「エフリン」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/masaharunoda 野田 昌晴]</font><br>
''基礎生物学研究所 神経生物学領域 統合神経生物学研究部門''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年2月15日 原稿完成日:2012年2月25日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
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{{Infobox protein family
{{Infobox protein family
| Symbol = Ephrin
| Symbol = Ephrin
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英語名:Ephrin
英語名:Ephrin


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 [[受容体型チロシンキナーゼ]]ファミリーの一つである[[Eph受容体]]群(Eph receptors)の[[リガンド]]分子群の総称。1994年にEph受容体のリガンド分子であることが明らかにされたが、’Eph family receptor interacting proteins’ということから、1997年に様々な名称を統一してエフリン(ephrin)と命名された<ref><pubmed>9267020</pubmed></ref>。
 [[受容体型チロシンキナーゼ]]ファミリーの一つである[[Eph受容体]]群(Eph receptors)の[[リガンド]]分子群の総称。1994年にEph受容体のリガンド分子であることが明らかにされたが、’Eph family receptor interacting proteins’ということから、1997年に様々な名称を統一してエフリン(ephrin)と命名された<ref><pubmed>9267020</pubmed></ref>。
 
}}


== サブタイプ ==
== サブタイプ ==


 [[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]では8種類のエフリンが存在しており、これらは構造上の違いから、エフリンA1~A5より構成されるA型エフリン(class A ephrins)と、エフリンB1~B3より構成されるB型エフリン(class B ephrins)に分類される<ref name=ref2><pubmed> 15928710 </pubmed></ref>。
 [[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]では8種類のエフリンが存在しており、これらは構造上の違いから、エフリンA1~A5より構成されるA型エフリン(class A ephrins)と、エフリンB1~B3より構成されるB型エフリン(class B ephrins)に分類される<ref name=ref2><pubmed> 15928710 </pubmed></ref>。


== 構造 ==
== 構造 ==
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 エフリンがEph受容体に結合すると、Eph受容体は二量体化し、お互いに相手の細胞内領域の特定の[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]残基を[[リン酸化]]することによって活性化する<ref name=ref2 />。エフリンは細胞膜に結合した状態でのみリガンド分子としての活性を有しており、遊離したエフリンはEph受容体には結合するが受容体の活性化を誘導しない。Eph受容体はエフリンに対して逆にリガンド分子としても働くことが知られており、エフリンを発現する細胞とEph受容体を発現する細胞が接触すると、両細胞に双方向性の情報伝達が生じる<ref name=ref4><pubmed> 17420126 </pubmed></ref>。Eph受容体を発現する細胞内への[[シグナル]]を順行性シグナル(forward signal)と呼び、エフリンを発現する細胞内へのシグナルを逆行性シグナル(reverse signal)と呼ぶ。このエフリンを受容体とする逆行性シグナルの伝達には、[[チロシンリン酸化#.E9.9D.9E.E5.8F.97.E5.AE.B9.E4.BD.93.E5.9E.8B.E3.83.81.E3.83.AD.E3.82.B7.E3.83.B3.E3.82.AD.E3.83.8A.E3.83.BC.E3.82.BC|Srcファミリーチロシンキナーゼ]]の活性化が関与している<ref name=ref4 />。A型エフリンは[[インテグリン]]や[[神経栄養因子]]の受容体等と複合体を形成することにより<ref name=ref4 /><ref><pubmed> 19036963 </pubmed></ref>、一方、B型エフリンは[[アダプタータンパク質]]の[[Grb4]]や、[[PDZドメイン]]タンパク質の[[シンテニン]]等と複合体を形成することにより<ref name=ref4 /><ref><pubmed> 11557983 </pubmed></ref>、それぞれ特異的な逆行性シグナルを伝達すると考えられている。
 エフリンがEph受容体に結合すると、Eph受容体は二量体化し、お互いに相手の細胞内領域の特定の[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]残基を[[リン酸化]]することによって活性化する<ref name=ref2 />。エフリンは細胞膜に結合した状態でのみリガンド分子としての活性を有しており、遊離したエフリンはEph受容体には結合するが受容体の活性化を誘導しない。Eph受容体はエフリンに対して逆にリガンド分子としても働くことが知られており、エフリンを発現する細胞とEph受容体を発現する細胞が接触すると、両細胞に双方向性の情報伝達が生じる<ref name=ref4><pubmed> 17420126 </pubmed></ref>。Eph受容体を発現する細胞内への[[シグナル]]を順行性シグナル(forward signal)と呼び、エフリンを発現する細胞内へのシグナルを逆行性シグナル(reverse signal)と呼ぶ。このエフリンを受容体とする逆行性シグナルの伝達には、[[チロシンリン酸化#.E9.9D.9E.E5.8F.97.E5.AE.B9.E4.BD.93.E5.9E.8B.E3.83.81.E3.83.AD.E3.82.B7.E3.83.B3.E3.82.AD.E3.83.8A.E3.83.BC.E3.82.BC|Srcファミリーチロシンキナーゼ]]の活性化が関与している<ref name=ref4 />。A型エフリンは[[インテグリン]]や[[神経栄養因子]]の受容体等と複合体を形成することにより<ref name=ref4 /><ref><pubmed> 19036963 </pubmed></ref>、一方、B型エフリンは[[アダプタータンパク質]]の[[Grb4]]や、[[PDZドメイン]]タンパク質の[[シンテニン]]等と複合体を形成することにより<ref name=ref4 /><ref><pubmed> 11557983 </pubmed></ref>、それぞれ特異的な逆行性シグナルを伝達すると考えられている。


== 生理機能 ==
== 生理機能 ==


 エフリンを発現する細胞とEph受容体を発現する細胞が接触すると、一般に両細胞間に反発反応が生じ両者は乖離する。この反応は、両細胞内における[[細胞骨格]]系、特に[[アクチン]]骨格系の再編成によって生じるが、エフリンとEph受容体の複合体が、[[プロテアーゼ]]による分解や[[エンドサイトーシス]]によって接触面から除去されることが必要であると考えられている<ref><pubmed> 10958785 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21078817 </pubmed></ref>。神経系の発生過程において、エフリンとEph受容体はしばしば異なる領域の細胞群に発現しており、両細胞群の接触によるエフリンとEph受容体の相互作用は、神経細胞の移動や神経[[軸索ガイダンス]]<ref name=ref4 />、不必要な[[軸索の刈り込み]]<ref><pubmed> 10097165 </pubmed></ref>、[[シナプス]]形成<ref name=ref10><pubmed> 19029886 </pubmed></ref>などにおいて重要な役割を果たしている。また、成体の神経系においても、[[シナプス可塑性]]の調節<ref name=ref10 />などに機能していることが明らかになっている。
 エフリンを発現する細胞とEph受容体を発現する細胞が接触すると、一般に両細胞間に反発反応が生じ両者は乖離する。この反応は、両細胞内における[[細胞骨格]]系、特に[[アクチン]]骨格系の再編成によって生じるが、エフリンとEph受容体の複合体が、[[プロテアーゼ]]による分解や[[エンドサイトーシス]]によって接触面から除去されることが必要であると考えられている<ref><pubmed> 10958785 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21078817 </pubmed></ref>。神経系の発生過程において、エフリンとEph受容体はしばしば異なる領域の細胞群に発現しており、両細胞群の接触によるエフリンとEph受容体の相互作用は、神経細胞の移動や神経[[軸索ガイダンス]]<ref name=ref4 />、不必要な[[軸索の刈り込み]]<ref><pubmed> 10097165 </pubmed></ref>、[[シナプス]]形成<ref name=ref10><pubmed> 19029886 </pubmed></ref>などにおいて重要な役割を果たしている。また、成体の神経系においても、[[シナプス可塑性]]の調節<ref name=ref10 />などに機能していることが明らかになっている。


==参考文献==
==参考文献==
<references/>
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(執筆者:野田昌晴  担当編集委員:村上富士夫)

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