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<font size="+1">笹田 周作</font><br> | <font size="+1">笹田 周作</font><br> | ||
''自然科学研究機構生理学研究所 発達生理学研究系''<br> | ''自然科学研究機構生理学研究所 発達生理学研究系''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年12月27日 原稿完成日:2018年1月2日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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この動物モデルでは、左手指にて把持運動を行う運動課題において、右一次運動野に[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]のアゴニストである[[ムシモル]]を微量注入 (0.5-3μl) し、一時的に機能失調を生じさせることで、注入側と同側の右手指の鏡像運動を出現させることに成功した。これに加えて左の一次運動野へムシモルを注入したところ,この右手の鏡像運動が消失した。この動物モデルにおいて一次運動野の機能失調後に出現する鏡像運動の生成には鏡像運動肢と反対側一次運動野の関与が示された。つまりこの実験状況下では上述した仮説の3又は4を強く支持する結果である。この研究の実験手法はヒトの脳梗塞と障害部位や障害からの時間経過が異なるという問題点を持つが、脳損傷後の急性期に生じる鏡像運動の神経メカニズムを限局する上で重要な報告であった。このような動物モデルを含めた多方面からの研究により、種々の神経疾患における鏡像運動の神経メカニズムの解明が期待されている。 | この動物モデルでは、左手指にて把持運動を行う運動課題において、右一次運動野に[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]のアゴニストである[[ムシモル]]を微量注入 (0.5-3μl) し、一時的に機能失調を生じさせることで、注入側と同側の右手指の鏡像運動を出現させることに成功した。これに加えて左の一次運動野へムシモルを注入したところ,この右手の鏡像運動が消失した。この動物モデルにおいて一次運動野の機能失調後に出現する鏡像運動の生成には鏡像運動肢と反対側一次運動野の関与が示された。つまりこの実験状況下では上述した仮説の3又は4を強く支持する結果である。この研究の実験手法はヒトの脳梗塞と障害部位や障害からの時間経過が異なるという問題点を持つが、脳損傷後の急性期に生じる鏡像運動の神経メカニズムを限局する上で重要な報告であった。このような動物モデルを含めた多方面からの研究により、種々の神経疾患における鏡像運動の神経メカニズムの解明が期待されている。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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