「アルツハイマー病」の版間の差分

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英:Alzheimer's disease、英略語:AD 独:Alzheimer-Krankheit 仏:maladie d'Alzheimer
英:Alzheimer's disease、英略語:AD 独:Alzheimer-Krankheit 仏:maladie d'Alzheimer


 多くは老年期に発症し緩徐に進行する、[[記憶障害]]を中心とした[[認知機能障害]]を主な症状とする認知症であり、[[認知症]]の中で最も多くを占める。病理学的に海馬をはじめとする[[大脳皮質]]の萎縮、組織学的には細胞外の[[老人斑]]と細胞内の[[神経原線維変化]]を特徴とする神経変性疾患である。
 多くは老年期に発症し緩徐に進行する、[[記憶障害]]を中心とした[[認知機能障害]]を主な症状とする認知症であり、[[認知症]]の中で最も多くを占める。病理学的に[[海馬]]をはじめとする[[大脳皮質]]の萎縮、組織学的には細胞外の[[老人斑]]と細胞内の[[神経原線維変化]]を特徴とする神経変性疾患である。


==歴史==
==歴史==
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====''APOE''====
====''APOE''====
 ''APOE''にはε2、ε3、ε4のアレルがあり、アレル頻度は[[wikipedia:ja:コーカシアン|コーカシアン]]ではそれぞれ8%、78%、14%、[[wikipedia:ja:日本人|日本人]]ではそれぞれ4%、87%、9%との報告がある<ref><pubmed> 9343467 </pubmed></ref>。1993年に晩発性の孤発性ADおよび孤発性ADにおいて、''APOE'' ε4アレルが発症のリスクであると複数のグループから報告があった。コーカシアンと日本人の疫学調査によると、ε3/ε3と比較して、ε3/ε4のORは2.7-5.6、ε4/ε4のORは11.8-33.1である。一方、ε2は発症に対して保護的に働き、ε2/ε3のORは0.6-0.9である。apoE蛋白質はADの病態機序のあらゆる段階に作用するという実験データがある。その中で、apoEは分泌されたAβに結合し、アイソフォームごとにその結合能が異なることが示されており、それによってAβのクリアランスや凝集に関わるという説が重要視されているが、生理的環境下ではAβへの結合はわずかであるとのデータもあり議論の余地が残されている。また、''APOE'' ε4保因者では、アミロイド蓄積の前から脳のfunctional connectivityの破綻が見られることが示されており、Aβを介さない毒性も示唆されている<ref><pubmed> 23296339 </pubmed></ref>。
 ''APOE''にはε2、ε3、ε4のアレルがあり、アレル頻度は[[wikipedia:ja:コーカシアン|コーカシアン]]ではそれぞれ8%、78%、14%、[[wikipedia:ja:日本人|日本人]]ではそれぞれ4%、87%、9%との報告がある<ref><pubmed> 9343467 </pubmed></ref>。1993年に晩発性の孤発性ADおよび孤発性ADにおいて、''APOE'' ε4アレルが発症のリスクであると複数のグループから報告があった。コーカシアンと日本人の疫学調査によると、ε3/ε3と比較して、ε3/ε4のORは2.7-5.6、ε4/ε4のORは11.8-33.1である。一方、ε2は発症に対して保護的に働き、ε2/ε3のORは0.6-0.9である。apoE蛋白質はADの病態機序のあらゆる段階に作用するという実験データがある。その中で、apoEは[[分泌]]されたAβに結合し、アイソフォームごとにその結合能が異なることが示されており、それによってAβのクリアランスや凝集に関わるという説が重要視されているが、生理的環境下ではAβへの結合はわずかであるとのデータもあり議論の余地が残されている。また、''APOE'' ε4保因者では、アミロイド蓄積の前から脳のfunctional connectivityの破綻が見られることが示されており、Aβを介さない毒性も示唆されている<ref><pubmed> 23296339 </pubmed></ref>。


==病態生理==
==病態生理==

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