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{{box|text= 多系統萎縮症とは、小脳系、大脳基底核系、自律神経系の3系統を中心とし、錐体路にも及ぶ多系統が変性する神経変性疾患である。小脳系の系統変性を主体とする病型は、オリーブ橋小脳萎縮症、大脳基底核系では線条体黒質変性症、自律神経系ではShy-Drager症候群と呼ばれてきた。小脳性運動失調から発症し、次第に自律神経症状や錐体外路症状、錐体路症状を伴う病型をMSA-C、パーキンソン症状から発症し、次第に自律神経症状を伴う病型をMSA-Pと呼ぶ。全経過は約9年で、誤嚥性肺炎や敗血症などの感染症が死因となることが多いが、夜間の突然死も重要である。根治的治療法は確立されておらず、対症療法が主体となる。病理学的にはオリゴデンドログリアや神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体が観察され、その主な構成成分はリン酸化されたα-シヌクレインである。}} | {{box|text= 多系統萎縮症とは、小脳系、大脳基底核系、自律神経系の3系統を中心とし、錐体路にも及ぶ多系統が変性する神経変性疾患である。小脳系の系統変性を主体とする病型は、オリーブ橋小脳萎縮症、大脳基底核系では線条体黒質変性症、自律神経系ではShy-Drager症候群と呼ばれてきた。小脳性運動失調から発症し、次第に自律神経症状や錐体外路症状、錐体路症状を伴う病型をMSA-C、パーキンソン症状から発症し、次第に自律神経症状を伴う病型をMSA-Pと呼ぶ。全経過は約9年で、誤嚥性肺炎や敗血症などの感染症が死因となることが多いが、夜間の突然死も重要である。根治的治療法は確立されておらず、対症療法が主体となる。病理学的にはオリゴデンドログリアや神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体が観察され、その主な構成成分はリン酸化されたα-シヌクレインである。}} | ||
==概念== | ==概念== | ||
[[小脳]]あるいはその連絡線維の変性を呈する疾患の総称である[[脊髄小脳変性症]]のうち、遺伝性がなく、かつ病変が小脳に限局せず、[[大脳基底核]]、[[自律神経系]]をなどにも及ぶ病型を指す。脊髄小脳変性症の孤発例の約3分の2を占める。 | |||
従来、小脳系の変性を主体とする病型は、[[オリーブ橋小脳萎縮症]](olivopontoserebellar atrophy:OPCA)、大脳基底核系を主体とする病型は、[[線条体黒質変性症]](striatonigral degeneration:SND)、自律神経系を主体とする病型は、[[Shy-Drager症候群]](Shy-Drager syndrome:SDS)とも呼ばれてきた。オリーブ橋小脳萎縮症は[[w:Joseph Jules Dejerine|Dejerine]]とAndré-Thomasによる1900年の報告に始まるが<ref>'''J. J. Dejerine, A. Thomas'''<br>L'átrophie olivo-ponto-cérébelleuse.<br>In: ''Nouvelle iconographie de la Salpêtrière''. 1900, 13, S. 330.</ref>、[[オリーブ小脳系]]を超えた病変も認められていた。1964年にAdamsが提唱した線条体黒質変性症においても、[[黒質]][[線条体]]だけでなく、オリーブ小脳系の変性を伴うと記載されていた<ref><pubmed> 14219099</pubmed></ref>。Shy-Drager症候群はShyとDragerにより1960年に報告されたが<ref><pubmed> 14446364 </pubmed></ref>、1967年のSchwarzによる4剖検例では、自律神経系を超えた変性が認められていた<ref><pubmed> 6018044 </pubmed></ref>。こうした経緯から、GrahamとOppenheimerは1969年、病変分布の共通性から、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、Shy-Drager症候群を包括する多系統委縮症という名称を提案した<ref><pubmed>5774131</pubmed></ref>。高橋によるShy-Drager症候群のわが国初の詳細な剖検報告(1969年)<ref>'''高橋昭, 高城晋, 山本耕平ほか'''<br>Shy-Drager症候群. オリーブ橋小脳萎縮症との関連<br>''臨床神経学'' 9: 121-129, 1969</ref>でも、Shy-Drager症候群とオリーブ橋小脳萎縮症病変の共通性が指摘されている。 | |||
==症候== | ==症候== |