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<font size="+1">鍋倉 淳一</font><br> | <font size="+1">鍋倉 淳一</font><br> | ||
''大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所''<br> | ''大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年2月26日 原稿完成日:2015年3月20日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | ||
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英語名:gephyrin 英略称:GPHN | 英語名:gephyrin 英略称:GPHN | ||
{{box|text= | {{box|text= ゲフィリンは、抑制性シナプス後膜における足場タンパク質であり、グリシン受容体および一部のGABA<sub>A</sub>受容体のシナプス局在に関わっている。ゲフィリンの機能や局在は翻訳後修飾、関連タンパク質との結合、神経活動、受容体の活性など様々な要因によって制御される<ref name=ref1><pubmed>10811719</pubmed></ref>。}} | ||
ゲフィリンは、抑制性シナプス後膜における足場タンパク質であり、グリシン受容体および一部のGABA<sub>A</sub>受容体のシナプス局在に関わっている。ゲフィリンの機能や局在は翻訳後修飾、関連タンパク質との結合、神経活動、受容体の活性など様々な要因によって制御される<ref name=ref1><pubmed>10811719</pubmed></ref>。 | |||
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{{GNF_Protein_box | {{GNF_Protein_box | ||
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[[image:ゲフィリン3.png|thumb|350px|'''図3.ゲフィリン関連分子'''<br>(GABAAR:GABA<sub>A</sub>受容体、GlyR:グリシン受容体、HSC70:HSP70熱ショックタンパク質、KIF5:キネシンスーパーファミリータンパク質5、Dlc1/2:ダイニン軽鎖1/2、GABARAP:GABA<sub>A</sub> receptor-associated protein)]] | [[image:ゲフィリン3.png|thumb|350px|'''図3.ゲフィリン関連分子'''<br>(GABAAR:GABA<sub>A</sub>受容体、GlyR:グリシン受容体、HSC70:HSP70熱ショックタンパク質、KIF5:キネシンスーパーファミリータンパク質5、Dlc1/2:ダイニン軽鎖1/2、GABARAP:GABA<sub>A</sub> receptor-associated protein)]] | ||
ゲフィリンはリン酸化、[[パルミトイル化]]、[[アセチル化]] | ゲフィリンはリン酸化、[[パルミトイル化]]、[[アセチル化]]によってその機能と局在が変化する。例えば、シナプスにおけるゲフィリン局在は細胞[[接着分子]]である[[β1インテグリン]]の活性化によって増加する一方、[[β3インテグリン]]の活性化によって減少する<ref name=ref11><pubmed>20935643</pubmed></ref>。また、ゲフィリンのセリン残基268が[[分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ]]である[[ERK1]]/[[ERK2|2]]によって<ref name=ref12><pubmed>23408424</pubmed></ref>、セリン残基270が[[グリコーゲン合成酵素キナーゼ]]である[[GSK3β]]によって<ref name=ref13><pubmed>21173228</pubmed></ref>リン酸化されると、ゲフィリンのシナプス局在が減少する。これはCa<sup>2+</sup>/ERK依存性[[セリンプロテアーゼ]]である[[カルパイン1]]によるゲフィリンの分解によると考えられる<ref name=ref8 />。この他、[[Cdk5]]によるセリン残基270のリン酸化<ref name=ref14><pubmed>22778260</pubmed></ref>や[[熱ショックタンパク]]質であるHsc70<ref name=ref15><pubmed>21209184</pubmed></ref>、アクチン結合タンパク質の[[プロフィリン1]]/[[プロフィリン2|2]]、[[mammalian Ena/VASP]] (enabled/vasodilator stimulated phosphoprotein)、[[Raft 1]]、[[チューブリン]]などの因子が報告されている<ref name=ref4 /> <ref name=ref8 />(図3)。 | ||
==発現== | ==発現== | ||
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==機能== | ==機能== | ||
===グリシン受容体/GABA<sub>A</sub>受容体の固定化=== | ===グリシン受容体/GABA<sub>A</sub>受容体の固定化=== | ||
[[image:ゲフィリン2.png|thumb|350px|''' | [[image:ゲフィリン2.png|thumb|350px|'''図4.シナプス後膜におけるゲフィリンの局在'''<br>DAB染色による電子顕微鏡画像。嗅球顆粒細胞のプレシナプス(大矢印)と僧帽細胞のゲフィリン(小矢印)。<br>[http://www.researchgate.net/profile/Marco_Sassoe-Pognetto/publications Marco Sassoè-Pognetto]博士のご厚意による提供<ref name=ref38><pubmed>9603375</pubmed></ref>]] | ||
グリシン受容体が集積するマイクロドメインは、グリシン作動性[[シナプス前終末]]と対応した[[シナプス後膜]]に認められる<ref name=ref25><pubmed>10460250</pubmed></ref>(図4)。その際、グリシン受容体βサブユニットの細胞質ループに存在する18のアミノ酸モチーフにゲフィリンが結合することで、シナプス後膜におけるグリシン受容体の係留に関与している<ref name=ref26><pubmed>7546736</pubmed></ref>。そのため、[[免疫組織化学法]]においては、しばしば(グリシン受容体βサブユニットとヘテロマーを形成する)グリシン受容体α1サブユニット特異的抗体を用い、ゲフィリン抗体と二重染色することで[[シナプス]]後膜に局在するグリシン受容体が標識される。 | グリシン受容体が集積するマイクロドメインは、グリシン作動性[[シナプス前終末]]と対応した[[シナプス後膜]]に認められる<ref name=ref25><pubmed>10460250</pubmed></ref>(図4)。その際、グリシン受容体βサブユニットの細胞質ループに存在する18のアミノ酸モチーフにゲフィリンが結合することで、シナプス後膜におけるグリシン受容体の係留に関与している<ref name=ref26><pubmed>7546736</pubmed></ref>。そのため、[[免疫組織化学法]]においては、しばしば(グリシン受容体βサブユニットとヘテロマーを形成する)グリシン受容体α1サブユニット特異的抗体を用い、ゲフィリン抗体と二重染色することで[[シナプス]]後膜に局在するグリシン受容体が標識される。 | ||
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=== 輸送カーゴ補助タンパク質として === | === 輸送カーゴ補助タンパク質として === | ||
加えて、ゲフィリンが輸送カーゴ補助タンパク質として、グリシン受容体の[[細胞内輸送]]に関与することも示唆されている<ref name=ref22 />。[[粗面小胞体]]-[[ゴルジ体]]を経て[[分泌]]小胞に包まれたグリシン受容体は、ゲフィリンを介して[[順行性輸送]]タンパク質である[[KIF5]] | 加えて、ゲフィリンが輸送カーゴ補助タンパク質として、グリシン受容体の[[細胞内輸送]]に関与することも示唆されている<ref name=ref22 />。[[粗面小胞体]]-[[ゴルジ体]]を経て[[分泌]]小胞に包まれたグリシン受容体は、ゲフィリンを介して[[順行性輸送]]タンパク質である[[KIF5]]に結合し、[[微小管]]に沿って輸送されることが報告されている<ref name=ref22 />。また、[[逆行性輸送]]タンパク質である[[ダイニン]]を構成する[[ダイニン軽鎖]](Dlc1/2)とゲフィリンが結合することも報告されている<ref name=ref37><pubmed>12097491</pubmed></ref>。 | ||
=== 神経系以外における生理機能 === | === 神経系以外における生理機能 === |
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