「電気けいれん療法」の版間の差分

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 ECTの作用機序はまだ未解明である。
 ECTの作用機序はまだ未解明である。


 ECTに関する脳画像研究では、単一光子放射断層撮影法(single photon emission tomography)、ポジトロン断層法(positron emission tomography)、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging)、磁気共鳴分光法(magnetic resonance spectroscopy)、定量脳波(quantitative electroencephalography)などによる多くの研究が行われている。 
 ECTに関する[[脳画像研究]]では、[[単一光子放射断層撮影法]]([[single photon emission tomography]])、[[ポジトロン断層法]]([[positron emission tomography]])、[[磁気共鳴画像]]([[magnetic resonance imaging]])、[[磁気共鳴分光法]]([[magnetic resonance spectroscopy]])、[[定量脳波]]([[quantitative electroencephalography]])などによる多くの研究が行われている。 


 脳画像研究の知見からは、従来通電によるけいれん発作時は脳血流や脳代謝が増加し、発作後の数日間は逆にそれらが抑制されるなど、ECTによるけいれん発作の前後に脳血流や脳代謝の変化が起きることが知られていた。
 脳画像研究の知見からは、従来通電によるけいれん発作時は脳血流や脳代謝が増加し、発作後の数日間は逆にそれらが抑制されるなど、ECTによるけいれん発作の前後に脳血流や脳代謝の変化が起きることが知られていた。


 ECTは、臨床的に治療回数を重ねるごとに、多くの患者にけいれん持続時間の減少やけいれん閾値の上昇(必要刺激用量の増大)を認めるようになる。これらの事象からECTは抗けいれん作用による抑制性の特徴を持つと考えられている。近年の磁気共鳴分光法を用いた研究ではECT後にgamma-aminobutyric acid(GABA)の増加が示されており<ref name=ref13><pubmed>16137698</pubmed></ref>、ECTの持つ抑制性の特徴の背景として、脳内GABA輸送の増加と受容体刺激の増加が関係している可能性が指摘されている。
 ECTは、臨床的に治療回数を重ねるごとに、多くの患者にけいれん持続時間の減少やけいれん[[閾値]]の上昇(必要刺激用量の増大)を認めるようになる。これらの事象からECTは抗けいれん作用による抑制性の特徴を持つと考えられている。近年の磁気共鳴分光法を用いた研究ではECT後に[[&gamma;-aminobutyric acid]]([[GABA]])の増加が示されており<ref name=ref13><pubmed>16137698</pubmed></ref>、ECTの持つ抑制性の特徴の背景として、脳内GABA輸送の増加と[[受容体]]刺激の増加が関係している可能性が指摘されている。


 また、従来は抗うつ効果との関連から、ECTが神経伝達物質やその受容体へ与える影響や細胞内情報伝達系に与える影響が注目され、モノアミン、コルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、バソプレッシン、dehycroepiandrosterone sulfate、tumor necrosis factor α等の生体内物質のECTによる変化が注目されてきた。
 また、従来は抗うつ効果との関連から、ECTが神経伝達物質やその受容体へ与える影響や[[細胞内情報伝達系]]に与える影響が注目され、[[モノアミン]]、[[コルチゾール]]、[[副腎皮質刺激ホルモン]]、[[コルチコトロピン放出因子]]、[[甲状腺刺激ホルモン]]、[[プロラクチン]]、[[オキシトシン]]、[[バソプレッシン]]、デヒドロエピアンドロステロン硫酸エステル、[[腫瘍壊死因子α]] ([[tumor necrosis factor α]], [[TNFα]])等の生体内物質のECTによる変化が注目されてきた。


 近年では、ECT後の血液中brain-derived neurotrophic factor(BDNF)の増加が報告され<ref name=ref14><pubmed> 17474805</pubmed></ref>、ECTが神経細胞の可塑性、再生、維持に関わる神経栄養因子を強化し、海馬扁桃体を主体とする内側側頭葉を中心とした神経栄養効果を持つ可能性が指摘されるようになった<ref name=ref15><pubmed>18580563</pubmed></ref>。うつ病患者ではメタ解析でもECT治療後のBDNFの増加が確認されており<ref name=ref16><pubmed>27552533</pubmed></ref>、BDNF増加とHAM-D総得点減少が相関している報告も存在する。また霊長類を対象にした動物実験では、ECTにより海馬での神経新生が促進されたことが報告されている<ref name=ref17><pubmed>17475797</pubmed></ref>。
 近年では、ECT後の血液中[[脳由来神経栄養因子]] ([[brain-derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])の増加が報告され<ref name=ref14><pubmed> 17474805</pubmed></ref>、ECTが神経細胞の[[可塑性]]、再生、維持に関わる[[神経栄養因子]]を強化し、[[海馬]]、[[扁桃体]]を主体とする内側[[側頭葉]]を中心とした神経栄養効果を持つ可能性が指摘されるようになった<ref name=ref15><pubmed>18580563</pubmed></ref>。うつ病患者では[[メタ解析]]でもECT治療後のBDNFの増加が確認されており<ref name=ref16><pubmed>27552533</pubmed></ref>、BDNF増加と[[HAM-D]]総得点減少が相関している報告も存在する。また[[霊長類]]を対象にした[[動物実験]]では、ECTにより海馬での[[神経新生]]が促進されたことが報告されている<ref name=ref17><pubmed>17475797</pubmed></ref>。


 これらを踏まえた仮説としては、ECTが脳の異常な機能的結合を一度リセットして、病態に関連する脳領域で新しい健康的な機能的結合の生成を促進することで治療の有効性を発揮している<ref name=ref18><pubmed>24810774</pubmed></ref>という仮説が提示されており、その機序としてはECTの前頭葉を主体とする抗けいれん作用による抑制性の影響<ref name=ref19><pubmed>9773356
 これらを踏まえた仮説としては、ECTが脳の異常な機能的結合を一度リセットして、病態に関連する脳領域で新しい健康的な機能的結合の生成を促進することで治療の有効性を発揮している<ref name=ref18><pubmed>24810774</pubmed></ref>という仮説が提示されており、その機序としてはECTの前頭葉を主体とする抗けいれん作用による抑制性の影響<ref name=ref19><pubmed>9773356

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