「攻撃性」の版間の差分

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=== 視床下部電気刺激による行動賦活・抑制 ===
=== 視床下部電気刺激による行動賦活・抑制 ===
 ヘスは、ネコの視床下部の電気刺激Electric Brain Stimulationによって攻撃と逃走を誘発できることを発見した(Hess, 1928)<ref> '''Hess, W.R.'''<br>Stammganglien-Reizversuche.<br>''Berichte der gesamten Physiologie'' 42, 554-555.; 1928</ref>。当時、視床下部は自律神経の中枢と考えられていたが、上述のバードの実験とあわせ、生得的な行動の中枢も視床下部にあると考えられるようになった。
 ヘスは、ネコの視床下部の電気刺激Electric Brain Stimulationによって攻撃と逃走を誘発できることを発見した(Hess, 1928)<ref> '''Hess, W.R.'''<br>Stammganglien-Reizversuche.<br>''Berichte der gesamten Physiologie'' 42, 554-555.; 1928</ref>。当時、視床下部は自律神経の中枢と考えられていたが、上述のバードの実験とあわせ、生得的な行動の中枢も視床下部にあると考えられるようになった。
 ヘス自身は視床下部内で「攻撃」特異的な解剖学的領域の存在には否定的であった。しかし九州大学の安河内五郎(Yasukochi, 1960)<ref><pubmed> 13787257</pubmed></ref>は反応の強い刺激脳部位、すなわち低い閾値で明確な反応が出た場所だけをマップすると、特定の行動に対応する部位が存在すること、特に激怒+攻撃は視床下部腹内側核Ventromedial hypothalamic nucleus (VMH)への刺激で起こりやすいことを示した。ネコ、ラット、有袋類オポッサム、霊長類マーモセットにおいても、VMHに重なる視床下部腹内側の刺激で防御的威嚇行動が、その背外側で逃走行動が生じることから、これらの視床下部における行動誘発マップは哺乳類内でよく保存されていると考えられる(Lipp and Hunsperger, 1978)<ref><pubmed>100172</pubmed></ref>。
 ヘス自身は視床下部内で「攻撃」特異的な解剖学的領域の存在には否定的であった。しかし九州大学の安河内五郎(Yasukochi, 1960)<ref><pubmed> 13787257</pubmed></ref>は反応の強い刺激脳部位、すなわち低い閾値で明確な反応が出た場所だけをマップすると、特定の行動に対応する部位が存在すること、特に激怒+攻撃は[[視床下部腹内側核]]Ventromedial hypothalamic nucleus (VMH)への刺激で起こりやすいことを示した。ネコ、ラット、有袋類[[wj:オポッサム|オポッサム]]、霊長類マーモセットにおいても、VMHに重なる視床下部腹内側の刺激で防御的威嚇行動が、その背外側で逃走行動が生じることから、これらの視床下部における行動誘発マップは哺乳類内でよく保存されていると考えられる(Lipp and Hunsperger, 1978)<ref><pubmed>100172</pubmed></ref>。
 クルックらはラットを用い、攻撃やそのほかの行動を誘発する視床下部内領域をより詳細にマッピングし、「攻撃」誘発領域をHypothalamic attack area, HAAと命名した。
 クルックらはラットを用い、攻撃やそのほかの行動を誘発する視床下部内領域をより詳細にマッピングし、「攻撃」誘発領域をHypothalamic attack area, HAAと命名した。


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