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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0201548 上田 敬太]、[http://researchmap.jp/t-murai 村井 俊哉]</font><br> | |||
''京都大学 大学院医学研究科''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年4月17日 原稿完成日:2013年5月24日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | |||
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[[精神疾患]]のうち、[[wikipedia:ja:内分泌疾患|内分泌疾患]]などの結果として脳機能に影響を与えるものや[[脳外傷]]や[[脳梗塞]]などのように、直接脳そのものを障害するものがあり、これらをまとめて器質性精神障害とよぶ。一方、DSM-IVでは使用されていないが、これは、器質性としたもの以外の精神障害が、まるで器質(脳器質)が関係していないかのような誤解を防ぐためのものである。治療には原因物質に対する加療が優先され、精神症状に対する治療は対症療法に過ぎない。 | |||
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== 器質性精神障害とは== | == 器質性精神障害とは== | ||
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|rowspan=10|F06 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害||F06.0 器質性幻覚症 | |rowspan=10|F06 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害||F06.0 器質性幻覚症 | ||
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|F06. | |F06.1 器質性[[緊張病性障害]] | ||
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|F06. | |F06.2 器質性[[妄想性様障害|妄想性[統合失調症]様障害]] | ||
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|F06. | |F06.3 器質性[[気分障害|気分[感情]障害]] | ||
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|F06. | |F06.4 器質性[[不安障害]] | ||
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|F06. | |F06.5 器質性[[解離性障害]] | ||
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|F06. | |F06.6 器質性[[情緒不安定性障害|情緒不安定性[無力性]障害]] | ||
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|F06. | |F06.7 軽症[[認知障害]] | ||
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|F06.8 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の明示された精神障害 | |F06.8 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の明示された精神障害 | ||
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|F06.9 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患による詳細不明の精神障害 | |F06.9 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患による詳細不明の精神障害 | ||
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|rowspan=5|F07 脳の疾患,損傷及び機能不全による人格及び行動の障害||F07. | |rowspan=5|F07 脳の疾患,損傷及び機能不全による人格及び行動の障害||F07.0 器質性[[人格障害]] | ||
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|F07.1 [[脳炎]]後症候群 | |F07.1 [[脳炎]]後症候群 | ||
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内因性精神病の症候学的検討の歴史が長いため、これらの概念を援用して器質性精神障害についても分類が行われているわけではあるが、論理的にはおかしな状況と言わざるをえないだろう。 | 内因性精神病の症候学的検討の歴史が長いため、これらの概念を援用して器質性精神障害についても分類が行われているわけではあるが、論理的にはおかしな状況と言わざるをえないだろう。 | ||
==特徴 == | ==特徴 == | ||
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あらゆる脳疾患が器質性精神障害の原因となりうるが、現代社会で大きな問題となっている一例として、交通外傷による脳損傷がある。外傷性脳損傷は大きく、局所脳損傷と[[びまん性軸索損傷]]に分類することができる。 | あらゆる脳疾患が器質性精神障害の原因となりうるが、現代社会で大きな問題となっている一例として、交通外傷による脳損傷がある。外傷性脳損傷は大きく、局所脳損傷と[[びまん性軸索損傷]]に分類することができる。 | ||
局所脳損傷では、直達外力により同側の、あるいはコントラ・クー(Contrecoup)により対側の、頭蓋骨に接した脳領域に挫傷が生じる。多くの場合、[[wikipedia:ja:頭蓋骨|頭蓋骨]]の底面の構造的特徴のため、前頭葉眼窩面、[[側頭極|側頭葉]]を中心とした脳部位に挫傷が生じる。 | |||
一方で、びまん性軸索損傷は、回転によって生じる剪断力のために、[[白質]]の[[軸索]]が損傷をうける。多くの場合、深部白質や[[脳梁]]を中心とした損傷を生じ、損傷後数年の間に、[[脳萎縮]]が進行する。灰白質の萎縮も、主に中心構造に生じるようである。これら外傷性精神障害の二型は、いずれのタイプも特徴的な脳損傷部位を有しており、その意味で、結果として生じる精神障害も症候群としての特徴を有するものであることが想定されている。 | 一方で、びまん性軸索損傷は、回転によって生じる剪断力のために、[[白質]]の[[軸索]]が損傷をうける。多くの場合、深部白質や[[脳梁]]を中心とした損傷を生じ、損傷後数年の間に、[[脳萎縮]]が進行する。灰白質の萎縮も、主に中心構造に生じるようである。これら外傷性精神障害の二型は、いずれのタイプも特徴的な脳損傷部位を有しており、その意味で、結果として生じる精神障害も症候群としての特徴を有するものであることが想定されている。 | ||
== 行政用語としての「高次脳機能障害」 == | |||
行政用語としては、「[[高次脳機能障害]]」という用語が平成13年から17年度に行われた高次脳機能障害支援モデル事業において策定され、「頭部外傷、脳血管障害などによる脳の損傷の後遺症として、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害が生じ、これに起因して、日常生活・社会生活への適応が困難となる障害である。」と定められている。これは行政用語であるので、病名とは言えないものであるが、概念としては器質性精神障害の一部を含むものとなっている。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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4. '''エーミール・クレペリン 西丸四方 遠藤みどり訳'''<br> 精神医学総論<br> ''みすず書房'' 1994年 | 4. '''エーミール・クレペリン 西丸四方 遠藤みどり訳'''<br> 精神医学総論<br> ''みすず書房'' 1994年 | ||