229
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
19行目: | 19行目: | ||
コアクチベーターには、CBPやp300といったヒストンアセチルトランスフェラーゼ(histone acetyltransferase; HAT)活性を持つものがあり、エンハンサーおよびプロモーターにおけるコアヒストンのN末端をアセチル化する<ref><pubmed>21131905</pubmed></ref><ref><pubmed>19698979</pubmed></ref>。アセチル基は負の電荷を持つため、ヒストンの正の電荷を打ち消してヒストンとDNAの間の結合が弱められ、転写因子がDNAに結合しやすくなると考えられる。また、クロマチン再構成複合体(chromatin remodeling complex)は転写活性化因子に結合し、ATP依存的にヌクレオソームの配置を変更したり、崩壊させる<ref><pubmed>20513433</pubmed></ref><ref><pubmed>10500090</pubmed></ref>。クロマチンの状態が変更されると、一般的に、より多くの転写活性化因子がエンハンサーに結合しやすくなったり、転写基本因子とコアクチベーターならびにRNAポリメラーゼIIがプロモーター上で集合しやすくなって、転写が促進される。<br> | コアクチベーターには、CBPやp300といったヒストンアセチルトランスフェラーゼ(histone acetyltransferase; HAT)活性を持つものがあり、エンハンサーおよびプロモーターにおけるコアヒストンのN末端をアセチル化する<ref><pubmed>21131905</pubmed></ref><ref><pubmed>19698979</pubmed></ref>。アセチル基は負の電荷を持つため、ヒストンの正の電荷を打ち消してヒストンとDNAの間の結合が弱められ、転写因子がDNAに結合しやすくなると考えられる。また、クロマチン再構成複合体(chromatin remodeling complex)は転写活性化因子に結合し、ATP依存的にヌクレオソームの配置を変更したり、崩壊させる<ref><pubmed>20513433</pubmed></ref><ref><pubmed>10500090</pubmed></ref>。クロマチンの状態が変更されると、一般的に、より多くの転写活性化因子がエンハンサーに結合しやすくなったり、転写基本因子とコアクチベーターならびにRNAポリメラーゼIIがプロモーター上で集合しやすくなって、転写が促進される。<br> | ||
エンハンサーでは、ヒストンの種類または翻訳後修飾に関して、他の領域と異なる特徴を持つ。エンハンサーでは、ヒストンH3の4番目のリジンがモノメチル化またはジメチル化されている(H3K4me1/ H3K4me2)<ref><pubmed>17277777</pubmed></ref>。さらに、H3.3やH2A.Zと呼ばれるヒストンを含むヌクレオソームが存在する<ref><pubmed>19633671</pubmed></ref>。このヌクレオソームは、通常のヌクレオソームより不安定な性質を持つため解体されやすく、転写活性化因子がこのヌクレオソームに置き換わってDNAに結合しやすくなると考えられている。ヒストンH3.3やH2A.Zを含むヌクレオソームは、プロモーターにも存在するが、ヒストンH3の4番目のリジンはトリメチル化されている(H3K4me3)。<br> | |||
転写の活性化の状態によって、エンハンサーにおけるヒストンの翻訳後修飾が異なる例が報告されている。ヒトES細胞を例にとると、転写が活性化されている遺伝子のエンハンサーでは、ヒストンH3の27番目のリジンがアセチル化されているが(H3K27ac)、転写がおきていない遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されている(H3K27me3)<ref><pubmed>21160473</pubmed></ref>。このES細胞を分化させた時、新たに転写が活性化される遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されていたヒストンがアセチル化される(H3K27me3 → H3K27ac)。逆に、分化した後に転写が抑制される遺伝子のエンハンサーでは、アセチル化されていたヒストンがメチル化される(H3K27ac → H3K27me3)。他の系においても、様々なヒストンの翻訳後修飾がみつかっており、遺伝子発現制御との関係が調べられている<ref name="ref7" />。一般的に、転写の活性化の状態に関わらず、H3K4me1/ H3K4me2はエンハンサー領域にみられる特徴であり、活性化しているエンハンサーではp300の結合と、ヒストンのアセチル化がみられる。<br> | 転写の活性化の状態によって、エンハンサーにおけるヒストンの翻訳後修飾が異なる例が報告されている。ヒトES細胞を例にとると、転写が活性化されている遺伝子のエンハンサーでは、ヒストンH3の27番目のリジンがアセチル化されているが(H3K27ac)、転写がおきていない遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されている(H3K27me3)<ref><pubmed>21160473</pubmed></ref>。このES細胞を分化させた時、新たに転写が活性化される遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されていたヒストンがアセチル化される(H3K27me3 → H3K27ac)。逆に、分化した後に転写が抑制される遺伝子のエンハンサーでは、アセチル化されていたヒストンがメチル化される(H3K27ac → H3K27me3)。他の系においても、様々なヒストンの翻訳後修飾がみつかっており、遺伝子発現制御との関係が調べられている<ref name="ref7" />。一般的に、転写の活性化の状態に関わらず、H3K4me1/ H3K4me2はエンハンサー領域にみられる特徴であり、活性化しているエンハンサーではp300の結合と、ヒストンのアセチル化がみられる。<br> |
回編集