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==定義== | ==定義== | ||
手続き記憶は、自転車に乗れるようになるとか、うまく楽器の演奏ができるようになるというような記憶で、同じような経験の繰り返しにより獲得される。しかしその情報をいつ、どこで獲得したかについての記憶は消失する。 | |||
運動性、知覚性、認知性 (課題解決)の3種が区別されており、いずれの場合も意識ではなく、行動に記憶が反映されることが特徴とされている<ref name=ref2>'''山鳥重'''<br>記憶の神経心理学<br>''医学書院''、東京、2002, pp. 110-126.</ref>。また記憶が一旦形成されると、意識的な処理を伴わず自動的に機能し、長期間保存されることも特徴の一つとして知られている。参考までに、いくつかの辞書に記載されている手続き記憶の辞書的意味を表に載せた (表1)。 | |||
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==神経基盤== | ==神経基盤== | ||
これまでの研究から、手続き記憶には[[大脳基底核]]や[[小脳]]が中心的役割を果たすと考えられている<ref name=ref3>'''Gazzaniga M, Ivry RB, Mangun GR.'''<br>Cognitive Neuroscience: The Biology of the Mind (Paperback). 4th ed. <br>''W. W. Norton & Company'', New York・London, 2013, pp. 390-391.</ref>。このことは、[[エピソード記憶]]の障害を中心とする[[健忘症候群]]のような[[大脳皮質]]病変 (例えば、[[海馬]]、[[間脳]]、[[前脳基底部]]などの障害)を有する疾患では手続き記憶が保たれる一方<ref name=ref4>'''Corkin S.'''<br>Acquisition of motor skill after bilateral medial temporal-lobe excision.<br> ''Neuropsychologia''. 1968; 6: 255-265.</ref> <ref name=ref5><pubmed>7414331</pubmed></ref> <ref name=ref6><pubmed>3860122</pubmed></ref>、[[パーキンソン病]]や[[ハンチントン病]]、[[小脳変性症]]といった大脳基底核疾患・小脳疾患では手続き記憶が障害されることから示唆されている<ref name=ref7><pubmed>8215247</pubmed></ref> <ref name=ref8><pubmed>2969762</pubmed></ref>。 | |||
またさらに、手続き記憶内において獲得する技能の種類 (運動性技能・知覚性技能・認知性技能)によっても、異なる脳領域の関与が考えられている。例えば、運動性技能は、[[黒質]]―[[線条体]]、小脳、[[前頭前野]]、[[補足運動野]]などの関与が示唆されている。また知覚性技能も同様に黒質―線条体、小脳が重要な役割を担っているとされ、認知性技能に関しても黒質から線条体、その主要な出力先である前頭前野が中心的な役割を果たすと考えられている<ref name=ref2 />。 | |||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |