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英語名:language 独:Sprache 仏:langage
英語名:language 独:Sprache 仏:langage


{{box|text= 言語は、ある特定の国や地域や文化に属する人々のコミュニケーションや相互作用において使用されるもので、音声や書かれた記号からなる体系である。脳科学が対象とする言語は、[[言語学]]の知見、[[神経心理学]]の知見、そして[[イメージング研究]]の知見を総合して考える必要がある。[[言語学]]の主な分野としては、[[音韻論]]、[[形態論]]、[[統語論]]、[[意味論]]、[[語用論]]があり、代表的な理論には、[[生成文法]]、[[認知意味論]]、そして[[関連性理論]]がある。[[神経心理学]]では、[[失語症]]の研究から、[[環シルビウス溝言語領域]]が、[[音韻論]]、[[形態論]]、そして[[統語論]]の神経基盤、すなわち[[言語中枢]]と考えられている。また、[[環・環シルビウス溝言語領域]]は[[意味論]]的な情報の充填、[[右半球言語領域]]は[[語用論]]的な情報の充填に関与することを予想している。[[イメージング研究]]では、[[環シルビウス溝言語領域]]が[[言語中枢]]であること、[[環・環シルビウス溝言語領域]]が[[意味論]]的な情報の充填に関与していることを支持している。さらに、内側[[前頭前野]]および後[[帯状回]]は、[[語用論]]的な情報の充填に関与していることが示唆されている。また、[[語用論]]的な情報の充填に関しては、[[右半球言語領域]]や[[皮質下領域]]の関与も示唆されているものの、一貫した見解は得られていない。}}
{{box|text= 言語は、ある特定の国や地域や文化に属する人々のコミュニケーションや相互作用において使用されるもので、音声や書かれた記号からなる体系である。脳科学が対象とする言語は、[[言語学]]の知見、[[神経心理学]]の知見、そして[[イメージング研究]]の知見を総合して考える必要がある。[[言語学]]の主な分野としては、[[音韻論]]、[[形態論]]、[[統語論]]、[[意味論]]、[[語用論]]があり、代表的な理論には、[[生成文法]]、[[認知意味論]]、そして[[関連性理論]]がある。[[神経心理学]]では、[[失語症]]の研究から、[[環シルビウス溝言語領域]]が、[[音韻論]]、[[形態論]]、そして[[統語論]]の神経基盤、すなわち[[言語中枢]]と考えられている。また、[[環・環シルビウス溝言語領域]]は[[意味論]]的な情報の充填、[[右半球言語領域]]は[[語用論]]的な情報の充填に関与することを予想している。[[イメージング研究]]では、[[環シルビウス溝言語領域]]が[[言語中枢]]であること、[[環・環シルビウス溝言語領域]]が[[意味論]]的な情報の充填に関与していることを支持している。さらに、内側[[前頭前野]]および後[[帯状回]]は、[[語用論]]的な情報の充填に関与していることが示唆されている。なお、[[語用論]]的な情報の充填に関しては、[[右半球言語領域]]や[[皮質下領域]]の関与も示唆されているものの、一貫した見解は得られていない。}}


==言語とは==
==言語とは==
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*[[環・環シルビウス溝言語領域]](peri-perisylvian speech zone)は、[[環シルビウス溝言語領域]]の周りの[[側頭葉]]、[[頭頂葉]]、[[前頭葉]]を含み、その活動には[[補足運動野]]や[[視床]]も加わり、音声系列への言語的意味の充填に関与していると考えられている。左中下[[側頭回]]の変性病巣で語義理解の障害<ref name=Snowden1992><pubmed>1575456</pubmed></ref>、左[[側頭葉]]前方で固有名詞の回収障害<ref name=Damasio1992><pubmed>1732792</pubmed></ref>が報告されている。また、[[補足運動野]]は会話の開始および維持において重要な役割を果たしている可能性<ref name=Freedman1984><pubmed>6538298</pubmed></ref>、[[視床]]は語彙を長期記憶から呼びだして文に組み込む役割を果たしている可能性<ref name=Mori1986><pubmed>3545050</pubmed></ref>が示唆されている。
*[[環・環シルビウス溝言語領域]](peri-perisylvian speech zone)は、[[環シルビウス溝言語領域]]の周りの[[側頭葉]]、[[頭頂葉]]、[[前頭葉]]を含み、その活動には[[補足運動野]]や[[視床]]も加わり、音声系列への言語的意味の充填に関与していると考えられている。左中下[[側頭回]]の変性病巣で語義理解の障害<ref name=Snowden1992><pubmed>1575456</pubmed></ref>、左[[側頭葉]]前方で固有名詞の回収障害<ref name=Damasio1992><pubmed>1732792</pubmed></ref>が報告されている。また、[[補足運動野]]は会話の開始および維持において重要な役割を果たしている可能性<ref name=Freedman1984><pubmed>6538298</pubmed></ref>、[[視床]]は語彙を長期記憶から呼びだして文に組み込む役割を果たしている可能性<ref name=Mori1986><pubmed>3545050</pubmed></ref>が示唆されている。


*[[右半球言語領域]](right hemisphere language zone)は、状況に応じた言語使用、比喩、談話主題の維持、言語による情動表現など、[[語用論]]において重要な役割を果たしている。この領域の傷害により、[[比喩]]理解の障害、[[ユーモア]]理解の障害、[[談話]]の一貫性の消失などが報告されている<ref name=Weylman1988><pubmed>2451849</pubmed></ref>。また、[[感情]]を言語にこめられなくなったり、言葉が含む[[感情]]が理解できなくなったりすることも報告されている<ref name=Ross1981><pubmed>7271534</pubmed></ref>。
*[[右半球言語領域]](right hemisphere language zone)は、状況に応じた言語使用、[[比喩]]、談話主題の維持、言語による[[情動]]表現など、[[語用論]]において重要な役割を果たしている。この領域の傷害により、[[比喩]]理解の障害、[[ユーモア]]理解の障害、[[談話]]の一貫性の消失などが報告されている<ref name=Weylman1988><pubmed>2451849</pubmed></ref>。また、[[感情]]を言語にこめられなくなったり、言葉が含む[[感情]]が理解できなくなったりすることも報告されている<ref name=Ross1981><pubmed>7271534</pubmed></ref>。


 [[ウェルニッケ=ゲシュビント・モデル]]では<ref name=Geschwind1979><pubmed>493918</pubmed></ref>、言語理解の相と言語産出の相をつなぐことで、ヒトが聞き手ないし読み手として言語理解をしてから、話し手ないし書き手として言語産出をするまでをモデル化している。話し言葉は耳で知覚して、[[視床]]の[[内側膝状体]]を経由して、[[大脳皮質]]の上側頭回にある一次[[聴覚野]]へ情報が入る。[[言語中枢]]である[[ウェルニッケ野]]から[[弓状束]]を通り[[ブローカ野]]に至る領域で理解と産出をおこない、そして一次[[運動野]]から口を制御して音声を発するという経路をたどる。書き言葉は目で知覚して、[[視床]]の[[外側膝状体]]を経由して、大脳皮質の[[後頭葉]]にある一次[[視覚野]]へ情報が入る。[[側頭頭頂接合部]]にある[[角回]]を経由して、[[言語中枢]]で理解と産出をおこない、そして一次運動野から手を制御して文字を記すという経路をたどる。いずれも、主に[[環シルビウス溝言語領域]]における活動のモデル化となっており、言語学における[[音韻論]]、[[形態論]]、そして[[統語論]]の神経基盤、すなわち[[言語中枢]]と考えられている。これに、[[環・環シルビウス溝言語領域]]による[[意味論]]的な情報の充填、[[右半球言語領域]]による[[語用論]]的な情報の充填がおこなわれていると予想している<ref name=Yamadori1996></ref>。
 [[ウェルニッケ=ゲシュビント・モデル]]では<ref name=Geschwind1979><pubmed>493918</pubmed></ref>、言語理解の相と言語産出の相をつなぐことで、ヒトが聞き手ないし読み手として言語理解をしてから、話し手ないし書き手として言語産出をするまでをモデル化している。話し言葉は耳で知覚して、[[視床]]の[[内側膝状体]]を経由して、[[大脳皮質]]の上側頭回にある一次[[聴覚野]]へ情報が入る。[[言語中枢]]である[[ウェルニッケ野]]から[[弓状束]]を通り[[ブローカ野]]に至る領域で理解と産出をおこない、そして一次[[運動野]]から口を制御して音声を発するという経路をたどる。書き言葉は目で知覚して、[[視床]]の[[外側膝状体]]を経由して、大脳皮質の[[後頭葉]]にある一次[[視覚野]]へ情報が入る。[[側頭頭頂接合部]]にある[[角回]]を経由して、[[言語中枢]]で理解と産出をおこない、そして一次運動野から手を制御して文字を記すという経路をたどる。いずれも、主に[[環シルビウス溝言語領域]]における活動のモデル化となっており、言語学における[[音韻論]]、[[形態論]]、そして[[統語論]]の神経基盤、すなわち[[言語中枢]]と考えられている。これに、[[環・環シルビウス溝言語領域]]による[[意味論]]的な情報の充填、[[右半球言語領域]]による[[語用論]]的な情報の充填がおこなわれていると予想している<ref name=Yamadori1996></ref>。
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* 後方の多種感覚の統合をおこなう連合皮質(posterior heteromodal association cortex)
* 後方の多種感覚の統合をおこなう連合皮質(posterior heteromodal association cortex)
**(1) 左下[[頭頂葉]]後方(posterior inferior parietal lobe; temporo-parietal junction, TPJ)は、多様な情報の[[統合]]と内的[[知識]]の検索をおこなっている<ref name=Ni2000><pubmed>10769310</pubmed></ref> <ref name=Friederici2003><pubmed>12507948</pubmed></ref> <ref name=Newman2003><pubmed>12668239</pubmed></ref> <ref name=Humphries2007><pubmed>17500009</pubmed></ref>。具体的には、文や文脈の理解、問題解決、そして計画立案など、概念をうまく組み合わせるという役割を担っていると考えられている<ref name=Binder2009><pubmed> 19329570</pubmed></ref>。
**(1) 左下[[頭頂葉]]後方(posterior inferior parietal lobe; temporo-parietal junction, TPJ)は、多様な情報の[[統合]]と内的[[知識]]の検索をおこなっている<ref name=Ni2000><pubmed>10769310</pubmed></ref> <ref name=Friederici2003><pubmed>12507948</pubmed></ref> <ref name=Newman2003><pubmed>12668239</pubmed></ref> <ref name=Humphries2007><pubmed>17500009</pubmed></ref>。具体的には、文や文脈の理解、問題解決、そして計画立案など、概念をうまく組み合わせるという役割を担っていると考えられている<ref name=Binder2009><pubmed> 19329570</pubmed></ref>。
**(2) 左中[[側頭回]](middle temporal gyrus, MTG)は、物やその属性に関する概念情報の蓄積をおこなっている<ref name=Martin1995><pubmed>7569934</pubmed></ref> <ref name=Martin1996><pubmed>8628399</pubmed></ref> <ref name=Cappa1998><pubmed>9811553</pubmed></ref> <ref name=Chao1999><pubmed>10491613</pubmed></ref> <ref name=Chao1999><pubmed>9950712</pubmed></ref> <ref name=Chao2000><pubmed>10988041</pubmed></ref> <ref name=Moore1999><pubmed>10355678</pubmed></ref> <ref name=Perani1999><pubmed>10199643</pubmed></ref> <ref name=Grossman2002><pubmed>11906234</pubmed></ref> <ref name=Kable2002><pubmed>12167263</pubmed></ref> <ref name=Phillips2002><pubmed>12183352</pubmed></ref> <ref name=Noppeney2003><pubmed>12805112</pubmed></ref> <ref name=Tyler2003><pubmed>12595206</pubmed></ref> <ref name=Davis2004><pubmed>15120536</pubmed></ref> <ref name=Kable2005><pubmed>16356324</pubmed></ref> <ref name=Noppeney2005><pubmed>16242924</pubmed></ref> <ref name=Wallentin2005><pubmed>15812326</pubmed></ref>。一方、上[[側頭回]]はこれまで神経心理学の知見では言語理解の中心的な役割を担っていると考えられてきたが、イメージング研究の知見ではことばの意味の検索というよりはむしろことばの知覚や[[音韻]]処理との関連が強いと考えられている<ref name=Binder2000><pubmed>10847601</pubmed></ref> <ref name=Hickok2003><pubmed>12965041</pubmed></ref> <ref name=Scott2003><pubmed>12536133</pubmed></ref> <ref name=Indefrey2004><pubmed>15037128</pubmed></ref> <ref name=Liebenthal2005><pubmed>15703256</pubmed></ref> <ref name=Buchsbaum2008><pubmed>18201133</pubmed></ref> <ref name=Graves2008><pubmed>18345989</pubmed></ref>。
**(2) 左中[[側頭回]](middle temporal gyrus, MTG)は、物やその属性に関する概念情報の蓄積をおこなっている<ref name=Martin1995><pubmed>7569934</pubmed></ref> <ref name=Martin1996><pubmed>8628399</pubmed></ref> <ref name=Cappa1998><pubmed>9811553</pubmed></ref> <ref name=Chao1999><pubmed>10491613</pubmed></ref> <ref name=Chao1999><pubmed>9950712</pubmed></ref> <ref name=Chao2000><pubmed>10988041</pubmed></ref> <ref name=Moore1999><pubmed>10355678</pubmed></ref> <ref name=Perani1999><pubmed>10199643</pubmed></ref> <ref name=Grossman2002><pubmed>11906234</pubmed></ref> <ref name=Kable2002><pubmed>12167263</pubmed></ref> <ref name=Phillips2002><pubmed>12183352</pubmed></ref> <ref name=Noppeney2003><pubmed>12805112</pubmed></ref> <ref name=Tyler2003><pubmed>12595206</pubmed></ref> <ref name=Davis2004><pubmed>15120536</pubmed></ref> <ref name=Kable2005><pubmed>16356324</pubmed></ref> <ref name=Noppeney2005><pubmed>16242924</pubmed></ref> <ref name=Wallentin2005><pubmed>15812326</pubmed></ref>。一方、上[[側頭回]]はこれまで神経心理学の知見では言語理解の中心的な役割を担っていると考えられてきたが<ref name=Wernicke1874></ref> <ref name=Geschwind1971><pubmed>5545606</pubmed></ref> <ref name=Bogen1976><pubmed>1070943</pubmed></ref> <ref name=Hillis2001><pubmed>11706960</pubmed></ref>、イメージング研究の知見ではことばの意味の検索というよりはむしろことばの知覚や[[音韻]]処理との関連が強いと考えられている<ref name=Binder2000><pubmed>10847601</pubmed></ref> <ref name=Hickok2003><pubmed>12965041</pubmed></ref> <ref name=Scott2003><pubmed>12536133</pubmed></ref> <ref name=Indefrey2004><pubmed>15037128</pubmed></ref> <ref name=Liebenthal2005><pubmed>15703256</pubmed></ref> <ref name=Buchsbaum2008><pubmed>18201133</pubmed></ref> <ref name=Graves2008><pubmed>18345989</pubmed></ref>。
**(3) 左[[紡錘状回]](fusiform gyrus)は物の視覚的な属性に関する内的知識の検索に<ref name=DEsposito1997><pubmed>9153035</pubmed></ref> <ref name=Chao1999><pubmed>9950712</pubmed></ref> <ref name=ThompsonSchill1999><pubmed>10390028</pubmed></ref> <ref name=Wise2000><pubmed>10775709</pubmed></ref> <ref name=Kan2003><pubmed>20957583</pubmed></ref> <ref name=Vandenbulcke2006><pubmed>16767090</pubmed></ref> <ref name=Simmons2007><pubmed>17575989</pubmed></ref>、左[[海馬傍回]](parahippocampal gyrus)は外側の[[意味記憶]]と内側の[[エピソード記憶]]の仲介をしている可能性が示唆されている<ref name=Insausti1987><pubmed>2445796</pubmed></ref><ref name=Suzuki1994><pubmed>7890828</pubmed></ref><ref name=Levy2004><pubmed>15090653</pubmed></ref>。
**(3) 左[[紡錘状回]](fusiform gyrus)は物の視覚的な属性に関する内的知識の検索に<ref name=DEsposito1997><pubmed>9153035</pubmed></ref> <ref name=Chao1999><pubmed>9950712</pubmed></ref> <ref name=ThompsonSchill1999><pubmed>10390028</pubmed></ref> <ref name=Wise2000><pubmed>10775709</pubmed></ref> <ref name=Kan2003><pubmed>20957583</pubmed></ref> <ref name=Vandenbulcke2006><pubmed>16767090</pubmed></ref> <ref name=Simmons2007><pubmed>17575989</pubmed></ref>、左[[海馬傍回]](parahippocampal gyrus)は外側の[[意味記憶]]と内側の[[エピソード記憶]]の仲介をしている可能性が示唆されている<ref name=Insausti1987><pubmed>2445796</pubmed></ref><ref name=Suzuki1994><pubmed>7890828</pubmed></ref><ref name=Levy2004><pubmed>15090653</pubmed></ref>。
*多種感覚の統合をおこなう前頭前皮質(heteromodal prefrontal cortex)
*多種感覚の統合をおこなう前頭前皮質(heteromodal prefrontal cortex)
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**(7) 左後[[帯状回]](posterior cingulate gyrus)は、[[エピソード記憶]]や[[空間視覚]]に関する記憶に関与しており<ref name=Valenstein1987><pubmed>3427404</pubmed></ref> <ref name=Rudge1991><pubmed>2004246</pubmed></ref> <ref name=Aggleton2001><pubmed>11571037</pubmed></ref> <ref name=Vincent2006><pubmed>16899645</pubmed></ref> <ref name=Epstein2007><pubmed>17553986</pubmed></ref> <ref name=Maddock1999><pubmed>10370255</pubmed></ref> <ref name=Mesulam1990><pubmed>2260847</pubmed></ref> <ref name=Small2003><pubmed>12667840</pubmed></ref> <ref name=Hassabis2007><pubmed>18160644</pubmed></ref> <ref name=Johnson2007><pubmed>17574442</pubmed></ref> <ref name=Burgess2008><pubmed>18400925</pubmed></ref> <ref name=Vogt2006><pubmed>16140550</pubmed></ref>、未来の行動の参考とするために過去の経験の記録をしている可能性が示唆されている<ref name=Binder2009><pubmed> 19329570</pubmed></ref>。
**(7) 左後[[帯状回]](posterior cingulate gyrus)は、[[エピソード記憶]]や[[空間視覚]]に関する記憶に関与しており<ref name=Valenstein1987><pubmed>3427404</pubmed></ref> <ref name=Rudge1991><pubmed>2004246</pubmed></ref> <ref name=Aggleton2001><pubmed>11571037</pubmed></ref> <ref name=Vincent2006><pubmed>16899645</pubmed></ref> <ref name=Epstein2007><pubmed>17553986</pubmed></ref> <ref name=Maddock1999><pubmed>10370255</pubmed></ref> <ref name=Mesulam1990><pubmed>2260847</pubmed></ref> <ref name=Small2003><pubmed>12667840</pubmed></ref> <ref name=Hassabis2007><pubmed>18160644</pubmed></ref> <ref name=Johnson2007><pubmed>17574442</pubmed></ref> <ref name=Burgess2008><pubmed>18400925</pubmed></ref> <ref name=Vogt2006><pubmed>16140550</pubmed></ref>、未来の行動の参考とするために過去の経験の記録をしている可能性が示唆されている<ref name=Binder2009><pubmed> 19329570</pubmed></ref>。


 大脳の[[右半球]]に関して、[[語用論]]の対象である[[比喩]]理解において右下[[前頭回]]の関与が報告されている<ref name=Bohrn2012><pubmed>22824234</pubmed></ref><ref name=Rapp2012><pubmed>22759997</pubmed></ref>。一方、[[皮肉]]理解における[[右半球]]の関与に一貫性はない<ref name=Bohrn2012><pubmed>22824234</pubmed></ref><ref name=Spotorno2012><pubmed>22766167</pubmed></ref><ref name=Wang2006><pubmed>18985123</pubmed></ref> <ref name=Uchiyama2006><pubmed>17092490</pubmed></ref> <ref name=Uchiyama2012><pubmed>21333979</pubmed></ref>。また、[[比喩]]理解や[[皮肉]]理解においては、[[尾状核]]や[[扁桃体]]といった[[皮質下領域]]の関与も報告されている<ref name=Uchiyama2012><pubmed>21333979</pubmed></ref>。
 大脳の[[右半球]]に関して、[[語用論]]の対象である[[比喩]]理解において右下[[前頭回]]の関与が報告されている<ref name=Bohrn2012><pubmed>22824234</pubmed></ref><ref name=Rapp2012><pubmed>22759997</pubmed></ref>。一方、[[皮肉]]理解における[[右半球]]の関与に関しては報告により多様である<ref name=Bohrn2012><pubmed>22824234</pubmed></ref><ref name=Spotorno2012><pubmed>22766167</pubmed></ref><ref name=Wang2006><pubmed>18985123</pubmed></ref> <ref name=Uchiyama2006><pubmed>17092490</pubmed></ref> <ref name=Uchiyama2012><pubmed>21333979</pubmed></ref>。また、[[比喩]]理解や[[皮肉]]理解においては、[[尾状核]]や[[扁桃体]]といった[[皮質下領域]]の関与も報告されている<ref name=Uchiyama2012><pubmed>21333979</pubmed></ref>。


 このように、イメージング研究の知見は、上記の(1)左下[[頭頂葉]]後方と(4)左下[[前頭回]]は、[[環シルビウス溝言語領域]]に位置しており、前者は情報[[統合]]や内的[[知識]]の検索に、後者は[[音韻]]・[[文法]]・[[意味]]処理に関与していることから、そこが[[言語中枢]]であることを支持している。また、上記の(2)左中[[側頭回]]、(3)左[[紡錘状回]]と左[[海馬傍回]]は、[[環・環シルビウス溝言語領域]]に位置しており、[[意味記憶]]と[[エピソード記憶]]に関与していることから、これらは[[意味論]]的な情報の充填に関与していることを支持している。さらに、(5)左背内側[[前頭前野]]、(6)左腹内側[[前頭前野]]、そして(7)左後[[帯状回]]は、順に[[注意]]や[[動機づけ]]の制御、[[感情]]や[[報酬]]処理、そして[[エピソード記憶]]の記録に関与していることから、[[語用論]]的な情報の充填に関与していることが示唆されている。また、[[語用論]]的な情報の充填に関しては、[[右半球言語領域]]や[[皮質下領域]]の関与も示唆されているものの、一貫した見解は得られていない。
 このように、イメージング研究の知見は、上記の(1)左下[[頭頂葉]]後方と(4)左下[[前頭回]]は、[[環シルビウス溝言語領域]]に位置しており、前者は情報[[統合]]や内的[[知識]]の検索に、後者は[[音韻]]・[[文法]]・[[意味]]処理に関与していることから、そこが[[言語中枢]]であることを支持している。また、上記の(2)左中[[側頭回]]、(3)左[[紡錘状回]]と左[[海馬傍回]]は、[[環・環シルビウス溝言語領域]]に位置しており、[[意味記憶]]と[[エピソード記憶]]に関与していることから、これらは[[意味論]]的な情報の充填に関与していることを支持している。さらに、(5)左背内側[[前頭前野]]、(6)左腹内側[[前頭前野]]、そして(7)左後[[帯状回]]は、順に[[注意]]や[[動機づけ]]の制御、[[感情]]や[[報酬]]処理、そして[[エピソード記憶]]の記録に関与していることから、[[語用論]]的な情報の充填に関与していることが示唆されている。なお、[[語用論]]的な情報の充填に関しては、[[右半球言語領域]]や[[皮質下領域]]の関与も示唆されているものの、一貫した見解は得られていない。


==関連項目==
==関連項目==
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