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Masahitoyamagata (トーク | 投稿記録) 細 (→2)シリアル電子顕微鏡) |
Masahitoyamagata (トーク | 投稿記録) 細 (→コネクトームの研究史と階層) |
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==コネクトームの研究史と階層== | ==コネクトームの研究史と階層== | ||
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歴史的には、簡素な解剖用具などを用いて神経線維を観察することから、目と脳など神経組織同士を接続している構造が存在することは想像されていた(例:デカルト、1677年)。19世紀末になると、Santiago Rámon y Cajalが、個々の神経細胞の形態を明確に染め出すことを可能にしたGolgi染色と光学顕微鏡を用いることで、脳が多数の神経細胞とそれらの結合によって成り立っていることを提唱した。以後、神経細胞の間の結合を記述する研究は盛んに行われてきた<ref><pubmed>21782932</pubmed></ref>。Golgi染色やNissl染色などを施した連続切片を観察する時代を経て、20世紀中頃になると脳損傷後の変性神経線維をNauta法などで染色することで、神経回路の存在を確認する時代になった。1970年ごろになると、放射性アミノ酸や、酵素(HRP)などの軸索輸送を利用することで、神経回路の観察が簡便に行われるようになった。更に、1980年代には、脂溶性carbocyanine蛍光色素などの生体結合特性を持った蛍光色素(DiIなど)、植物レクチン(WGA、PHA-Lなど)、ビオチン誘導体(Biocytinなど)、軸索を効率的に移動できるコレラ毒素等の高感度トレーサーが開発され、多くの研究者に汎用されるようになった。そして、1990年代になると、蛍光顕微鏡に加えて、共焦点レーザー顕微鏡が普及し始め、デジタル画像として大規模なデータの保存と解析が扱えるようになってきた。コネクトーム研究の観点から、このような組織学的解剖と染色によって得られた知見をまとめた重要な研究が、1991年、FellemanとDavid van Essenらによるマカクサルの視覚系の結合性マッピングの概念の提出であった<ref> | 歴史的には、簡素な解剖用具などを用いて神経線維を観察することから、目と脳など神経組織同士を接続している構造が存在することは想像されていた(例:デカルト、1677年)。19世紀末になると、Santiago Rámon y Cajalが、個々の神経細胞の形態を明確に染め出すことを可能にしたGolgi染色と光学顕微鏡を用いることで、脳が多数の神経細胞とそれらの結合によって成り立っていることを提唱した。以後、神経細胞の間の結合を記述する研究は盛んに行われてきた<ref><pubmed>21782932</pubmed></ref>。Golgi染色やNissl染色などを施した連続切片を観察する時代を経て、20世紀中頃になると脳損傷後の変性神経線維をNauta法などで染色することで、神経回路の存在を確認する時代になった。1970年ごろになると、放射性アミノ酸や、酵素(HRP)などの軸索輸送を利用することで、神経回路の観察が簡便に行われるようになった。更に、1980年代には、脂溶性carbocyanine蛍光色素などの生体結合特性を持った蛍光色素(DiIなど)、植物レクチン(WGA、PHA-Lなど)、ビオチン誘導体(Biocytinなど)、軸索を効率的に移動できるコレラ毒素等の高感度トレーサーが開発され、多くの研究者に汎用されるようになった。そして、1990年代になると、蛍光顕微鏡に加えて、共焦点レーザー顕微鏡が普及し始め、デジタル画像として大規模なデータの保存と解析が扱えるようになってきた。コネクトーム研究の観点から、このような組織学的解剖と染色によって得られた知見をまとめた重要な研究が、1991年、FellemanとDavid van Essenらによるマカクサルの視覚系の結合性マッピングの概念の提出であった<ref><pubmed>1822724</pubmed></ref><ref><pubmed>1734518</pubmed></ref>。 | ||
[[ファイル:Descartes3.jpg |サムネイル|右|Descartes 「視覚と外部刺激への応答メカニズム」(1677年)目から入力した視覚情報が、つながった線で脳に伝えられているという仮説が表現されている。]] | [[ファイル:Descartes3.jpg |サムネイル|右|Descartes 「視覚と外部刺激への応答メカニズム」(1677年)目から入力した視覚情報が、つながった線で脳に伝えられているという仮説が表現されている。]] | ||
[[ファイル:Cajalhippocampus.jpg|サムネイル|右|Santiago Rámon y Cajalによって描写されたゴルジ染色された海馬(1911年)。脳の組織が神経細胞から成立し、神経回路を作っていることを認識された。]] | [[ファイル:Cajalhippocampus.jpg|サムネイル|右|Santiago Rámon y Cajalによって描写されたゴルジ染色された海馬(1911年)。脳の組織が神経細胞から成立し、神経回路を作っていることを認識された。]] | ||
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一方、Olaf Spornsによるヒト・コネクトームの提唱以来、脳の機能と病態を理解するためにヒトの脳で研究されているのは、メソレベルのコネクトームより更にスケールの大きな'''「マクロスケール Macroscale」'''のコネクトームである。これは小型の動物ではなく、ヒト、サル(マーモセットを含む)など比較的大型の動物での。この情報を収集しているのは、Human Connectome Project<ref>http://www.neuroscienceblueprint.nih.gov/connectome/</ref>である。これには、非侵襲なテンソルMRIなどを中心に用い神経線維の走行など解剖学的な側面に注目しているThe Harvard/MGH-UCLA Project<ref>http://www.humanconnectomeproject.org/</ref>、および脳におけるfMRIによる活動領域の検出やゲノム情報など機能的な側面に重点を置く国際プロジェクトThe WU-Minn Project <ref>http://humanconnectome.org/</ref>がある。いずれも、解像度が上がれば、メソスケールのコネクトームにも近づくが、非侵襲で得られる解像度は、最大でもミリメートル程度であり、侵襲的な方法で得られる解像度とは違いがある。 | 一方、Olaf Spornsによるヒト・コネクトームの提唱以来、脳の機能と病態を理解するためにヒトの脳で研究されているのは、メソレベルのコネクトームより更にスケールの大きな'''「マクロスケール Macroscale」'''のコネクトームである。これは小型の動物ではなく、ヒト、サル(マーモセットを含む)など比較的大型の動物での。この情報を収集しているのは、Human Connectome Project<ref>http://www.neuroscienceblueprint.nih.gov/connectome/</ref>である。これには、非侵襲なテンソルMRIなどを中心に用い神経線維の走行など解剖学的な側面に注目しているThe Harvard/MGH-UCLA Project<ref>http://www.humanconnectomeproject.org/</ref>、および脳におけるfMRIによる活動領域の検出やゲノム情報など機能的な側面に重点を置く国際プロジェクトThe WU-Minn Project <ref>http://humanconnectome.org/</ref>がある。いずれも、解像度が上がれば、メソスケールのコネクトームにも近づくが、非侵襲で得られる解像度は、最大でもミリメートル程度であり、侵襲的な方法で得られる解像度とは違いがある。 | ||
以上、肉眼、光学顕微鏡のレベルである「メソスケール」、電子顕微鏡レベルである「ミクロスケール」、そして非侵襲で観察される脳の構造や活動を観察する「マクロスケール」の3つの階層での断絶が、コネクトームの研究では認識されているのが現状である。しかし、例えば、深度のある組織の観察を可能にする[[多光子励起顕微鏡]]、広い範囲を高速で観察できる[[光シート顕微鏡]]、光学顕微鏡の解像度を著しく向上させる[[ナノスコピー]](PALM, STORMなど)<ref> | 以上、肉眼、光学顕微鏡のレベルである「メソスケール」、電子顕微鏡レベルである「ミクロスケール」、そして非侵襲で観察される脳の構造や活動を観察する「マクロスケール」の3つの階層での断絶が、コネクトームの研究では認識されているのが現状である。しかし、例えば、深度のある組織の観察を可能にする[[多光子励起顕微鏡]]、広い範囲を高速で観察できる[[光シート顕微鏡]]、光学顕微鏡の解像度を著しく向上させる[[ナノスコピー]](PALM, STORMなど)<ref><pubmed>23063602</pubmed></ref>、が改良されれば、これらのスケールの間の断絶を埋めることができる。 | ||
==細胞レベルのコネクトームとコネクトミクス== | ==細胞レベルのコネクトームとコネクトミクス== |