グルタミン酸性シナプスの構成要素が見いだされている。Shankはシナプス後部で[[Homer]]と共に[[シナプス後膜肥厚]]のframeworkを形成する。Neuroliginは、[[GKAP]]と[[PSD-95]]を介し、Shankと結合し、一方、[[シナプス前部]]のneurexinと結合する(図2)。また、モデル動物においても、社会性の異常などが認められ、それは薬理学的なグルタミン酸伝達の増強によって是正される。この事は、中枢神経系におけるグルタミン酸性シナプス伝達の異常が[[自閉症]]を引き起こしている事を示唆する。ただし、これはごく一部の患者でしか認められず、自閉症全体を説明するものではない事に注意を要する。 | [[wikipedia:ja:ゲノム|ゲノム]]解析の結果より、[[自閉症関連遺伝子]]が同定された。それの中に[[Shank]]、[[neuroligin]]、[[neurexin]]といった、グルタミン酸性シナプスの構成要素が見いだされている。Shankはシナプス後部で[[Homer]]と共に[[シナプス後膜肥厚]]のframeworkを形成する。Neuroliginは、[[GKAP]]と[[PSD-95]]を介し、Shankと結合し、一方、[[シナプス前部]]のneurexinと結合する(図2)。また、モデル動物においても、社会性の異常などが認められ、それは薬理学的なグルタミン酸伝達の増強によって是正される。この事は、中枢神経系におけるグルタミン酸性シナプス伝達の異常が[[自閉症]]を引き起こしている事を示唆する。ただし、これはごく一部の患者でしか認められず、自閉症全体を説明するものではない事に注意を要する。 | ||
===統合失調症=== | |||
麻酔薬として開発された[[フェンサイクリジン]](俗にエンジェルダストとも呼ばれる)が統合失調症の症状にた幻覚などを示す事が知られていた。その後、フェンサイクリジンがNMDA型グルタミン酸受容体の[[非拮抗型阻害剤]]である事が示され、グルタミン酸受容体伝達の低下が統合失調症を起こすのではないかと示唆された<ref><pubmed> 2828962 </pubmed></ref>。実際に死後脳ではグルタミン酸受容体の発現が低下している事が報告されている<ref><pubmed> 10719155 </pubmed></ref><ref><pubmed>12559388</pubmed></ref>。また、NR1サブユニットの発現を低下させたマウスでは社会性の低下など統合失調症様症状が出る事が知られている<ref><pubmed> 10481908 </pubmed></ref>。現在、コアゴニストを用いてNMDA型受容体の機能を増強する事で統合失調症の症状が改善しないかが試みられている。 | |||
''詳細は[[グルタミン酸仮説(統合失調症の)]]の項目参照。'' | |||
==関連項目== | ==関連項目== |