「多系統萎縮症」の版間の差分

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== 病理所見 ==
 MSA-Cでは小脳皮質、[[橋]]小脳系、および[[下オリーブ核]]に強い変性と神経細胞脱落、[[グリオーシス]]が認められる。一方、MSA-Pでは[[被殻]]、黒質の変性が高度であり、特に被殻の後外側部は神経細胞脱落が強く、褐色調の色素沈着がみられる。Shy-Drager症候群とされた剖検例では、[[脊髄]][[中間外側核]]、[[迷走神経]]背側核、[[交感神経節]]などの自律神経諸核の変性が強い。
 多系統萎縮症に共通する疾患特異的バイオマーカーとして、脳幹の[[オリゴデンドロサイト]]や神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体([[glial cytoplasmic inclusion]]:[[GCI]]、[[neuronal cytoplasmic inclusion]]:[[NCI]])が見出され、多系統萎縮症は疾患単位として確立された。さらに、glial cytoplasmic inclusion、neuronal cytoplasmic inclusionの主な構成成分は、リン酸化された[[α-シヌクレイン]]であることが明らかにされた。α-シヌクレインは、もともとオリゴデンドロサイトには発現していない。多系統萎縮症では病的[[グリア細胞]]がα-シヌクレインを産生するという可能性よりも、神経細胞が産生したα-シヌクレインが細胞間を伝搬してグリアに取り込まれるという「[[プリオン]]様のタンパク伝搬仮説」が現在は有力である。パーキンソン病の特徴である[[レヴィー小体]]の主な構成成分もリン酸化α-シヌクレインであるが、同じシヌクレイノパチーである多系統萎縮症とパーキンソン病がどこで分岐するかは未解明である。α-シヌクレイン遺伝子の点変異は家族性パーキンソン病の原因とはなるが、多系統萎縮症の表現型は示さない。α-シヌクレイン遺伝子のduplication、あるいはtriplicationによるまれな家族性パーキンソン病では、レヴィー小体とglial cytoplasmic inclusionがともに認められることから、遺伝子量の増大はglial cytoplasmic inclusion形成の原因の一つと考えられる。
== 病態生理 ==
 ごくまれではあるが、多系統萎縮症には家族発症例があり、これらの解析から辻らにより[[COQ2]]([[コエンザイムQ10]]合成酵素)遺伝子に変異が同定された。変異が2つあれば発症者となり、変異が1つでは発症リスクを高めることになる。日本人のみに認められるV393A変異は多系統萎縮症の約9%に見出され(健常者では約3%)、ホモ変異例では脳内のコエンザイムQ10量が減少していた。
(<u>編集部コメント:ほとんどの場合は病態がわからないということでしょうか?</u>)


==補助診断法==
==補助診断法==
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 脊髄小脳変性症と多系統萎縮症は[[wj:厚生労働省|厚生労働省]]の[[wj:指定難病制度|指定難病制度]]の対象疾患であり、さらに[[wj:介護保健法|介護保健法]]における「特定疾病」に指定されている。制度上Shy-Drager症候群を拡大して多系統萎縮症として独立させたために、脊髄小脳変性症には[[皮質性小脳萎縮症]]と[[遺伝性脊髄小脳変性症]]が残された形となっている。また、MSA-Pはパーキンソン病と診断されている場合が少なからずあり、難病対策制度上の分類には、再度整理が必要である。
 脊髄小脳変性症と多系統萎縮症は[[wj:厚生労働省|厚生労働省]]の[[wj:指定難病制度|指定難病制度]]の対象疾患であり、さらに[[wj:介護保健法|介護保健法]]における「特定疾病」に指定されている。制度上Shy-Drager症候群を拡大して多系統萎縮症として独立させたために、脊髄小脳変性症には[[皮質性小脳萎縮症]]と[[遺伝性脊髄小脳変性症]]が残された形となっている。また、MSA-Pはパーキンソン病と診断されている場合が少なからずあり、難病対策制度上の分類には、再度整理が必要である。
== 病理所見 ==
 MSA-Cでは小脳皮質、[[橋]]小脳系、および[[下オリーブ核]]に強い変性と神経細胞脱落、[[グリオーシス]]が認められる。一方、MSA-Pでは[[被殻]]、黒質の変性が高度であり、特に被殻の後外側部は神経細胞脱落が強く、褐色調の色素沈着がみられる。Shy-Drager症候群とされた剖検例では、[[脊髄]][[中間外側核]]、[[迷走神経]]背側核、[[交感神経節]]などの自律神経諸核の変性が強い。
 多系統萎縮症に共通する疾患特異的バイオマーカーとして、脳幹の[[オリゴデンドロサイト]]や神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体([[glial cytoplasmic inclusion]]:[[GCI]]、[[neuronal cytoplasmic inclusion]]:[[NCI]])が見出され、多系統萎縮症は疾患単位として確立された。さらに、glial cytoplasmic inclusion、neuronal cytoplasmic inclusionの主な構成成分は、リン酸化された[[α-シヌクレイン]]であることが明らかにされた。α-シヌクレインは、もともとオリゴデンドロサイトには発現していない。多系統萎縮症では病的[[グリア細胞]]がα-シヌクレインを産生するという可能性よりも、神経細胞が産生したα-シヌクレインが細胞間を伝搬してグリアに取り込まれるという「[[プリオン]]様のタンパク伝搬仮説」が現在は有力である。パーキンソン病の特徴である[[レヴィー小体]]の主な構成成分もリン酸化α-シヌクレインであるが、同じシヌクレイノパチーである多系統萎縮症とパーキンソン病がどこで分岐するかは未解明である。α-シヌクレイン遺伝子の点変異は家族性パーキンソン病の原因とはなるが、多系統萎縮症の表現型は示さない。α-シヌクレイン遺伝子のduplication、あるいはtriplicationによるまれな家族性パーキンソン病では、レヴィー小体とglial cytoplasmic inclusionがともに認められることから、遺伝子量の増大はglial cytoplasmic inclusion形成の原因の一つと考えられる。
== 病態生理 ==
 ごくまれではあるが、多系統萎縮症には家族発症例があり(<u>編集部コメント:脊髄小脳変性症のうち遺伝性がないものとの定義と矛盾?</u>)、これらの解析から辻らにより[[COQ2]]([[コエンザイムQ10]]合成酵素)遺伝子に変異が同定された。変異が2つあれば発症者となり、変異が1つでは発症リスクを高めることになる。日本人のみに認められるV393A変異は多系統萎縮症の約9%に見出され(健常者では約3%)、ホモ変異例では脳内のコエンザイムQ10量が減少していた。
(<u>編集部コメント:ほとんどの場合は病態がわからないということでしょうか?</u>)


==関連項目==
==関連項目==

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