「IPS細胞」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
259 バイト追加 、 2012年3月14日 (水)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
37行目: 37行目:
== iPS細胞の細胞特性  ==
== iPS細胞の細胞特性  ==


 一般的な細胞特性として、iPS細胞は、後述の通り、培養下においても様々な細胞系譜へと分化誘導が可能である。また、iPS細胞の形質は基本的に同種のES細胞と相同である。ES細胞の性質を表す一つの定義として、ナイーブ状態(naive state)とプライムド状態(primed state)の区分がある。ナイーブ状態は胚盤胞の内部細胞塊をより強く反映していると考えられ、マウスやラットのES細胞はこちらに分類される。なかでも、非常に高いキメラ形成能および生殖系列への寄与を示す状態は、グラウンドステート(ground state)とも表現される。一方、プライムド状態は胚盤胞より発生が進んだエピブラストに相当すると考えられ、ウサギや霊長類のES細胞が含まれる。
 一般的な細胞特性として、iPS細胞は、後述の通り、培養下においても様々な細胞系譜へと分化誘導が可能である。また、iPS細胞の形質は基本的に同種のES細胞と相同である。多能性幹細胞が有する分化多能性を表す一つの基準として、ナイーブ状態(naive state)とプライムド状態(primed state)の区分がある。ナイーブ状態は胚盤胞の内部細胞塊の起源をより強く反映していると考えられ、マウスやラットのES細胞はこちらに分類される。形態的にはドーム状のコロニーを形成し、。なかでも、非常に高いキメラ形成能および生殖系列への寄与を示す状態は、グラウンドステート(ground state)とも表現される。一方、プライムド状態は胚盤胞より発生が進んだエピブラストの起源に相当すると考えられ、ウサギや霊長類のES細胞が含まれる。


<br>
<br>
93行目: 93行目:
<br>
<br>


= iPS細胞がもたらす課題 =
= iPS細胞がもたらす新たな課題 =


 上述の通り、iPS細胞の誕生はES細胞やSCNT技術が抱える様々な倫理的および技術的課題を回避する新たな方法論を提起した。しかし、全ての課題を克服できるわけではなく、これまでとは別種の課題を生み出してもいる。その一つに、ヒトiPS細胞を用いた生殖細胞の分化誘導が挙げられる。現時点では、培養下で多能性幹細胞から機能的な精子と卵を分化誘導する手法は確立されていない。しかし、将来的にこれが可能となった際には、同一人物、同性間の可能となる。日本においては「ヒトiPS細胞またはヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針(2010年に公布・施行)」によって、培養下で誘導した生殖細胞の受精によるヒト胚の作製を禁止している。しかし、規制状況は国によって大きく異なる。規制や指針以前に、生殖倫理の観点や法的な議論が必要である。また、iPS細胞は血液や毛根といった僅かな細胞ソースからでも誘導が可能であるから、iPS細胞、細胞の厳密な管理。
 上述の通り、iPS細胞の誕生はES細胞やSCNT技術が抱える様々な倫理的および技術的課題を回避する新たな方法論を提起した。しかし、iPS細胞によって全ての課題が克服されたわけではなく、また新たな課題をも生み出している。その一つに、ヒトiPS細胞を用いた生殖細胞への分化誘導が挙げられる。現時点では、培養下で多能性幹細胞から機能的な精子と卵を分化誘導する手法は確立されていない。しかし、将来的にこれが現実化した場合、iPS細胞を介して同一人物や同性の精子と卵の受精といったことも可能となる。日本においては「ヒトiPS細胞またはヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針(2010年に公布・施行)」によって、培養下で誘導した生殖細胞の受精とヒト胚の作製を禁止している。しかし、こうした規制状況は国によって大きく異なる。既成の規制や指針以前に、生殖倫理の観点や法的な議論が必要である。また、iPS細胞は血液や毛根といった僅かな細胞ソースからでも誘導が可能であるから、「ヒト細胞の管理」に対する厳密なシステム整備・意識改革が求められる。


<br>
<br>
67

回編集

案内メニュー