「間脳の発生」の版間の差分

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8.2視床ー終脳軸索投射
8.2視床ー終脳軸索投射
間脳からは終脳に向けて数多くの神経が伸びていく.特に羊膜類では視床に嗅覚以外の全ての感覚が集められ、そこから終脳に多くの軸索が入力する。これらの線維は一般的に「視床-終脳路」と呼ばれている.これらの神経がどのような仕組みで終脳に入力するのかについてはこれまでに主にマウスを用いて多くの研究がなされている。視床-終脳路の道筋には軸索をガイドするタンパク質群があり,視床の神経核から伸びる軸索は、それらのシグナルを受け取り応答することによって迷うことなく正確に目的地にたどり着く。例えば,視床下部に発現する''Nkx2.1'' は,神経ガイド分子の一種''Slit''の発現を調節しており,この分子の反発作用によって視床から終脳に伸びていく軸索は終脳の方向に向きを変える<ref><pubmed> 11830575 </pubmed></ref>。その他にも,視床の神経核では、神経ガイド因子の''Eph''(''EphA3'', ''EphA4'', ''EphA7'')が勾配をもって発現している。そのため、そこから伸びる軸索にはEphを多く発現しているものから少なく発現しているものがあり、それらの軸索は終脳側にあるエフリンA5の勾配に応答し、反発性相互作用により、Ephの濃度に応じて振り分けられることで特異的な投射が形成される<ref><pubmed> 15219737 </pubmed></ref>。また、誘因性のガイド因子であるNetrin1が視床の軸索を終脳へ誘引していくことにより多くの軸索が終脳へ入力できるようになるという報告がある<ref><pubmed> 18479186 </pubmed></ref>。ただし、Netrin1は視床前部のニューロンには誘因性に作用するが、視床後部のニューロンに対しては反発性に作用する。
間脳からは終脳に向けて数多くの神経が伸びていく.特に羊膜類では視床に嗅覚以外の全ての感覚が集められ、そこから終脳に多くの軸索が入力する。これらの線維は一般的に「視床-終脳路」と呼ばれている.これらの神経がどのような仕組みで終脳に入力するのかについてはこれまでに主にマウスを用いて多くの研究がなされている。視床-終脳路の道筋には軸索をガイドするタンパク質群があり,視床の神経核から伸びる軸索は、それらのシグナルを受け取り応答することによって迷うことなく正確に目的地にたどり着く。例えば,視床下部に発現する''Nkx2.1'' は,神経ガイド分子の一種''Slit''の発現を調節しており,この分子の反発作用によって視床から終脳に伸びていく軸索は終脳の方向に向きを変える<ref><pubmed> 11830575 </pubmed></ref>。その他にも,視床の神経核では、神経ガイド因子の''Eph''(''EphA3'', ''EphA4'', ''EphA7'')が勾配をもって発現している。そのため、そこから伸びる軸索にはEphを多く発現しているものから少なく発現しているものがあり、それらの軸索は終脳側にあるエフリンA5の勾配に応答し、反発性相互作用により、Ephの濃度に応じて振り分けられることで特異的な投射が形成される<ref><pubmed> 15219737 </pubmed></ref>。また、誘因性のガイド因子であるNetrin1が視床の軸索を終脳へ誘引していくことにより多くの軸索が終脳へ入力できるようになるという報告がある<ref><pubmed> 18479186 </pubmed></ref>。ただし、Netrin1は視床前部のニューロンには誘因性に作用するが、視床後部のニューロンに対しては反発性に作用する。
 視床―終脳路は哺乳類では内包を形成し終脳半球の内側を通るが、これは羊膜類では例外的であり、他の羊膜類では線条体の外側を抜けるような経路をとる。この進路決定には、哺乳類の終脳で発現する''Slit2''が関与していることが知られている<ref><pubmed> 21435555 </pubmed></ref>。哺乳類のマウスでは軸索を誘引する働きを有する細胞群が外側基底核原基(LGE)から内側基底核原基(MGE)へ向けて移動するが、この際に''Slit2''が終脳の腹側から背側に拡大して発現することにより、その細胞群はSlit2の反発作用を受け、脳室から離れた領域に移動する。これにより、視床から伸長する軸索はこれら細胞群の誘引作用を受けられるようになり、神経線維は終脳の内側を通るようになる。一方、主竜類のように''Slit2''が終脳腹側に限局して発現をしていた場合、LGEからMGEへ移動する細胞群はSlit2による反発作用を受けず、細胞群は脳室に接した領域に移動する。すると、視床から伸長する軸索はこれら細胞群の誘引作用を受けないため、神経線維は終脳の外側を通るようになる。
 視床―終脳路は哺乳類では内包を形成し終脳半球の内側部を通るが、これは羊膜類では例外的であり、他の羊膜類では線条体の外側を抜けるような経路をとる。この進路決定には、哺乳類の終脳で発現する''Slit2''が関与していることが知られている<ref><pubmed> 21435555 </pubmed></ref>。哺乳類のマウスでは、軸索を誘引する働きを有する細胞群("corridor" guidepost neurons)が外側基底核原基(LGE)から内側基底核原基(MGE)の方向へ向けて移動するが、この際に''Slit2''が終脳の腹側から背側に拡大して発現することにより、その細胞群はSlit2の反発作用を受け、視床軸索と近接する領域に移動する。これにより、視床から伸長する軸索はこれら細胞群の誘引作用を受けられるようになり、終脳の内側を通るようになる。一方、主竜類のように''Slit2''が終脳腹側に限局して発現をしていた場合、guidepost neuronsはSlit2による反発作用を受けず、視床軸索とは離れた位置に移動する。その結果、視床軸索はこれら細胞群の誘引作用を受けず、終脳の外側を通る。
8.3 体性感覚地図
8.3 体性感覚地図
脊椎動物の脳にある感覚性神経回路には、末梢にある受容器の配置がそのままニューロン配置に変換されることで感覚地図(トポグラフィックマップ)がつくられる。これは視覚系、聴覚系、体性感覚系、味覚系など様々な感覚系で見られる。間脳の神経核にもそのような感覚地図が発生するが、それらの中ではマウスの体性感覚地図に関する研究が進んでいる。
脊椎動物の脳にある感覚性神経回路には、末梢にある受容器の配置がそのままニューロン配置に変換されることで感覚地図(トポグラフィックマップ)がつくられる。これは視覚系、聴覚系、体性感覚系、味覚系など様々な感覚系で見られる。間脳の神経核にもそのような感覚地図が発生するが、それらの中ではマウスの体性感覚地図に関する研究が進んでいる。
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