「キネシン」の版間の差分

キネシンは、モータータンパク質の一つで、主にATPを加水分解しながら微小管に沿って運動する性質を持ち、細胞分裂や細胞内物質輸送に重要な働きをしている。キネシンは遺伝子ファミリーを形成しており、キネシンスーパーファミリータンパク質（kinesin superfamily proteins, KIFs）と呼ばれる。KIFsは哺乳類（マウス、ヒト）で45種類の遺伝子が同定されている。KIFsは細胞内で膜オルガネラ、タンパク複合体及びmRNAを含むカーゴ（荷物）を輸送することで、細胞の機能、生存、形態形成に重要な役割を果たしている。最近、このKIFsが記憶・学習などの脳の高次機能、神経回路網形成、左右の決定、腫瘍の抑制に関与していることが明らかとなった。  

細胞はその形態形成、及び機能発現に必要なタンパク質及び脂質を合成した後、多種類の膜小器官あるいは蛋白複合体として必要とされる部位に適切に送り分けられており、この物質輸送の機構は神経細胞や極性のある上皮細胞のみでなく、あらゆる細胞で細胞機能の要となっている。