「Förster共鳴エネルギー移動」の版間の差分

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 蛍光分子のうち、エネルギーを受け渡す方をドナー、受け取る方をアクセプターと呼ぶ。FRETの効率はドナーとアクセプター間の次のような因子によって影響される。
 蛍光分子のうち、エネルギーを受け渡す方をドナー、受け取る方をアクセプターと呼ぶ。FRETの効率はドナーとアクセプター間の次のような因子によって影響される。


* ドナーとアクセプター間の距離r
* ドナーとアクセプター間の距離 ''r''


* ドナーの発光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重なりJ
* ドナーの発光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重なり ''J''


* ドナーの発光双極子モーメントとアクセプターの吸収双極子モーメントとの相対分子配向''κ''
* ドナーの発光双極子モーメントとアクセプターの吸収双極子モーメントとの相対分子配向''κ''


 ドナーとアクセプター蛍光分子が決定されるとJは次のように計算される。
 ドナーとアクセプター蛍光分子が決定されると''J''は次のように計算される。
 


: <math> J = \int f_{\rm D}(\lambda) \, \epsilon_{\rm A}(\lambda) \, \lambda^4 \, d\lambda </math>
: <math> J = \int f_{\rm D}(\lambda) \, \epsilon_{\rm A}(\lambda) \, \lambda^4 \, d\lambda </math>


 ここでf<sub>D</sub>(&lambda;)はピーク値を1としたドナー発光スペクトル、 &epsilon;<sub>A</sub>(&lambda;)はアクセプターの[[モル吸光係数]]である。


 これを用い「Förster距離」R<sub>0</sub>が以下のように定義される。これはエネルギー移動効率が50%となるドナーとアクセプターの距離である。通常の蛍光分子の場合、5 nm程度である。
 ここでf<sub>D</sub>(&lambda;)はピーク値を1としたドナー発光スペクトル、 &epsilon;<sub>A</sub>(&lambda;)はアクセプターの[[モル吸光係数]]、&lambda;は波長である。
 
 ''J''を用い特定のドナーとアクセプターの間にFörster距離''R<sub>0</sub>''が以下のように定義される。これはエネルギー移動効率が50%となるドナーとアクセプターの距離である。通常の蛍光分子の場合、5 nm程度である。
 


: <math> {R_0}^6 = \frac{9\,Q_0 \,(\ln 10)}{128 \, \pi^5 \,n^4 \, N_A}  \kappa^2 \, J</math>
: <math> {R_0}^6 = \frac{9\,Q_0 \,(\ln 10)}{128 \, \pi^5 \,n^4 \, N_A}  \kappa^2 \, J</math>


 相互分子配向''κ''は多くの場合、正確に求める事は困難であるため、しばしば''κ''<sup>2</sup> =2/3 と仮定される。この値は、両方の色素が自由に回転しており、励起状態寿命の間は等方的に配向していると考えられる場合に得られる。色素が固定されていたり自由に回転することができないような場合、''κ''<sup>2</sup> =2/3 とは仮定できない。Q<sub>0</sub>はアクセプターが無い場合の蛍光[[wj:量子収率|量子収率]]、nは媒体の[[屈折率]](水、25 °Cの場合、1.3342)、N<sub>A</sub>は[[アボガドロ数]]である。これらの定数を当てはめると、''κ''より前の部分は、8.786 x 10<sup>11</sup> mol L<sup>-1</sup> cm nm<sup>2</sup>となる<ref><pubmed> 10964438</pubmed>但しこの論文にはミスプリが有り、p439で''κ''<sup>2</sup> とすべき所を、''κ''としている。</ref>。


 R<sub>0</sub>を用いると、FRET効率Eは次のように表す事が出来る。
 ''κ''はドナーとアクセプターの相互分子配向である。多くの場合、正確に求める事は困難であるため、しばしば''κ''<sup>2</sup> =2/3 と仮定される。この値は、両方の色素が自由に回転しており、励起状態寿命の間は等方的に配向していると考えられる場合に得られる。色素が固定されていたり自由に回転することができないような場合、''κ''<sup>2</sup> =2/3 とは仮定できない。''Q<sub>0</sub>''はアクセプターが無い場合のドナーの蛍光[[wj:量子収率|量子収率]]、''n''は媒体の[[屈折率]](水、25 °Cの場合、1.3342)、''N<sub>A</sub>''は[[アボガドロ数]]である。これらの定数を当てはめると、''κ''より前の部分は、8.786 x 10<sup>11</sup> mol L<sup>-1</sup> cm nm<sup>2</sup>となる<ref><pubmed> 10964438</pubmed>但しこの論文にはミスプリが有り、p. 439で''κ''<sup>2</sup> とすべき所を、''κ''としている。</ref>。
 
 ''R<sub>0</sub>''を用いると、FRET効率''E''は次のように表す事が出来る。
 


: <math>E=\frac{1}{1+(r/R_0)^6}\!</math>
: <math>E=\frac{1}{1+(r/R_0)^6}\!</math>


 蛍光スペクトルが変化しない状態では、ドナーとアクセプター間の距離と角度の変化をFRETの効率の変化として読み取る事が出来る。
 
 これからいくつかの事が結論できる。
 
 Förster距離''R<sub>0</sub>''が大きいドナーとアクセプターの組み合わせの方が、FRET効率''E''は良い、別な言い方をすると、ドナーとアクセプター間が離れていてもFRETが検出できる。そのためには蛍光量子収率''Q<sub>0</sub>''がよいドナー、モル吸光係数''&epsilon;<sub>A</sub>(&lambda;)''が良いアクセプター、またいずれも長波長域にあるドナーとアクセプターの組を選択する事で改善される。また、ドナーとアクセプターの蛍光スペクトルが変化しない状態では、ドナーとアクセプター間の距離と角度の変化をFRETの効率の変化として読み取る事が出来る。これを利用して、様々な細胞現象に対するプローブをデザインする事が可能である。


==FRETの画像検出==
==FRETの画像検出==

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