12
回編集
細 (→手話の神経科学) |
Tomooinubushi (トーク | 投稿記録) 細 (メールにて指摘された部分について加筆修正) |
||
8行目: | 8行目: | ||
英:sign language <br> | 英:sign language <br> | ||
{{box|text= 手話とは手指の形・位置・動きや表情などの視覚情報を伝達手段とし、乳幼児が自然に獲得できる[[wj:自然言語|自然言語]]である。[[wj:日本手話|日本手話]] (Japanese Sign Language) や[[wj:アメリカ手話|アメリカ手話]] (American Sign Language) などがある。音声言語と同様に[[wj:音韻|音韻]]体系と[[wj:文法|文法]] | {{box|text= 手話とは手指の形・位置・動きや表情などの視覚情報を伝達手段とし、乳幼児が自然に獲得できる[[wj:自然言語|自然言語]]である。[[wj:日本手話|日本手話]] (Japanese Sign Language) や[[wj:アメリカ手話|アメリカ手話]] (American Sign Language) などがある。音声言語と同様に[[wj:音韻|音韻]]体系と[[wj:文法|文法]]体系が備わっている。手話単語は「手の形・手の位置・手の動き」などの要素から構成され、これを[[wj:音素|音素]] (phoneme) と呼ぶ。音素は特定の音韻規則に従って組み合わされている。例えば両手を共に動かす場合には、その動きは同一か対称になり、両手の形は必ず同一となる(対称制約)。また、両手の形が異なる場合には片手のみを動かし、動かない方の手はごく少数の限られた形 (無標手型) になる(優位制約)。このように、手話単語における身体の動きは音韻規則に従って体系化されており、単なる[[wj:ジェスチャー|ジェスチャー]]や[[wj:マイム |マイム]]とは異なっている。手話単語を統辞規則に従い、特定の語順で構造化し、文を作る事もできる。[[fMRI]]を用いた[[脳機能イメージング]]研究では、聴者における日本語の文章理解課題時の脳活動と同様に、[[言語野]]の活動が左優位であることが確かめられている。さらに[[wj:単語|単語]]・[[wj:文|文]]・[[wj: 文脈 | 文脈]]という言語情報の統合のレベルに対応して、左[[前頭皮質]]の活動が背側から腹側方向にかけて広がっていくことが示された。音声言語と手話の処理機構の相同性の解明は、視覚や[[聴覚]]といったモダリティーに依存しない普遍的な言語処理機構の解明に役立ち、より詳細な研究が望まれる。}} | ||
==手話とは== | ==手話とは== | ||
37行目: | 37行目: | ||
== 手話の神経科学 == | == 手話の神経科学 == | ||
[[Image:Tomooinubushi fig 6.jpg|thumb|300px|'''図4. 日本手話の文処理時の脳活動'''<br>日本手話の文における非単語の有無を判断する単語レベルの判断課題、文法の誤りを判断する文レベルの判断課題、会話における意味的な誤りを判断する文脈レベルの判断課題の3種類の言語課題のほか、2つの手話文の逆再生映像が同一か否かを判断する対照課題を解いている際のろう者の脳活動をfMRIによって計測した。各課題時の脳活動を解析した結果、これら3つの言語課題の順で (赤・緑・青) | [[Image:Tomooinubushi fig 6.jpg|thumb|300px|'''図4. 日本手話の文処理時の脳活動'''<br>日本手話の文における非単語の有無を判断する単語レベルの判断課題、文法の誤りを判断する文レベルの判断課題、会話における意味的な誤りを判断する文脈レベルの判断課題の3種類の言語課題のほか、2つの手話文の逆再生映像が同一か否かを判断する対照課題を解いている際のろう者の脳活動をfMRIによって計測した。各課題時の脳活動を解析した結果、これら3つの言語課題の順で (赤・緑・青)、左前頭皮質の左外側運動前皮質 (L. LPMC) から、左下前頭回弁蓋部/三角部 (L. F3op/F3t)、左下前頭回眼窩部 (L. F3O) へと広がっていく活動パターンが観察された。(Inubushi 2013)<ref name=ref2><pubmed> 24155706</pubmed></ref>より改変して転載。]] | ||
手話の神経基盤に関わる研究がいくつか報告されている。例えば、デイビッド・コリーナ (David Corina) らによる論文では、ジェスチャーの理解と生成が保たれているにも関わらず、手話の理解と発話に障害の起きた例が報告されている<ref><pubmed> 1446211 </pubmed></ref>。W. L. と呼ばれるこの患者では、左半球の[[下前頭回]]とその領域に隣接する[[白質]]線維である弓状束、さらに、[[縁上回]]の一部とその奥にある白質領域が損傷を受けていた。 | 手話の神経基盤に関わる研究がいくつか報告されている。例えば、デイビッド・コリーナ (David Corina) らによる論文では、ジェスチャーの理解と生成が保たれているにも関わらず、手話の理解と発話に障害の起きた例が報告されている<ref><pubmed> 1446211 </pubmed></ref>。W. L. と呼ばれるこの患者では、左半球の[[下前頭回]]とその領域に隣接する[[白質]]線維である弓状束、さらに、[[縁上回]]の一部とその奥にある白質領域が損傷を受けていた。 |
回編集