26
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
27行目: | 27行目: | ||
アストロサイトは空間的にも機能的にも密接にシナプスと結びついている。海馬では原形質性アストロサイトが57%のシナプス(軸索とスパイン)の外周を取り囲んでいて、多くは興奮性シナプスである(37)<ref><pubmed>10436047</pubmed></ref>。一つのアストロサイトが数万ものシナプスとコンタクトを取り、アストロサイトの突起はシナプス近傍を取り囲んでいる。例えばラットの海馬CA1ではアストロサイトは~140,000のシナプスとコンタクトを取っている(27)。アストロサイトは前シナプスから後シナプスに向けて放出されたグルタミン酸をグルタミン酸トランスポーターを介して取り込むだけではなく、アストロサイト自身も伝達物質を放出し、シナプス伝達を制御している。このように前シナプス、後シナプス、それを取り囲むアストロサイトを合わせた構造をtripartite synapseと言う(38)<ref><pubmed>21068831</pubmed></ref>。 | アストロサイトは空間的にも機能的にも密接にシナプスと結びついている。海馬では原形質性アストロサイトが57%のシナプス(軸索とスパイン)の外周を取り囲んでいて、多くは興奮性シナプスである(37)<ref><pubmed>10436047</pubmed></ref>。一つのアストロサイトが数万ものシナプスとコンタクトを取り、アストロサイトの突起はシナプス近傍を取り囲んでいる。例えばラットの海馬CA1ではアストロサイトは~140,000のシナプスとコンタクトを取っている(27)。アストロサイトは前シナプスから後シナプスに向けて放出されたグルタミン酸をグルタミン酸トランスポーターを介して取り込むだけではなく、アストロサイト自身も伝達物質を放出し、シナプス伝達を制御している。このように前シナプス、後シナプス、それを取り囲むアストロサイトを合わせた構造をtripartite synapseと言う(38)<ref><pubmed>21068831</pubmed></ref>。 | ||
===脳血液関門の維持=== | ===脳血液関門の維持=== | ||
アストロサイトはエンドフィート(endfeet)をのばして、脳の毛細血管とコンタクトをとっている。この所見はGolgiにより19世紀に観察された(2,5,40)。アストロサイトは神経細胞とも接しているので、アストロサイトは毛細血管と神経細胞の橋渡しとなり、毛細血管からエネルギーの元となる分子を神経細胞に供給している(28,31)。またアストロサイトはエンドフィートを介して血管平滑筋を制御して血管の直径を変化させる。これにはアストロサイトの細胞内カルシウム濃度が関係している(31,40)。 | アストロサイトはエンドフィート(endfeet)をのばして、脳の毛細血管とコンタクトをとっている。この所見はGolgiにより19世紀に観察された(2,5,40)<ref name=ref2 />,<ref name=ref5 />,<ref><pubmed></pubmed></ref>。アストロサイトは神経細胞とも接しているので、アストロサイトは毛細血管と神経細胞の橋渡しとなり、毛細血管からエネルギーの元となる分子を神経細胞に供給している(28,31)。またアストロサイトはエンドフィートを介して血管平滑筋を制御して血管の直径を変化させる。これにはアストロサイトの細胞内カルシウム濃度が関係している(31,40)。 | ||
===グリオトランスミッター=== | ===グリオトランスミッター=== | ||
アストロサイトは神経細胞と同様に伝達物質を放出し、神経回路を調節している。アストロサイトから放出される伝達物質はグリオトランスミッター(gliotransmitter)と言われている(41)。グリオトランスミッターには、グルタミン酸(42)、ATP(43)、D-セリン(44)などがある。グルタミン酸やD-セリンはシナプスに対して興奮性に、ATPは抑制性に働く(30)。グリオトランスミッターは前シナプスにも後シナプスにも作用する。例えば前シナプスに作用し興奮性を増強すること(45)、後シナプスに対しては、興奮しているシナプスから放出されるグルタミン酸に作用し、シナプス後ニューロンの興奮性を増強することがあげられる(46)。またアストロサイトは、活性化しているシナプスがアストロサイトを介して他のシナプスを抑制する、ヘテロシナプス抑制(heterosynaptic depression)にも関与する(47)。グリオトランスミッターの放出はエキソサイトーシスの他にヘミチャネルやP2X7レセプター、マキシアニオンチャネルからも放出される(40)。グリオトランスミッターの放出には細胞内カルシウム濃度上昇が関与する。 | アストロサイトは神経細胞と同様に伝達物質を放出し、神経回路を調節している。アストロサイトから放出される伝達物質はグリオトランスミッター(gliotransmitter)と言われている(41)。グリオトランスミッターには、グルタミン酸(42)、ATP(43)、D-セリン(44)などがある。グルタミン酸やD-セリンはシナプスに対して興奮性に、ATPは抑制性に働く(30)。グリオトランスミッターは前シナプスにも後シナプスにも作用する。例えば前シナプスに作用し興奮性を増強すること(45)、後シナプスに対しては、興奮しているシナプスから放出されるグルタミン酸に作用し、シナプス後ニューロンの興奮性を増強することがあげられる(46)。またアストロサイトは、活性化しているシナプスがアストロサイトを介して他のシナプスを抑制する、ヘテロシナプス抑制(heterosynaptic depression)にも関与する(47)。グリオトランスミッターの放出はエキソサイトーシスの他にヘミチャネルやP2X7レセプター、マキシアニオンチャネルからも放出される(40)。グリオトランスミッターの放出には細胞内カルシウム濃度上昇が関与する。 |
回編集