「セロトニン」の版間の差分

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英語名:serotonin、5-hydroxytryptamine 英略語:5-HT  
英語名:serotonin、5-hydroxytryptamine 英略語:5-HT  


生理活性アミンの一種で、中枢神経系の伝達物質として働く。脳機能の調節において重要な役割を果たすと考えられているが、生体内の大部分(~95%)のセロトニンは末梢に存在し<ref><pubmed>17241888</pubmed></ref>[1][2]、腸管蠕動運動や血小板凝縮などの調節因子として末梢でも多様な作用を持つ。生体内のセロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから合成され、小胞モノアミントランスポーターによって細胞内の小胞に取り込まれる。開口放出によって細胞外に放出されたセロトニンは標的細胞の受容体を活性化してその効果を発揮し、セロトニントランスポーターによって細胞内に取り込まれる。  
生理活性アミンの一種で、中枢神経系の伝達物質として働く。脳機能の調節において重要な役割を果たすと考えられているが、生体内の大部分(~95%)のセロトニンは末梢に存在し<ref><pubmed> 17241888 </pubmed></ref>[1][2]、腸管蠕動運動や血小板凝縮などの調節因子として末梢でも多様な作用を持つ。生体内のセロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから合成され、小胞モノアミントランスポーターによって細胞内の小胞に取り込まれる。開口放出によって細胞外に放出されたセロトニンは標的細胞の受容体を活性化してその効果を発揮し、セロトニントランスポーターによって細胞内に取り込まれる。  


<br>生合成<br>生体内のセロトニンは、トリプトファンからトリプトファン水酸化酵素(tryptophan hydoxylase、TPH)、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase、AAAD)による二段階の酵素反応によって合成される。AAADはドーパミンの生合成経路でも機能する。TPHはセロトニン合成の律速酵素で、TPH1とTPH2の二種類のアイソフォームが存在する。TPH1は腸クロム親和性細胞などの主に末梢のセロトニン産生細胞に、TPH2は主に中枢のセロトニン神経系の細胞に発現する。TPH1欠損マウスでは血中のセロトニン濃度が約95%低下し、TPH2欠損マウスでは中枢神経系のセロトニン含量が約95%低下し、末梢と中枢におけるそれぞれの酵素の重要性を示している。しかし、TPH1とTPH2の両方を欠損するマウスでも血中、中枢ともに数%のセロトニンは残存する[3]。TPHはテトラヒドロビオプテリン(Tetrahydrobiopterin、BH 4)を補因子とし、BH 4の欠乏はセロトニンの欠乏を伴う[4]。テロラヒドロビオプテリンはドーパミン生合成に必要なチロシンリン酸化酵素や一酸化窒素合成酵素の補因子としても働き、セロトニンやドーパミンの放出に影響を及ぼすことも示されている[4]。  
<br>生合成<br>生体内のセロトニンは、トリプトファンからトリプトファン水酸化酵素(tryptophan hydoxylase、TPH)、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase、AAAD)による二段階の酵素反応によって合成される。AAADはドーパミンの生合成経路でも機能する。TPHはセロトニン合成の律速酵素で、TPH1とTPH2の二種類のアイソフォームが存在する。TPH1は腸クロム親和性細胞などの主に末梢のセロトニン産生細胞に、TPH2は主に中枢のセロトニン神経系の細胞に発現する。TPH1欠損マウスでは血中のセロトニン濃度が約95%低下し、TPH2欠損マウスでは中枢神経系のセロトニン含量が約95%低下し、末梢と中枢におけるそれぞれの酵素の重要性を示している。しかし、TPH1とTPH2の両方を欠損するマウスでも血中、中枢ともに数%のセロトニンは残存する[3]。TPHはテトラヒドロビオプテリン(Tetrahydrobiopterin、BH 4)を補因子とし、BH 4の欠乏はセロトニンの欠乏を伴う[4]。テロラヒドロビオプテリンはドーパミン生合成に必要なチロシンリン酸化酵素や一酸化窒素合成酵素の補因子としても働き、セロトニンやドーパミンの放出に影響を及ぼすことも示されている[4]。  
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精神疾患との関連<br>セロトニントランスポーターやセロトニン代謝酵素の阻害薬、セロトニン受容体拮抗能を持つ薬物が精神疾患の治療薬として用いられており(セロトニン神経系の項目で詳述)、セロトニン神経系の何らかの異常が精神疾患の病態生理基盤に関与すると考えられている。特にうつ病との関連は一般にも知られているが、その詳細は明らかではない。古典的なセロトニン仮説では脳内セロトニンレベルの低下、もしくはセロトニン神経系の機能低下がうつ病の原因とされたが、それを支持する直接的な証拠はない[32]。トリプトファンの欠乏によって実験的に一過性のセロトニン枯渇を生じさせても健常者の被験者では気分の変化は生じない。一方で、うつ病の罹患歴のある被験者では抑うつ気分が生じる[32]。従って、うつ病に伴ってセロトニン神経系に変化が生じるようではあるが、それが疾患の原因もしくは病態基盤に関与するかどうかは不明である。<br>
精神疾患との関連<br>セロトニントランスポーターやセロトニン代謝酵素の阻害薬、セロトニン受容体拮抗能を持つ薬物が精神疾患の治療薬として用いられており(セロトニン神経系の項目で詳述)、セロトニン神経系の何らかの異常が精神疾患の病態生理基盤に関与すると考えられている。特にうつ病との関連は一般にも知られているが、その詳細は明らかではない。古典的なセロトニン仮説では脳内セロトニンレベルの低下、もしくはセロトニン神経系の機能低下がうつ病の原因とされたが、それを支持する直接的な証拠はない[32]。トリプトファンの欠乏によって実験的に一過性のセロトニン枯渇を生じさせても健常者の被験者では気分の変化は生じない。一方で、うつ病の罹患歴のある被験者では抑うつ気分が生じる[32]。従って、うつ病に伴ってセロトニン神経系に変化が生じるようではあるが、それが疾患の原因もしくは病態基盤に関与するかどうかは不明である。<br>
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