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担当編集委員:[https://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[https://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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英語名:genetic | |||
英語名:genetic polymorphism 独:genetischer Polymorphismus 仏:polymorphisme génétique<br>同義語:遺伝的多型、DNA多型 | |||
==遺伝子多型とは== | ==遺伝子多型とは== | ||
ある集団において、一つの[[ゲノム]]上の場所または領域([[座位]]、locus)に、二つかそれ以上の、頻度の高い異なる[[アレル]](allele)が存在する状態を言う。 | ある集団において、一つの[[ゲノム]]上の場所または領域([[座位]]、locus)に、二つかそれ以上の、頻度の高い異なる[[アレル]](allele)が存在する状態を言う。<ref group="注"> ゲノム上の場所や領域を座位と呼ぶ。遺伝的多型あるいは遺伝的バリアントは、個人間である座位のゲノム情報に違いがあるような状態を指す。慣用的には、遺伝的多型を示す座位を指して遺伝的多型と呼ぶこともある。<br> ある一本の染色体([[ハプロイド染色体]])上のある遺伝的バリアントにおけるDNA配列情報のことをアレルと呼ぶ。ヒトのように二倍体生物の常染色体では、染色体が二本あるので、ある遺伝的多型に関して二つのアレルの組み合わせを持っている。このような同じ遺伝的多型上のアレルの組み合わせを[[遺伝型]] ([[genotype]])と呼ぶ。<br> 座位、遺伝的多型、アレルは、かつては「遺伝子座」「遺伝子多型」「対立遺伝子」とも呼ばれていた。しかしヒトゲノム配列を直接観察できるようになった現在では非遺伝子部位も含めた概念として捉える必要があるため、対象を遺伝子に限るように見えてしまうこれらの用語を用いるべきではない。<br> 遺伝的[[変異]]という呼称には議論がある。欧米においては[[mutant]]という表現を避けてvariantという用語を使用するようになっているが、これは個人が「mutantを持つ」ということにより差別を惹起することを防ぐためである。「変異」という言葉にはmutantと同様の含意があると考えられるから、避けるべきであると思われる。そこで本稿では、variantの訳語としては「バリアント」に統一した。<br> これらの用語は、日本人類遺伝学会2009年用語改訂に基づいている。</ref> | ||
[[ヒト]]ゲノムが解読されていない時代には、遺伝的多型を用いて病気の原因遺伝子の探索が行われていた。遺伝的多型に「頻度の高い」という条件があるのは、このための要請である。本稿では、本辞典の性質にも鑑み、主にこの観点から遺伝的多型について述べる。ほかにも遺伝的多型は、[[wj:集団遺伝学|集団遺伝学]]や[[wj:法医学|法医学]]においても用いられる。 | [[ヒト]]ゲノムが解読されていない時代には、遺伝的多型を用いて病気の原因遺伝子の探索が行われていた。遺伝的多型に「頻度の高い」という条件があるのは、このための要請である。本稿では、本辞典の性質にも鑑み、主にこの観点から遺伝的多型について述べる。ほかにも遺伝的多型は、[[wj:集団遺伝学|集団遺伝学]]や[[wj:法医学|法医学]]においても用いられる。 | ||
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集団における頻度によって遺伝的バリアントを分類する別の方法としては、頻度5%以上を[[コモンバリアント]] common variant、0.5または1-5%を[[頻度の低いバリアント]] low frequency variant、0.5%または1%未満のものを[[レアバリアント]] rare variantと呼ぶ分類がある。これは、適応進化にもとづく選択圧によって頻度分類ごとに疾患リスク効果が異なる(レアバリアントのリスク効果は全体的に高い)ことと、遺伝的関連解析においては頻度とリスク効果によって検出力が異なることに着目した分類であり、現代ではこちらの分類が主流となっているだろう。 | 集団における頻度によって遺伝的バリアントを分類する別の方法としては、頻度5%以上を[[コモンバリアント]] common variant、0.5または1-5%を[[頻度の低いバリアント]] low frequency variant、0.5%または1%未満のものを[[レアバリアント]] rare variantと呼ぶ分類がある。これは、適応進化にもとづく選択圧によって頻度分類ごとに疾患リスク効果が異なる(レアバリアントのリスク効果は全体的に高い)ことと、遺伝的関連解析においては頻度とリスク効果によって検出力が異なることに着目した分類であり、現代ではこちらの分類が主流となっているだろう。 | ||
== | == 注釈 == | ||
{{reflist|group="注"}} | |||
==関連項目== | |||
* [[ゲノムワイド関連解析]] | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references/> | <references/> |