「行動嗜癖」の版間の差分

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同義語:[[過程嗜癖]]、[[プロセス依存]]、[[行為依存]]、[[過程依存]]、[[行為・過程依存]]
同義語:[[過程嗜癖]]、[[プロセス依存]]、[[行為依存]]、[[過程依存]]、[[行為・過程依存]]


{{box|text= 行動嗜癖(behavioral addiction)とは、[[精神作用物質]]ではなく、ある特定の行動や一連の行動プロセスを依存対象とする[[依存症]]である。[[病的ギャンブリング]]や[[インターネット・ゲーム障害]]、窃盗癖、買い物、暴力、自傷、性的逸脱行動、過食・嘔吐、放火、携帯電話など、実な多岐にわたる様式がある。
{{box|text= 行動嗜癖(behavioral addiction)とは、[[精神作用物質]]ではなく、ある特定の行動や一連の行動プロセスを依存対象とする[[依存症]]である。[[病的ギャンブリング]]や[[インターネット・ゲーム障害]]、窃盗癖、買い物、暴力、自傷、性的逸脱行動、過食・嘔吐、放火、携帯電話など、実に多岐にわたる様式がある。


 行動嗜癖の定義や構成概念にはいまだ不明瞭な点が多く、物質依存症と同じカテゴリーに含めるべきかについては、専門家のあいだでも論争が続いている。しかし、近年の研究により、[[報酬系]]と呼ばれる脳内[[ドーパミン]]神経系回路の関与など、物質依存症との類似性に関する知見が報告されるようになった。こうした趨勢のなかで、病的ギャンブリングは、[[DSM-5]]において物質依存症と同じ診断カテゴリー、「物質関連と嗜癖の障害」に分類されることとなった。
 行動嗜癖の定義や構成概念にはいまだ不明瞭な点が多く、物質依存症と同じカテゴリーに含めるべきかについては、専門家のあいだでも論争が続いている。しかし、近年の研究により、[[報酬系]]と呼ばれる脳内[[ドーパミン]]神経系回路の関与など、物質依存症との類似性に関する知見が報告されるようになった。こうした趨勢のなかで、病的ギャンブリングは、[[DSM-5]]において物質依存症と同じ診断カテゴリー、「物質関連と嗜癖の障害」に分類されることとなった。
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 行動嗜癖とは、ある特定の行動や一連の行動プロセスがもたらす高揚感や、不安や怒りの軽減、緊張からの解放など、不快感情の軽減が一種の報酬効果となって反復化・習慣化し、心理社会的もしくは健康上の問題をもたらしていることを知りながらも、その行動をとめることができない状態を意味する。しばしばその行動に対する[[自己制御]]困難の感覚も伴っている。この自己制御困難感の強い病態では、[[強迫]]との境界は不明瞭になるが、そもそも本人がその行動を好んでおり、本人が自ら主体的にその行動を選択しているという点において、強迫とは区別される。
 行動嗜癖とは、ある特定の行動や一連の行動プロセスがもたらす高揚感や、不安や怒りの軽減、緊張からの解放など、不快感情の軽減が一種の報酬効果となって反復化・習慣化し、心理社会的もしくは健康上の問題をもたらしていることを知りながらも、その行動をとめることができない状態を意味する。しばしばその行動に対する[[自己制御]]困難の感覚も伴っている。この自己制御困難感の強い病態では、[[強迫]]との境界は不明瞭になるが、そもそも本人がその行動を好んでおり、本人が自ら主体的にその行動を選択しているという点において、強迫とは区別される。


 この行動嗜癖という臨床概念は、[[病的ギャンブリング]](pathological gambling)や[[インターネット・ゲーム障害]](internet gaming disorder)、窃盗癖(kleptomania)などの他、買い物、暴力・虐待、自傷、性的逸脱行動、[[摂食障害#過食|過食]]・嘔吐、放火、携帯電話など、多様な行動上の障害を含んであり、現状では不均質な症候群といわざるを得ない。なかには日常的で必要不可欠な社会的行為もあり、その点では、正常とのあいだに質的な差異はなく、あくまでも量的に逸脱した病態といえる。また、病態を説明する生物学的根拠がいまだ不十分なことも、行動嗜癖の位置づけを難しくさせている。物質[[依存症]]の場合、すでに精神作用物質の習慣的摂取による脳内変化や生理学的依存の存在が明らかにされており、それに依拠して依存症概念が確立された経緯がある。
 この行動嗜癖という臨床概念は、[[病的ギャンブリング]](pathological gambling)や[[インターネット・ゲーム障害]](internet gaming disorder)、窃盗癖(kleptomania)などの他、買い物、暴力・虐待、自傷、性的逸脱行動、[[摂食障害#過食|過食]]・嘔吐、放火、携帯電話など、多様な行動上の問題と関連しており、現状では不均質な症候群といわざるを得ない。なかには日常的で必要不可欠な社会的行為もあり、その点では、正常とのあいだに質的な差異はなく、あくまでも量的に逸脱した病態といえる。また、病態を説明する生物学的根拠がいまだ不十分なことも、行動嗜癖の位置づけを難しくさせている。物質[[依存症]]の場合、すでに精神作用物質の習慣的摂取による脳内変化や生理学的依存の存在が明らかにされており、それに依拠して依存症概念が確立された経緯がある。


 こうした経緯から、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めることについては、いまだ専門家のあいだでも議論がある<ref name=ref1><pubmed>11691967</pubmed></ref>。実際、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めるかどうかについては、1980年代前半から検討され続けられながらも、実際には、[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th edition]] ([[DSM-IV]])においては「[[衝動制御の障害]]」という疾患分類に、また、[[International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems]] ([[ICD-10]])においては「[[習慣及び衝動の障害]]」の項目に入れられていた。
 こうした経緯から、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めることについては、いまだ専門家のあいだでも議論がある<ref name=ref1><pubmed>11691967</pubmed></ref>。実際、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めるかどうかについては、1980年代前半から検討され続けられながらも、実際には、[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th edition]] ([[DSM-IV]])においては「[[衝動制御の障害]]」という疾患分類に、また、[[International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems]] ([[ICD-10]])においては「[[習慣及び衝動の障害]]」の項目に入れられていた。
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*[[依存症]]
*[[依存症]]
*[[報酬系]]
*[[報酬系]]
*[[]]
== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
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