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{{box|text= 発生生物学における位置情報とは、胚発生期にある前駆細胞が組織内で自身の位置を認識するために細胞外部からもたらされる情報のことをいう。ここでいう「情報」は多くの場合、細胞外因子(分泌因子、細胞接着因子)の種類と濃度を意味する。細胞はこの情報によって、自らの器官内における相対的な位置を知り、どのような役割(機能)を担うのかを判断して分化する。ここでは、細胞外からもたらされるシグナル分子の種類や濃度勾配に対して細胞がどう反応するのかについて、発生期の脊髄神経における背腹軸パターン形成を中心に概説する。}}
{{box|text= 発生生物学における位置情報とは、胚発生期にある前駆細胞が組織内で自身の位置を認識するために細胞外部からもたらされる情報のことをいう。ここでいう「情報」は多くの場合、細胞外因子(分泌因子、細胞接着因子)の種類と濃度を意味する。細胞はこの情報によって、自らの器官内における相対的な位置を知り、どのような役割(機能)を担うのかを判断して分化する。ここでは、細胞外からもたらされるシグナル分子の種類や濃度勾配に対して細胞がどう反応するのかについて、発生期の脊髄神経における背腹軸パターン形成を中心に概説する。}}
== 位置情報とは ==
 胚発生期の器官の形態形成(morphogenesis)においては、前駆細胞が器官内で様々な細胞へと分化し、それらが一定のルールに従って配置される。この細胞の配置はどの個体でも同じであり、このことを「パターン形成(pattern formation)」という1,2。器官内の種々の細胞が正確に配置されることは、器官が機能体として固有の機能を発揮するために重要である。器官が正確にパターン化されるためには、各前駆細胞が器官内における自らの相対的位置を認識する必要があるが、それを与えるのが位置情報である。
 器官発生の初期には、組織は未分化細胞の塊だが、やがて細胞塊の一部にシグナルの源である細胞群(シグナリングセンター(signalling centre))が出現する3。この領域からは細胞外因子が分泌され、この分泌因子は多くの場合器官内で濃度勾配を形成する。器官内の各細胞(前駆細胞)はこの濃度によって自分が何の細胞に分化するのか(つまりどのような機能を分担するのか)の情報を獲得するのである。

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