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Nogoは[[wikipedia:JA:脊椎動物|脊椎動物]]の[[中枢神経]]細胞に対して[[軸索]]伸長の阻害効果をもち、[[髄鞘]]([[ミエリン]])に含まれる軸索損傷後の再生を阻害する分子であると考えられている。Nogo-A蛋白質内には2つの軸索伸張阻害作用を有する蛋白質ドメインがあり(Δ20とNogo-66)、軸索伸長阻害のみならず、軸索の先端の[[成長円錐]]を虚脱させる作用を持っている。動物実験によりNogo-Aあるいはその下流の[[シグナル]]を阻害することにより、神経損傷時における神経軸索の再生を促すことが示されてきた。このことから軸索が損傷を受け、その再生ができないことにより、重度の後遺障害が残る[[脊髄損傷]]や[[多発性硬化症]]のような[[脱髄疾患]]における軸索再生治療への期待がかけられている。また、病態時のみならず、脳内の[[学習]]と[[記憶]]のプロセスを強化する過程において重要な役割を果たすことが分かっている。 | Nogoは[[wikipedia:JA:脊椎動物|脊椎動物]]の[[中枢神経]]細胞に対して[[軸索]]伸長の阻害効果をもち、[[髄鞘]]([[ミエリン]])に含まれる軸索損傷後の再生を阻害する分子であると考えられている。Nogo-A蛋白質内には2つの軸索伸張阻害作用を有する蛋白質ドメインがあり(Δ20とNogo-66)、軸索伸長阻害のみならず、軸索の先端の[[成長円錐]]を虚脱させる作用を持っている。動物実験によりNogo-Aあるいはその下流の[[シグナル]]を阻害することにより、神経損傷時における神経軸索の再生を促すことが示されてきた。このことから軸索が損傷を受け、その再生ができないことにより、重度の後遺障害が残る[[脊髄損傷]]や[[多発性硬化症]]のような[[脱髄疾患]]における軸索再生治療への期待がかけられている。また、病態時のみならず、脳内の[[学習]]と[[記憶]]のプロセスを強化する過程において重要な役割を果たすことが分かっている。 | ||
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[[Image:Nogo 一次構造.jpg|thumb|right|300px|'''図1 Nogo蛋白質の一次構造''']] | [[Image:Nogo 一次構造.jpg|thumb|right|300px|'''図1 Nogo蛋白質の一次構造''']] | ||
Nogo- | Nogo-A蛋白質は、1163アミノ酸で構成される蛋白質である。Nogo蛋白質の一次構造は、''RTN4''遺伝子によりコードされる二回膜貫通型の蛋白質である(図1)。''RTN4''遺伝子からは、3つのアイソフォームNogo-A,Nogo-B,Nogo-Cが作られる<ref name="ref2"><pubmed> 21045861 </pubmed></ref>。 | ||
軸索伸展阻害作用を持つNogo-66はNogo-A,-B,- | 軸索伸展阻害作用を持つNogo-66はNogo-A,-B,-Cに共通の66個のアミノ酸からなるドメインである。一方、もう一つの軸索伸展阻害作用を持つΔ20ドメインは、Nogo-Aのみが持つことが分かっている。Δ20ドメインが重要と考えているグループとNogo-66が重要と考えているグループに分かれているが、一般的に、Nogoの作用を指すのは、Nogo-66の作用である場合が多い。 | ||
Nogo-Aは二回膜貫通型で、図2で示されるように、アミノ末端部は細胞外に露出していると考えられている。また、アミノ末端側の膜貫通ドメインは二回膜貫通できるのに十分長いと考えられている。 | Nogo-Aは二回膜貫通型で、図2で示されるように、アミノ末端部は細胞外に露出していると考えられている。また、アミノ末端側の膜貫通ドメインは二回膜貫通できるのに十分長いと考えられている。 | ||
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== 発現様式 == | == 発現様式 == | ||
細胞内では、他の[[reticulon]]ファミリー蛋白質と同様に、[[小胞体]] | 細胞内では、他の[[reticulon]]ファミリー蛋白質と同様に、[[小胞体]]もしくは図2に示されるように細胞表面に発現していると考えられている[[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/68162204 Allen Brain Atlas]]。神経系において、発生時期には、[[DCX]] 陽性の新生神経細胞に比較的限局した蛋白質と遺伝子発現が認められる<ref name="ref3"><pubmed> 11978832 </pubmed></ref><ref><pubmed> 20093372 </pubmed></ref>。 一方、生後および成体脳・脊髄においては主として[[希突起膠細胞]]そして、神経細胞に発現が認められる<ref name="ref3" />。希突起膠細胞内では、ミエリン自体における発現はなく、細胞体での発現が高い。また、蛋白質はシナプス前部・後部の両方に発現しており、[[シナプス可塑性]]を担っている可能性が示唆されている。<ref><pubmed> 18337405 </pubmed></ref> Nogo(''RTN4'')遺伝子は成体脳・脊髄の比較的広範な希突起膠細胞と神経細胞への発現が認められるが、蛋白質の発現は固定方法によって結果が異なるとされ、[[wikipedia:JA:パラホルムアルデヒド|パラホルムアルデヒド]]固定によっては、希突起膠細胞により高い発現があると報告されている<ref name="ref3" />。なお、脳や脊髄への損傷によっては発現の変化は認められない<ref name="ref3" />。 | ||