「オリゴデンドロサイト」の版間の差分

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http://pd21.cihbs.niigata-u.ac.jp/show.php/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%81%A8%E7%B4%B0%E8%83%9E/Oligodendrocyte</ref><ref name=ref8><pubmed>8300897</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>8441812</pubmed></ref>。したがって、当初考えられていたより多い突起を伸ばしていることが示された。中には突起を伸ばさずSchwann細胞のように細胞体が軸索に取り巻いて髄鞘を形成するものがあることも明らかにされた<ref name=ref9><pubmed>8441812</pubmed></ref>。
http://pd21.cihbs.niigata-u.ac.jp/show.php/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%81%A8%E7%B4%B0%E8%83%9E/Oligodendrocyte</ref><ref name=ref8><pubmed>8300897</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>8441812</pubmed></ref>。したがって、当初考えられていたより多い突起を伸ばしていることが示された。中には突起を伸ばさずSchwann細胞のように細胞体が軸索に取り巻いて髄鞘を形成するものがあることも明らかにされた<ref name=ref9><pubmed>8441812</pubmed></ref>。
 
 
=== マーカー分子 ===  
== マーカー分子 ==  


 オリゴデンドロサイトはミエリン形成をおこなうことから、ミエリンタンパクやミエリンに含まれる脂質を特異的に発現する。したがって、そのような分子がマーカーとなりうる。
 オリゴデンドロサイトはミエリン形成をおこなうことから、ミエリンタンパクやミエリンに含まれる脂質を特異的に発現する。したがって、そのような分子がマーカーとなりうる。
 
 
==== ガラクトセレブロシドとスルファチド ====
=== ガラクトセレブロシドとスルファチド ===


 ミエリンは脂質に富み、乾燥重量の70 – 85%前後が脂質であるといわれている。ガラクトセレブロシド(GalC)はその代表で、セラミドの1-ヒドロキシ残基にガラクトースが結合したものである。セラミドガラクトシルトランスフェラーゼが触媒する。ミエリン形成前のいわゆるPro-oligodendrocyteの段階から発現している。GalCの発現は、単クローン抗体O1により認識される。また、GalCのガラクトースの4位のヒドロキシ基に硫酸基が結合したものが、スルファチドでこれもミエリン膜に豊富に存在する。スルファチド(Sulf)は単クローン抗体O4により認識される。Sulfが発現する前のオリゴデンドロサイト前駆細胞も、このO4抗体により認識されるが、この抗原はSulfではなくいまだにその実態は明らかになっていない。GalCの合成にかかわる酵素としてセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(CGT, EC 2.4.1.45)が、Sulfの合成にかかわるものとしてセレブロシドスルフォトランスフェラーゼ(CST, EC 2.8.2.11)がある<ref name=ref10>ミエリンの脂質に関するサイト<br>http://www.glycoforum.gr.jp/science/glycogenes/10/10J.html</ref>。
 ミエリンは脂質に富み、乾燥重量の70 – 85%前後が脂質であるといわれている。ガラクトセレブロシド(GalC)はその代表で、セラミドの1-ヒドロキシ残基にガラクトースが結合したものである。セラミドガラクトシルトランスフェラーゼが触媒する。ミエリン形成前のいわゆるPro-oligodendrocyteの段階から発現している。GalCの発現は、単クローン抗体O1により認識される。また、GalCのガラクトースの4位のヒドロキシ基に硫酸基が結合したものが、スルファチドでこれもミエリン膜に豊富に存在する。スルファチド(Sulf)は単クローン抗体O4により認識される。Sulfが発現する前のオリゴデンドロサイト前駆細胞も、このO4抗体により認識されるが、この抗原はSulfではなくいまだにその実態は明らかになっていない。GalCの合成にかかわる酵素としてセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(CGT, EC 2.4.1.45)が、Sulfの合成にかかわるものとしてセレブロシドスルフォトランスフェラーゼ(CST, EC 2.8.2.11)がある<ref name=ref10>ミエリンの脂質に関するサイト<br>http://www.glycoforum.gr.jp/science/glycogenes/10/10J.html</ref>。


==== ミエリンタンパク ====
=== ミエリンタンパク ===


 主なミエリンタンパクとしてミエリン・プロテオリピッドタンパク(myelin proteolipid protein; PLP)とミエリン塩基性タンパク(myelin basic protein; MBP)がある。PLPは、中枢神経系のミエリンに特異的に発現する(plpのmRNAは末梢神経系でも発現が認められる)。4回膜貫通型タンパクであり細胞外ドメインでミエリン膜どうしの相互作用に関わるとされている。MBPは、ミエリン膜の裏打ちタンパクであり多くのスプライスバリアントが知られている。plpまたはmbpの遺伝子が変異した自然発症ミュータントマウスでは、ミエリンの形成がみられない<ref name=ref11><pubmed>1709560</pubmed></ref>。このほか、ミエリンに豊富に含まれるタンパクとしてはcyclicnucleotide phosphodiesterase (CNPase)、myelin-associated oligodendrocyte basic protein (MOPB)、myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG)、myelin-associated glycoprotein (MAG)などがある。成熟脳において、これらのミエリンタンパクや脂質はミエリン膜に局在することが多く、免疫組織化学染色法では細胞体の検出は難しい。 細胞体の検出には、これらミエリンタンパクや上記の脂質合成にかかわる酵素(CGTやCST)のmRNAを検出するin situ hybridizationがしばしば用いられている。
 主なミエリンタンパクとしてミエリン・プロテオリピッドタンパク(myelin proteolipid protein; PLP)とミエリン塩基性タンパク(myelin basic protein; MBP)がある。PLPは、中枢神経系のミエリンに特異的に発現する(plpのmRNAは末梢神経系でも発現が認められる)。4回膜貫通型タンパクであり細胞外ドメインでミエリン膜どうしの相互作用に関わるとされている。MBPは、ミエリン膜の裏打ちタンパクであり多くのスプライスバリアントが知られている。plpまたはmbpの遺伝子が変異した自然発症ミュータントマウスでは、ミエリンの形成がみられない<ref name=ref11><pubmed>1709560</pubmed></ref>。このほか、ミエリンに豊富に含まれるタンパクとしてはcyclicnucleotide phosphodiesterase (CNPase)、myelin-associated oligodendrocyte basic protein (MOPB)、myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG)、myelin-associated glycoprotein (MAG)などがある。成熟脳において、これらのミエリンタンパクや脂質はミエリン膜に局在することが多く、免疫組織化学染色法では細胞体の検出は難しい。 細胞体の検出には、これらミエリンタンパクや上記の脂質合成にかかわる酵素(CGTやCST)のmRNAを検出するin situ hybridizationがしばしば用いられている。
 
 
==== その他のマーカー ====
=== その他のマーカー ===


 オリゴデンドロサイトを(免疫)組織化学的に検出するマーカーとしては、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GSTπ)、APC/CC1抗体、鉄イオンなどがある。このうち、鉄イオンはミエリンやそれを構成する脂質の合成に必須であることが明らかにされている<ref name=ref12><pubmed>18837051</pubmed></ref>。
 オリゴデンドロサイトを(免疫)組織化学的に検出するマーカーとしては、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GSTπ)、APC/CC1抗体、鉄イオンなどがある。このうち、鉄イオンはミエリンやそれを構成する脂質の合成に必須であることが明らかにされている<ref name=ref12><pubmed>18837051</pubmed></ref>。


=== 機能 ===
== 機能 ==


 オリゴデンドロサイトの機能は、軸索の伝導速度を高めることにある。オリゴデンドロサイトはその特殊化した細胞膜を軸索に巻き付けてミエリンを形成し、一種の絶縁体を形成する。そして、その継ぎ目であるランビエの絞輪でのみ活動電位を生じさせることにより跳躍伝導を引き起こす。この20年の間に、オリゴデンドロサイトが絶縁体を形成するのみならず、ランビエの絞輪にイオンチャネルのクラスター化を誘導する働きがあることが明らかになった。チャネルの局在の点からもランビエの絞輪以外で活動電位が生じにくいことがわかる<ref name=ref1><pubmed>20846325</pubmed></ref><ref name=ref2>'''工藤佳久'''<br>脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092<br>技術評論社, 2011</ref>。
 オリゴデンドロサイトの機能は、軸索の伝導速度を高めることにある。オリゴデンドロサイトはその特殊化した細胞膜を軸索に巻き付けてミエリンを形成し、一種の絶縁体を形成する。そして、その継ぎ目であるランビエの絞輪でのみ活動電位を生じさせることにより跳躍伝導を引き起こす。この20年の間に、オリゴデンドロサイトが絶縁体を形成するのみならず、ランビエの絞輪にイオンチャネルのクラスター化を誘導する働きがあることが明らかになった。チャネルの局在の点からもランビエの絞輪以外で活動電位が生じにくいことがわかる<ref name=ref1><pubmed>20846325</pubmed></ref><ref name=ref2>'''工藤佳久'''<br>脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092<br>技術評論社, 2011</ref>。

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