「パーソナリティ障害」の版間の差分
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/N-Hayashi55 林 直樹]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/N-Hayashi55 林 直樹]</font><br> | ||
''帝京大学医学部精神神経科学教室''<br> | ''帝京大学医学部精神神経科学教室''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年6月20日 原稿完成日:2016年月日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
</div> | </div> | ||
{{box|text= | {{box|text= パーソナリティ障害は、一過性の疾患とは異なって長期的に持続し、特定の要素的精神機能に限られず広い範囲の行動特性に及ぶ、社会適応に困難を来すような認知・行動パターンを示す精神障害である。一般人口との間に連続性があり、他の精神障害との診断合併が多く、比較的持続的ではあるが改善可能性は十分あることなどが特徴である。遺伝研究、脳画像研究などによりその生物学的基盤が明らかにされつつある。また、治療でも認知行動療法を中心として多くの治療法が開発されている。今後、パーソナリティ障害についての研究や治療の活動をわが国で定着させる努力が必要である。}} | ||
==はじめに== | ==はじめに== | ||
(<u>編集部コメント:イントロは、初学者がパーソナリティ障害が何か容易に理解できる解説から開始してください。</u>) | |||
パーソナリティ障害の概念は、時代と共に大きく変化しており、現在も変化の途上であるため、現在の概念を、歴史の中に位置づけて理解する必要がある。 | |||
==概念についての歴史的概観== | ==概念についての歴史的概観== | ||
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===DSM-III以前=== | ===DSM-III以前=== | ||
<ref name=ref02>'''林 直樹'''<br>パーソナリティ障害概念の歴史 DSM-III以前<br>In: 神庭重信、池田学、ed. DSM-5を読み解く<br>''東京: 中山書店''; 2014:138-150.</ref> | |||
現代に通じるパーソナリティ障害概念を最初に規定したのはSchneider, K.であった<ref name=ref2>'''Schneider K.'''<br>Die Psychopathischen Persönlichkeiten.<br>''Wien: Franz Deuticke''; 1923<br>'''懸田克躬他訳'''<br>精神病質人格<br>''みすず書房''、 東京、 1954</ref>。Schneider, K.は、異常パーソナリティ(abnorme Persönlichkeit)を平均的なパーソナリティからの偏位として規定し、さらにその一部として、「そのパーソナリティの異常さのゆえに自らが悩む(leiden)か、または、社会が苦しむ(を苦しませる(stören))異常」を精神病質パーソナリティと定義した。 | |||
パーソナリティ障害はその後、[[wj:世界保健機構|世界保健機構]](World Health Organization (WHO))の国際疾病分類第6版(The international classification of diseases, 6th revision (ICD-6))(1948)や、APAのDSM-I (1952)以降、当時広く使われていたパーソナリティ障害のタイプを包括する診断として取り上げられるようになった。 | パーソナリティ障害はその後、[[wj:世界保健機構|世界保健機構]](World Health Organization (WHO))の国際疾病分類第6版(The international classification of diseases, 6th revision (ICD-6))(1948)や、APAのDSM-I (1952)以降、当時広く使われていたパーソナリティ障害のタイプを包括する診断として取り上げられるようになった。 | ||
===DSM-IIIの変革とその後=== | ===DSM-IIIの変革とその後=== | ||
パーソナリティ障害の概念や診断の枠組みが現在の形となる重要な契機となったのは、1980年に刊行された米国精神医学会の診断基準、DSM-III(Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 3rd edition)<ref name=ref1 /> | パーソナリティ障害の概念や診断の枠組みが現在の形となる重要な契機となったのは、1980年に刊行された米国精神医学会の診断基準、DSM-III(Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 3rd edition)<ref name=ref1 />である。そこで行われた改革の中で特に重要なのは、Millon, Tの理論に基づくタイプ分類の採用と、その診断における[[多神論的記述的症候論モデル]](Polythetic descriptive syndromal model)の導入である。 | ||
====Millonの理論に基づくタイプ分類==== | ====Millonの理論に基づくタイプ分類==== | ||
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====ディメンショナルモデルの提唱==== | ====ディメンショナルモデルの提唱==== | ||
元々パーソナリティ心理学では、[[因子分析]]などの統計学的方法を使って信頼性の高いパーソナリティ傾向のディメンショナルな評価が確立されていた。他方、パーソナリティ障害の診断では、DSM-IIIの多神論的記述的症候論モデルが導入されても、まだ信頼性が他の精神障害のレベルに達しないなどの問題点が残されていた。それは、当時[[ICD-10]]<ref name=ref4>'''World Health Organization (WHO)'''<br>The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders. Clinical Descriptions and Diagnostical Guidlines.<br>''Geneva: WHO''; 1992<br>'''融道男、中根允文、小見山実、他''' 監訳 <br>ICD-10 精神および行動の障害:臨床記述と診断ガイドライン、新訂版<br>''医学書院''、2005</ref>やDSM-III-R (1987)で採用されていたカテゴリカルモデルによる診断が原因だと主張されていた。そこで、[[DSM-IV]]<ref name=ref5>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fourth Edition (DSM-IV)<br>''Washington DC: American Psychiatric Association''; 1994<br>'''髙橋三郎、大野裕、染矢俊幸'''監訳<br>DSM-IV精神疾患の診断・統計マニュアル<br>''医学書院、東京''、1996</ref> | 元々パーソナリティ心理学では、[[因子分析]]などの統計学的方法を使って信頼性の高いパーソナリティ傾向のディメンショナルな評価が確立されていた。他方、パーソナリティ障害の診断では、DSM-IIIの多神論的記述的症候論モデルが導入されても、まだ信頼性が他の精神障害のレベルに達しないなどの問題点が残されていた。それは、当時[[ICD-10]] (1992)<ref name=ref4>'''World Health Organization (WHO)'''<br>The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders. Clinical Descriptions and Diagnostical Guidlines.<br>''Geneva: WHO''; 1992<br>'''融道男、中根允文、小見山実、他''' 監訳 <br>ICD-10 精神および行動の障害:臨床記述と診断ガイドライン、新訂版<br>''医学書院''、2005</ref>やDSM-III-R (1987)で採用されていたカテゴリカルモデルによる診断が原因だと主張されていた。そこで、[[DSM-IV]]<ref name=ref5>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fourth Edition (DSM-IV)<br>''Washington DC: American Psychiatric Association''; 1994<br>'''髙橋三郎、大野裕、染矢俊幸'''監訳<br>DSM-IV精神疾患の診断・統計マニュアル<br>''医学書院、東京''、1996</ref>では、これへの対策として、Widigerら<ref><pubmed> 8666708</pubmed></ref>の見解に基づいて、DSMの新版でのディメンショナルモデルの導入が提唱された。 | ||
その後、Costa, P.T. & McCrae, R.R.の主要5因子モデル(Five Factor Model | その後、Costa, P.T. & McCrae, R.R.の主要5因子モデル(Five Factor Model<ref>'''McCrae. R. R., & Costa, P. T.. Jr.'''<br>Personality' in adulthood<br>''New York: Guilford.'', 1990</ref>)から発展した5次元モデルや、Trull T.J.らによる4次元モデル<ref><pubmed>17324033</pubmed></ref>などの診断モデルの検討が進められた。 | ||
== | ==現在のパーソナリティ障害の概念・定義== | ||
===従来の考え方を踏襲する立場=== | ===従来の考え方を踏襲する立場=== | ||
DSM-5<ref name=ref07>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders, fifth edition, DSM-5. <br>''Washington, DC: American Psychiatric Association''; 2013<br>髙橋三郎 大野裕監訳<br>精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5.<br>''医学書院,東京'',2014</ref>におけるパーソナリティ障害は、「社会的状況に対する個人の柔軟性を欠く広範な反応パターンであり、…個々の文化における平均的な個人の感じ方、考え方、他者との関わり方から、極端に相違し偏っており、… しばしばさまざまな程度の主観的苦痛や社会的機能の障害を伴っている」ものと定義されている。これは、従来のICD-10,DSM-IVの定義を踏襲するものである。さらに、ICD-10 の研究用診断基準(DCR) (1993)や[[DSM-5]]の第二部「診断基準とコード」では、全般的診断基準などとして、パーソナリティ障害の基本的特徴の記述が加えられている。その要点は、 | DSM-5<ref name=ref07>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders, fifth edition, DSM-5. <br>''Washington, DC: American Psychiatric Association''; 2013<br>髙橋三郎 大野裕監訳<br>精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5.<br>''医学書院,東京'',2014</ref>におけるパーソナリティ障害は、「社会的状況に対する個人の柔軟性を欠く広範な反応パターンであり、…個々の文化における平均的な個人の感じ方、考え方、他者との関わり方から、極端に相違し偏っており、… しばしばさまざまな程度の主観的苦痛や社会的機能の障害を伴っている」ものと定義されている。これは、従来のICD-10,DSM-IVの定義を踏襲するものである。さらに、ICD-10 の研究用診断基準(DCR) (1993)や[[DSM-5]]の第二部「診断基準とコード」では、全般的診断基準などとして、パーソナリティ障害の基本的特徴の記述が加えられている。その要点は、 | ||
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この代替モデルの全般的診断基準では、従来の診断基準と同様に、その障害が広い機能領域および生活場面に及ぶものであること、長期的に持続するものであることが記述されているが、その記述には新たに「比較的」という形容が加えられている。それは、研究の蓄積によって、その特徴が状況によって、また経過の中で相当に変化することが明らかになってきたからである。ここではまた、タイプの間の診断合併を減らすためにタイプが6種に減じられている。 | この代替モデルの全般的診断基準では、従来の診断基準と同様に、その障害が広い機能領域および生活場面に及ぶものであること、長期的に持続するものであることが記述されているが、その記述には新たに「比較的」という形容が加えられている。それは、研究の蓄積によって、その特徴が状況によって、また経過の中で相当に変化することが明らかになってきたからである。ここではまた、タイプの間の診断合併を減らすためにタイプが6種に減じられている。 | ||
== | ==パーソナリティ障害のタイプ== | ||
ここでは、パーソナリティ障害のタイプの特徴について概説する。 | ここでは、パーソナリティ障害のタイプの特徴について概説する。 | ||
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|} | |} | ||
DSM- | DSM-5第3部の代替診断基準では、表2の5つの病的パーソナリティ特性の強弱によって、特定のパーソナリティ障害タイプが記述されている。それを表4に示す。 | ||
{|class="wikitable" | {|class="wikitable" | ||
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|style="text-align:center" |高 | |style="text-align:center" |高 | ||
|- | |- | ||
| | |対立 | ||
|style="text-align:center" |高 | |style="text-align:center" |高 | ||
| | | | ||
| 256行目: | 252行目: | ||
|} | |} | ||
この表4に見られるように、例えば、反社会性パーソナリティ障害は対立と脱抑制というように、パーソナリティ障害タイプのそれぞれは、5種の病的パーソナリティ特性の高低によって特徴づけられる。 | |||
==疫学== | ==疫学== | ||
パーソナリティ障害は、一般の人々に高い比率で見出される。Coid. J.の総説<ref><pubmed | パーソナリティ障害は、一般の人々に高い比率で見出される。Coid. J.の総説<ref><pubmed 12509301</pubmed></ref>によると、構造化面接を用いた研究において一般人口の10-15%に何らかのパーソナリティ障害が見いだされており、個々のタイプでは、それぞれが一般人口の1-2 %に認められるとされる。プライマリーケアの場や精神科臨床では、有病率が25%程度に上昇する。 | ||
ただし、疫学研究の所見は、研究ごとに大きなばらつきがあることに注意が必要である。その理由の一つは、先に指摘したように、パーソナリティ障害が一般人口との間に連続性があり、比較的の軽症の精神疾患なので、診断域値や評価の変化が大きな有病率の違いを引き起こすことであろう。 | ただし、疫学研究の所見は、研究ごとに大きなばらつきがあることに注意が必要である。その理由の一つは、先に指摘したように、パーソナリティ障害が一般人口との間に連続性があり、比較的の軽症の精神疾患なので、診断域値や評価の変化が大きな有病率の違いを引き起こすことであろう。 | ||
== | ==パーソナリティ障害の病態・病因の理解== | ||
パーソナリティ障害の病態・病因については、近年、急速に研究が進められている。それは、遺伝因などの生物学的要因と、生育環境などの社会文化的要因とに分けることができる。 | パーソナリティ障害の病態・病因については、近年、急速に研究が進められている。それは、遺伝因などの生物学的要因と、生育環境などの社会文化的要因とに分けることができる。 | ||
===生物学的要因=== | ===生物学的要因=== | ||
精神障害の生物学的要因の基底には、遺伝的要因がある。パーソナリティ障害の遺伝的要因は、その特性が同じ家系の人に見出されることが多い、[[一卵性双生児]]で[[二卵性双生児]]よりも一致しやすい、といった臨床遺伝学的研究によって確認されている。Torgersen, S.らの[[双生児研究]]<ref><pubmed> 11086146 </pubmed></ref>では、パーソナリティ障害の遺伝性が0.5~0.6であると算出されている。Silverman, J.M.らの家族研究 | 精神障害の生物学的要因の基底には、遺伝的要因がある。パーソナリティ障害の遺伝的要因は、その特性が同じ家系の人に見出されることが多い、[[一卵性双生児]]で[[二卵性双生児]]よりも一致しやすい、といった臨床遺伝学的研究によって確認されている。Torgersen, S.らの[[双生児研究]]<ref><pubmed> 11086146 </pubmed></ref>では、パーソナリティ障害の遺伝性が0.5~0.6であると算出されている。Silverman, J.M.らの家族研究(1991)では、境界性パーソナリティ障害の感情不安定と衝動性とに家族集積性のあることが認められている<ref name=ref8><pubmed>18638645</pubmed></ref>。 | ||
神経生理学的研究でもパーソナリティ障害と生物学的特性との間の様々な関連が見いだされている<ref name=ref8 />。例えば、反社会性、境界性パーソナリティ障害では、その衝動性が[[セロトニン]]系の機能低下と関連しているという知見の報告がある。中枢神経系の画像研究でも多くの知見がもたらされている。例えば、境界性パーソナリティ障害では、[[帯状束]]のセロトニン系の反応低下といった[[辺縁系]]と[[前頭葉]]の回路の機能低下の報告が多くなされている。また、虐待を受けてきた境界性パーソナリティ障害患者において[[脳下垂体]]、[[海馬]]が小さいという所見も注目されている。 | 神経生理学的研究でもパーソナリティ障害と生物学的特性との間の様々な関連が見いだされている<ref name=ref8 />。例えば、反社会性、境界性パーソナリティ障害では、その衝動性が[[セロトニン]]系の機能低下と関連しているという知見の報告がある。中枢神経系の画像研究でも多くの知見がもたらされている。例えば、境界性パーソナリティ障害では、[[帯状束]]のセロトニン系の反応低下といった[[辺縁系]]と[[前頭葉]]の回路の機能低下の報告が多くなされている。また、虐待を受けてきた境界性パーソナリティ障害患者において[[脳下垂体]]、[[海馬]]が小さいという所見も注目されている。 | ||
===生育環境・社会文化的要因=== | ===生育環境・社会文化的要因=== | ||
パーソナリティ障害の成り立ちにおいては、発達過程や生育環境も重視されなければならない。例えば、境界性、反社会性パーソナリティ障害では、劣悪な養育環境(発達期の虐待、貧困や施設での生育など)が発生要因として関与していると考えられている。1990年代には、境界性パーソナリティ障害の生育史(虐待、親子関係)についての[[後方視的研究]]が行われ、養育環境要因の確認が進められた<ref name=ref10>''' | パーソナリティ障害の成り立ちにおいては、発達過程や生育環境も重視されなければならない。例えば、境界性、反社会性パーソナリティ障害では、劣悪な養育環境(発達期の虐待、貧困や施設での生育など)が発生要因として関与していると考えられている。1990年代には、境界性パーソナリティ障害の生育史(虐待、親子関係)についての[[後方視的研究]]が行われ、養育環境要因の確認が進められた<ref name=ref10>'''林 直樹'''<br>境界性パーソナリティ障害の生活歴・現病歴・家族関係<br>''精神科治療学''. 2010;25(11):1459-1463.</ref>。 | ||
パーソナリティ障害は、特に社会文化的要因の影響を受けやすいと考えられている。例えば、境界性パーソナリティ障害の増加は繰り返し指摘されてきたが、その原因は社会文化的な影響によるものと考えられている。 | パーソナリティ障害は、特に社会文化的要因の影響を受けやすいと考えられている。例えば、境界性パーソナリティ障害の増加は繰り返し指摘されてきたが、その原因は社会文化的な影響によるものと考えられている。 | ||
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次に効果が実証されたのは、英国のBateman, A. & Fonagy, P.が開発した[[メンタライゼーション療法]] (Mentalisation-based treatment (MBT))<ref name=ref12>'''Bateman A、 Fonagy P.''' <br>Psychotherapy for borderline personality disorder: Mentalization-based treatment. <br>''New York: Oxford University Press USA''; 2004. <br>狩野力八郎、白波瀬丈一郎訳 <br>メンタライゼーションと境界パーソナリティ障害―MBTが拓く精神分析的精神療法の新たな展開<br>''岩崎学術出版社、東京''、2008</ref>である。その治療の目標は、メンタライゼーション(自分やまわりの人の行動がその考えや気持ちといった心理的過程から起こることを理解する能力)を高めることである。MBTでは、さまざまな対人関係や出来事の体験から自分自身の心理状態を理解し、自分や他者の行動についての学びを深める訓練が行われる。 | 次に効果が実証されたのは、英国のBateman, A. & Fonagy, P.が開発した[[メンタライゼーション療法]] (Mentalisation-based treatment (MBT))<ref name=ref12>'''Bateman A、 Fonagy P.''' <br>Psychotherapy for borderline personality disorder: Mentalization-based treatment. <br>''New York: Oxford University Press USA''; 2004. <br>狩野力八郎、白波瀬丈一郎訳 <br>メンタライゼーションと境界パーソナリティ障害―MBTが拓く精神分析的精神療法の新たな展開<br>''岩崎学術出版社、東京''、2008</ref>である。その治療の目標は、メンタライゼーション(自分やまわりの人の行動がその考えや気持ちといった心理的過程から起こることを理解する能力)を高めることである。MBTでは、さまざまな対人関係や出来事の体験から自分自身の心理状態を理解し、自分や他者の行動についての学びを深める訓練が行われる。 | ||
その後、2000年代には、Young, J.の[[スキーマ療法]]、Clarkin, J.らの[[転移]] | その後、2000年代には、Young, J.の[[スキーマ療法]]、Clarkin, J.らの[[転移]]に焦点づけられた精神分析的治療などのプログラムの効果研究が実施され、十分な効果があることが実証されている。これらの治療では、自傷行為や自殺未遂といった境界性パーソナリティ障害の症状を大幅に軽減させることが確認されている。 | ||
====地域における対応、治療==== | ====地域における対応、治療==== | ||