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Deutsche and Howarth<ref name=ref3><pubmed>14049780</pubmed></ref>は“欲すること”と“快いこと”を司る機構が別々に脳内に存在し、これらの機構がICSSにより賦活されることで刺激をもたらす行動が持続するというICSS行動の恒常性説を提唱した。この仮説では、脳内には“欲すること”をもたらす動因機構と“快いこと”をもたらす強化機構があると仮定されている。前者の機構は、生理的均衡状態が保たれなくなると、食べ物や水などへの動因を生じさせ、行動を賦活させる。一方、後者の機構は、動因に基づき適切な報酬が随伴する(快情動をもたらす)行動を選択させる。動因により賦活された行動によって得られた食べ物や水などの自然報酬は、動因を低減させ、賦活された行動はやがて止む。これにより生体は生理的均衡状態を恒常的に保つことができる(恒常性)。しかしながら、ICSSはこの両方の機構を同時に賦活する。そして、強化機構ではICSSによる報酬効果と自然報酬の効果は同じように働くが、動因機構では自然報酬とは異なり、ICSSは動因が増大させてしまう。したがって、恒常性のために生理的均衡状態を取り戻そうとして、いつまでもICSSをもたらす行動が維持される。この恒常性説は、ICSS行動の飽和(saturation)がないことや、いったんICSSが与えられなくなるとすぐに動因の賦活が減衰するために行動の消去が早いなどの現象を説明することができる。 | Deutsche and Howarth<ref name=ref3><pubmed>14049780</pubmed></ref>は“欲すること”と“快いこと”を司る機構が別々に脳内に存在し、これらの機構がICSSにより賦活されることで刺激をもたらす行動が持続するというICSS行動の恒常性説を提唱した。この仮説では、脳内には“欲すること”をもたらす動因機構と“快いこと”をもたらす強化機構があると仮定されている。前者の機構は、生理的均衡状態が保たれなくなると、食べ物や水などへの動因を生じさせ、行動を賦活させる。一方、後者の機構は、動因に基づき適切な報酬が随伴する(快情動をもたらす)行動を選択させる。動因により賦活された行動によって得られた食べ物や水などの自然報酬は、動因を低減させ、賦活された行動はやがて止む。これにより生体は生理的均衡状態を恒常的に保つことができる(恒常性)。しかしながら、ICSSはこの両方の機構を同時に賦活する。そして、強化機構ではICSSによる報酬効果と自然報酬の効果は同じように働くが、動因機構では自然報酬とは異なり、ICSSは動因が増大させてしまう。したがって、恒常性のために生理的均衡状態を取り戻そうとして、いつまでもICSSをもたらす行動が維持される。この恒常性説は、ICSS行動の飽和(saturation)がないことや、いったんICSSが与えられなくなるとすぐに動因の賦活が減衰するために行動の消去が早いなどの現象を説明することができる。 | ||
Berridge and Robinsonref name=ref4><pubmed>9858756</pubmed></ref>は興味深い研究を報告している。この研究では、ドーパミン系の神経細胞を選択的に破壊した[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]は食事や水などの報酬を獲得しようとしなくなり、強制的に食事を与えないと餓死してしまうことが示された。これらの結果は、ドーパミン系神経細胞の破壊によってこのマウスの“欲すること”が障害されたことを示す。しかしながら、この破壊マウスは甘い味や苦い味を口に注入されると健常マウスと同じ行動を示した。これらの結果は、このマウスが“快いこと”かどうかを弁別できることを示唆する。ドーパミン系神経経路は“欲すること”に関係すると考えられる。 | |||
== 行動変容と快・不快刺激の出現・消失(あるいは省略)の関係性 == | == 行動変容と快・不快刺激の出現・消失(あるいは省略)の関係性 == |