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Tomokouekita (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville & Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO'Keefe & Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O'KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという2つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O'Keefe & Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins & O'Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O'Keefe & Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。 | 海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville & Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO'Keefe & Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O'KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという2つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O'Keefe & Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins & O'Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O'Keefe & Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。 | ||
=== 場所細胞の発見 === | === 場所細胞の発見 === | ||
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後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay & Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier & Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita & Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, & Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。 | 後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay & Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier & Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita & Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, & Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。 | ||
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化 === | |||
上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson & Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, & Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris & Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。 | |||
利根川らの研究 | |||
CA1ノックアウトとCA3ノックアウトの違い | |||
岡田らの研究 | |||
CA1,CA3の単独破壊 | |||
Moserらの研究、東北大飯島らの研究 | |||
背側と腹側の機能分離 | |||
== ヒトの空間記憶 == | == ヒトの空間記憶 == | ||
== 関連項目 == | |||
== 参考文献 == |
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