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==サブタイプ== | ==サブタイプ== | ||
[[wikipedia:JA:|哺乳類]]では、''Slc18a1''遺伝子にコードされるVMAT1と、''Slc18a2''遺伝子にコードされるVMAT2の、2種類のサブタイプが存在する。これらVMAT1とVMAT2は、[[小胞アセチルコリントランスポーター]](VAChT)とともにSLC(solute carrier)トランスポータースーパーファミリーの1つ、SLC18ファミリーを形成している<ref><pubmed>16762425</pubmed></ref>。 | [[wikipedia:JA:|哺乳類]]では、''Slc18a1''遺伝子にコードされるVMAT1と、''Slc18a2''遺伝子にコードされるVMAT2の、2種類のサブタイプが存在する。これらVMAT1とVMAT2は、[[小胞アセチルコリントランスポーター]](VAChT)とともにSLC(solute carrier)トランスポータースーパーファミリーの1つ、SLC18ファミリーを形成している<ref><pubmed>16762425</pubmed></ref>。 | ||
==分布== | ==分布== | ||
[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/76098391 VMAT1]は、主に[[副腎髄質]]の[[クロム親和性細胞]]や腸管の[[腸クロム親和性細胞]]など、さまざまな[[神経内分泌細胞]]の有芯小胞の膜上に存在する。一方で、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/968 VMAT2]は、主に[[中枢神経系]]や[[交感神経系]]のモノアミン作動性神経終末にある[[シナプス小胞]]の膜上に存在するが、VMAT1と同様に副腎髄質のクロム親和性細胞の有芯小胞にも存在する。 | [http://mouse.brain-map.org/experiment/show/76098391 VMAT1]は、主に[[副腎髄質]]の[[クロム親和性細胞]]や腸管の[[腸クロム親和性細胞]]など、さまざまな[[神経内分泌細胞]]の有芯小胞の膜上に存在する。一方で、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/968 VMAT2]は、主に[[中枢神経系]]や[[交感神経系]]のモノアミン作動性神経終末にある[[シナプス小胞]]の膜上に存在するが、VMAT1と同様に副腎髄質のクロム親和性細胞の有芯小胞にも存在する。 | ||
==構造と機能== | ==構造と機能== | ||
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上述したように、VMAT1とVMAT2は別々の遺伝子によりコードされているが、両者の配列相同性および構造は極めて類似している。[[細胞膜]][[モノアミントランスポーター]]と同じく、12個の膜貫通ドメイン(TMD1~12)をもつ[[wikipedia:ja:膜タンパク質|膜タンパク質]]で、アミノ末端(N末端)とカルボキシ末端(C末端)は細胞質側に位置する(図1参照)。1番目と2番目の膜貫通ドメイン(TMD1~2)の間には、小胞内に面するループ構造をもつ。膜貫通領域の予測法であるハイドロパシーモデルでは、このループ構造に数個の[[wikipedia:ja:グリコシル化|グリコシル化]]部位が存在すると予測されている<ref><pubmed>20135628</pubmed></ref>。 | 上述したように、VMAT1とVMAT2は別々の遺伝子によりコードされているが、両者の配列相同性および構造は極めて類似している。[[細胞膜]][[モノアミントランスポーター]]と同じく、12個の膜貫通ドメイン(TMD1~12)をもつ[[wikipedia:ja:膜タンパク質|膜タンパク質]]で、アミノ末端(N末端)とカルボキシ末端(C末端)は細胞質側に位置する(図1参照)。1番目と2番目の膜貫通ドメイン(TMD1~2)の間には、小胞内に面するループ構造をもつ。膜貫通領域の予測法であるハイドロパシーモデルでは、このループ構造に数個の[[wikipedia:ja:グリコシル化|グリコシル化]]部位が存在すると予測されている<ref><pubmed>20135628</pubmed></ref>。 | ||
===モノアミン貯蔵の仕組み=== | ===モノアミン貯蔵の仕組み=== | ||
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VMATは、小胞内外のH<sup>+</sup>の[[電気化学的勾配]]を駆動力としてモノアミンを小胞内に輸送し、開口放出に備えて貯蔵している。小胞内へのモノアミン貯蔵は、[[神経活動]]に依存した開口放出に備えるだけでなく、モノアミンの合成と分解を調節する上でも必要である。VMAT1とVMAT2の場合、1分子のモノアミンを取り込むために、2分子のH<sup>+</sup>が必要となる。H<sup>+</sup>は[[wikipedia:V-ATPase|V型ATPアーゼ]]の[[wikipedia:ja:ATP|ATP]]加水分解によって産生され、小胞内に移動される。これにより膜内外でpHの勾配が生じるため、VMATはH<sup>+</sup>とモノアミンを[[対向輸送]]することで小胞内にモノアミンを取り込んでいる(図2参照)<ref name=ref1><pubmed>19259829</pubmed></ref>。また、[[wikipedia:ClC3|ClC3]]や[[wikipedia:ClC7|ClC7]]などのCl<sup>-</sup>チャネルを通ってCl<sup>-</sup>イオンが小胞内に出入りすることで、膜内外における電荷のバランスが維持される。これにより小胞膜上のV型ATPアーゼとVMATは個別に働くことができ、効率のよいモノアミンの貯蔵が可能となる。V型ATPアーゼ、あるいはCl<sup>-</sup>チャネルが阻害されると、小胞内のpHが酸性に維持されず、モノアミンを小胞内に貯蔵できなくなる<ref><pubmed>12122145</pubmed></ref><ref><pubmed>11864736</pubmed></ref>。 | VMATは、小胞内外のH<sup>+</sup>の[[電気化学的勾配]]を駆動力としてモノアミンを小胞内に輸送し、開口放出に備えて貯蔵している。小胞内へのモノアミン貯蔵は、[[神経活動]]に依存した開口放出に備えるだけでなく、モノアミンの合成と分解を調節する上でも必要である。VMAT1とVMAT2の場合、1分子のモノアミンを取り込むために、2分子のH<sup>+</sup>が必要となる。H<sup>+</sup>は[[wikipedia:V-ATPase|V型ATPアーゼ]]の[[wikipedia:ja:ATP|ATP]]加水分解によって産生され、小胞内に移動される。これにより膜内外でpHの勾配が生じるため、VMATはH<sup>+</sup>とモノアミンを[[対向輸送]]することで小胞内にモノアミンを取り込んでいる(図2参照)<ref name=ref1><pubmed>19259829</pubmed></ref>。また、[[wikipedia:ClC3|ClC3]]や[[wikipedia:ClC7|ClC7]]などのCl<sup>-</sup>チャネルを通ってCl<sup>-</sup>イオンが小胞内に出入りすることで、膜内外における電荷のバランスが維持される。これにより小胞膜上のV型ATPアーゼとVMATは個別に働くことができ、効率のよいモノアミンの貯蔵が可能となる。V型ATPアーゼ、あるいはCl<sup>-</sup>チャネルが阻害されると、小胞内のpHが酸性に維持されず、モノアミンを小胞内に貯蔵できなくなる<ref><pubmed>12122145</pubmed></ref><ref><pubmed>11864736</pubmed></ref>。 | ||
===VMAT2の神経保護作用=== | ===VMAT2の神経保護作用=== | ||
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こうしたメカニズムは神経保護作用の点で重要であり、合成されたモノアミンの細胞質への拡散を最小限に抑え、モノアミンの酸化やそれに伴う[[神経細胞毒性]]発現を抑制すると考えられる。細胞質にモノアミンが過剰に存在すると、それらは酸化され[[wikipedia:ja:キノン|キノン]]やジヒドロキシ化合物に変化する。これら酸化物が産生する[[wikipedia:ja:活性酸素|活性酸素]]が原因となり、[[神経変性]]が誘導される。こうした神経細胞毒性発現は、[[精神刺激薬]]である[[メタンフェタミン]]においても見られ、VMAT2ヘテロ欠損マウスではメタンフェタミンによる神経細胞毒性の増強が示されており、またMPTPなどの外因性神経毒性物質を小胞内に閉じ込めることにより、活性酸素による神経変性に対して抑制作用をもつことも分かっている<ref name=ref1 /><ref><pubmed>17664021</pubmed></ref>。 | こうしたメカニズムは神経保護作用の点で重要であり、合成されたモノアミンの細胞質への拡散を最小限に抑え、モノアミンの酸化やそれに伴う[[神経細胞毒性]]発現を抑制すると考えられる。細胞質にモノアミンが過剰に存在すると、それらは酸化され[[wikipedia:ja:キノン|キノン]]やジヒドロキシ化合物に変化する。これら酸化物が産生する[[wikipedia:ja:活性酸素|活性酸素]]が原因となり、[[神経変性]]が誘導される。こうした神経細胞毒性発現は、[[精神刺激薬]]である[[メタンフェタミン]]においても見られ、VMAT2ヘテロ欠損マウスではメタンフェタミンによる神経細胞毒性の増強が示されており、またMPTPなどの外因性神経毒性物質を小胞内に閉じ込めることにより、活性酸素による神経変性に対して抑制作用をもつことも分かっている<ref name=ref1 /><ref><pubmed>17664021</pubmed></ref>。 | ||
==精神刺激薬とVMAT== | ==精神刺激薬とVMAT== | ||
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上述の精神刺激薬以外に、VMATに作用する薬剤としてよく知られているものに、[[レセルピン]]と[[テトラベナジン]]がある。いずれもVMAT阻害作用を有しており、レセルピンはVMATのモノアミン認識部位に結合し、モノアミンの小胞内への輸送を阻害する。一方で、テトラベナジンは、レセルピンの作用部位とは異なる部位に結合して阻害作用を発揮すると考えられている<ref><pubmed>17233532</pubmed></ref>。 | 上述の精神刺激薬以外に、VMATに作用する薬剤としてよく知られているものに、[[レセルピン]]と[[テトラベナジン]]がある。いずれもVMAT阻害作用を有しており、レセルピンはVMATのモノアミン認識部位に結合し、モノアミンの小胞内への輸送を阻害する。一方で、テトラベナジンは、レセルピンの作用部位とは異なる部位に結合して阻害作用を発揮すると考えられている<ref><pubmed>17233532</pubmed></ref>。 | ||
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|+ '''表.各種薬剤の標的トランスポーター分子''' | |||
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| 薬剤の標的分子 | |||
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| コカイン | |||
| rowspan="2" | 細胞膜モノアミントランスポーター | |||
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| メチルフェニデート | |||
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| アンフェタミン | |||
| rowspan="2" | 細胞膜モノアミントランスポーター<br>'''小胞モノアミントランスポーター(VMAT2)''' | |||
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| メタンフェタミン | |||
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| レセルピン | |||
| rowspan="2" | 細胞膜モノアミントランスポーター<br>'''小胞モノアミントランスポーター(VMAT2)''' | |||
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| テトラベナジン | |||
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==関連項目== | ==関連項目== |