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同義語:無脳体、無脳児 | 同義語:無脳体、無脳児 | ||
無脳症とは、[[神経管閉鎖障害]](neural tube defects ; NTDs)に属する最も重度な奇形で、[[wikipedia:ja:|頭蓋]]の形成がなく脳実質を欠く病態である。初期には無頭蓋のみで脳組織の存在するものもあるが、子宮内で次第に損傷され消失すると考えられる。[[wikipedia:ja:|超音波断層法]]で頭蓋冠の欠如を認めることから出生前診断は容易である。重度の欠損のため生存は困難である。児は出生時に生存していたとしても数時間以内に亡くなるが、数日から数週生存する場合もある。 | 無脳症とは、[[神経管閉鎖障害]](neural tube defects ; NTDs)に属する最も重度な奇形で、[[wikipedia:ja:頭蓋|頭蓋]]の形成がなく脳実質を欠く病態である。初期には無頭蓋のみで脳組織の存在するものもあるが、子宮内で次第に損傷され消失すると考えられる。[[wikipedia:ja:超音波断層法|超音波断層法]]で頭蓋冠の欠如を認めることから出生前診断は容易である。重度の欠損のため生存は困難である。児は出生時に生存していたとしても数時間以内に亡くなるが、数日から数週生存する場合もある。 | ||
== 病態 == | == 病態 == | ||
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二分頭蓋(cranium bifidum)は、開放性二分頭蓋(cranium bifida aperta)と潜在性二分頭蓋(cranium bifida occulta)に大別される。 | 二分頭蓋(cranium bifidum)は、開放性二分頭蓋(cranium bifida aperta)と潜在性二分頭蓋(cranium bifida occulta)に大別される。 | ||
#開放性二分頭蓋(open cranial | #開放性二分頭蓋(open cranial bifidum)・[[大脳裂]]([[encephaloschisis]])<br>開放性二分頭蓋は、大脳裂ともいうべき神経管閉鎖障害による病態で、無頭蓋症(acrania)、無脳症(anencephaly)、あるいは[[外脳症]]([[exencephaly]])と呼ばれる。 | ||
#潜在性二分頭蓋(occult cranial | #潜在性二分頭蓋(occult cranial bifidum)・[[脳瘤]](cephalocele)<br>潜在性二分頭蓋は、脳瘤と呼ばれており、[[頭蓋骨]]と[[硬膜]]に欠損があり、それを介して頭蓋内内容物の突出を伴う状態である<ref name=ref3 /> <ref name=ref4><pubmed>1566723</pubmed></ref>。その瘤の内容によって、病理学的には以下に細分類される<ref name=ref3 /> <ref name=ref4 />。<br> | ||
①[[髄膜瘤]]([[meningocele]]):[[髄液腔]]([[髄膜]][meninges]と[[脳脊髄液]]とが脱出)のみの突出の場合<br> | |||
②[[脳髄膜瘤]]([[encephalomeningocele]]):髄液腔と脳組織の両方の突出を認める場合<br> | |||
③[[脳嚢瘤]]([[encephalocystocele]])・[[水脳髄膜瘤]](hydroencephalomeningocele):②に脳室系も含まれる場合<br> | |||
④[[停止性(遺残性)脳瘤]]([[atretic encephalocele]]):脳瘤が胎生期に退縮したもの。硬膜、[[wikipedia:ja:繊維組織|繊維組織]]、変性した脳組織が[[wikipedia:ja:結節|結節]]を形成する。<br> | |||
⑤[[gliocele]]:[[グリア細胞]]で裏打ちされた嚢胞の突出を認める場合 | |||
== 発生頻度 == | == 発生頻度 == | ||
文献的には、脳瘤の発生率は10000出生あたり0.8-3人、無脳症は1000人出生あたり0.29人と報告されている<ref name=ref4 /> | 文献的には、脳瘤の発生率は10000出生あたり0.8-3人、無脳症は1000人出生あたり0.29人と報告されている<ref name=ref4 />。無脳症の発生頻度は単胎と[[wikipedia:ja:双胎|双胎]]でその発生頻度が異なり、前者で高いとの報告があり、海外では北アイルランドにおける1974年から1979年における疫学調査において、単胎で10000出生あたり24.3人、双胎で9.1人と報告されている<ref name=ref5><pubmed>2609905</pubmed></ref> <ref name=ref6>'''林隆士'''<br>無脳症, 神経管閉鎖不全による代表的疾患、脳・脊髄奇形の画像と臨床、<br>''篠原出版''、1994, 23-25 </ref>。 | ||
本邦における無脳症の発生頻度に関しては、1000人出生あたり0.64人で、性差は2:1で女性に多く、母親の年齢が35歳以上と20歳未満に多く、出産順位と共に頻度が増すとの報告がある<ref name=ref6 /> <ref name=ref7>'''宝道定孝, 家島厚, 高嶋幸男'''<br>こどもをとりまく危険因子 II 胎生期との関係 先天異常(脳・神経奇形との関係) 小児科的立場から<br>''産婦人科の世界'' 1988; 40 : 49-58 </ref>。日本産婦人科学会による調査では、1970年代から80年代前半には10000人分娩あたり10人程度の発生頻度であったものが、近年は10000人あたり1人程度に減少傾向を示している。その理由として、胎児超音波検査等の進歩に伴って出生前に診断される機会が増え、出産に至らないケースが増えてきている可能性があると指摘されている<ref name=ref8>胎児期水頭症 診断と治療ガイドライン 改訂2版<br>''金芳堂''、2010,54 </ref>。 | 本邦における無脳症の発生頻度に関しては、1000人出生あたり0.64人で、性差は2:1で女性に多く、母親の年齢が35歳以上と20歳未満に多く、出産順位と共に頻度が増すとの報告がある<ref name=ref6 /> <ref name=ref7>'''宝道定孝, 家島厚, 高嶋幸男'''<br>こどもをとりまく危険因子 II 胎生期との関係 先天異常(脳・神経奇形との関係) 小児科的立場から<br>''産婦人科の世界'' 1988; 40 : 49-58 </ref>。日本産婦人科学会による調査では、1970年代から80年代前半には10000人分娩あたり10人程度の発生頻度であったものが、近年は10000人あたり1人程度に減少傾向を示している。その理由として、胎児超音波検査等の進歩に伴って出生前に診断される機会が増え、出産に至らないケースが増えてきている可能性があると指摘されている<ref name=ref8>胎児期水頭症 診断と治療ガイドライン 改訂2版<br>''金芳堂''、2010,54 </ref>。 | ||