「ケタミン」の版間の差分

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==適用==
==適用==
===麻酔薬===
===麻酔薬===
 麻酔薬として[[wj:静脈投与|静脈投与]]量と[[wj:筋肉注射|筋肉注射]]用がある<ref name=公益社団法人日本麻酔科学会2015></ref>。静注としては、[[アトロピン]]の前投与後、初回体重あたり1-2 mg/kgを緩徐(1分間以上)に静注し、必要に応じて初回量と同じ量又は半量を追加する。例えば、成人に静注した場合、0.5 ~1分で手術可能な麻酔状態が得られ、麻酔作用は5~10分前後持続する。静注用ケタミンの重大な副作用は、[[wj:急性心不全|急性心不全]](頻度不明)、呼吸抑制(2.5%)、無呼吸(頻度不明)、舌根沈下(頻度不明)、[[痙攣]](0.4%)、覚醒時反応(悪夢、浮遊感覚などの解離症状や幻覚あるいは興奮、錯乱状態など)などがある。その他の副作用(1.5%以上)に、[[頭痛]]、[[夢]]、[[wj:発疹|発疹]]、[[悪心]]・[[嘔吐]]、[[食思不振]]、[[発熱]]、[[発汗]]、[[悪寒]]などがある。
 麻酔薬として[[wj:静脈投与|静脈投与]]量と[[wj:筋肉注射|筋肉注射]]用がある<ref name=公益社団法人日本麻酔科学会2015>'''公益社団法人日本麻酔科学会(2015)'''<br>麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版 第4訂 [https://anesth.or.jp/files/pdf/venous_medicine_20190905.pdf| PDF]</ref>。静注としては、[[アトロピン]]の前投与後、初回体重あたり1-2 mg/kgを緩徐(1分間以上)に静注し、必要に応じて初回量と同じ量又は半量を追加する。例えば、成人に静注した場合、0.5 ~1分で手術可能な麻酔状態が得られ、麻酔作用は5~10分前後持続する。静注用ケタミンの重大な副作用は、[[wj:急性心不全|急性心不全]](頻度不明)、呼吸抑制(2.5%)、無呼吸(頻度不明)、舌根沈下(頻度不明)、[[痙攣]](0.4%)、覚醒時反応(悪夢、浮遊感覚などの解離症状や幻覚あるいは興奮、錯乱状態など)などがある。その他の副作用(1.5%以上)に、[[頭痛]]、[[夢]]、[[wj:発疹|発疹]]、[[悪心]]・[[嘔吐]]、[[食思不振]]、[[発熱]]、[[発汗]]、[[悪寒]]などがある。


 筋注としては、アトロピンの前投与後、初回体重あたり5-10 mg/kgを筋注し、必要に応じて初回量と同じ量又は半量を追加する。例えば、成人及び小児に筋注した場合、3~4分で手術可能な麻酔状態が得られ、麻酔作用は12~25分前後持続する。筋注用ケタミンの重大な副作用は、静注用ケタミンと同様である。
 筋注としては、アトロピンの前投与後、初回体重あたり5-10 mg/kgを筋注し、必要に応じて初回量と同じ量又は半量を追加する。例えば、成人及び小児に筋注した場合、3~4分で手術可能な麻酔状態が得られ、麻酔作用は12~25分前後持続する。筋注用ケタミンの重大な副作用は、静注用ケタミンと同様である。
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====抗うつ作用の機序 ====
====抗うつ作用の機序 ====
=====mechanistic target of rapamycin系 =====
=====mechanistic target of rapamycin系 =====
 2010年に米国[[wj:Yale大学|Yale大学]]の[[w:Ronald S. Duman|Ronald S. Duman]]博士らは、ケタミンの抗うつ作用に細胞内[[mechanistic target of rapamycin]] ([[mTOR]])系が関与している事を報告した<ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref>。一方、ケタミンの抗うつ作用にmTOR系が関与しないという反論も報告された<ref name=Zanos2016><pubmed>27144355</pubmed></ref><ref name=Autry2011><pubmed>21677641</pubmed></ref> 。Hashimotoらのグループは、mTOR系は(S)-ケタミンの抗うつ作用には関与するが、(R)-ケタミンの抗うつ作用には関与しないことを報告した<ref name=Yang2018><pubmed>28651788</pubmed></ref> 。2020年に、Yale大学の同グループは、mTORの阻害薬[[ラパマイシン]]が、治療抵抗性うつ病患者に対するケタミンの抗うつ効果をブロックせず、逆に増強することを発表した<ref name=Yang2018><pubmed>28651788</pubmed></ref> 。ケタミンの抗うつ作用におけるmTOR系の役割については、今後詳細に検討する必要がある。
 2010年に米国[[wj:Yale大学|Yale大学]]の[[w:Ronald S. Duman|Ronald S. Duman]]博士らは、ケタミンの抗うつ作用に細胞内[[mechanistic target of rapamycin]] ([[mTOR]])系が関与している事を報告した<ref name=Li2010><pubmed> 20724638 </pubmed></ref>。一方、ケタミンの抗うつ作用にmTOR系が関与しないという反論も報告された<ref name=Zanos2016><pubmed>27144355</pubmed></ref><ref name=Autry2011><pubmed>21677641</pubmed></ref> 。Hashimotoらのグループは、mTOR系は(S)-ケタミンの抗うつ作用には関与するが、(R)-ケタミンの抗うつ作用には関与しないことを報告した<ref name=Yang2018><pubmed>28651788</pubmed></ref> 。2020年に、Yale大学の同グループは、mTORの阻害薬[[ラパマイシン]]が、治療抵抗性うつ病患者に対するケタミンの抗うつ効果をブロックせず、逆に増強することを発表した<ref name=Yang2018><pubmed>28651788</pubmed></ref> 。ケタミンの抗うつ作用におけるmTOR系の役割については、今後詳細に検討する必要がある。


===== 脳由来神経栄養因子 =====
===== 脳由来神経栄養因子 =====
 2011年に、米国Southwestern大学の[[w:Lisa Monteggia|Lisa M. Monteggia]]博士(現:[[ヴァンダービルト大学|Vanderbilt University]])らは、ケタミンの抗うつ効果には、[[脳由来神経栄養因子]]([[brain-derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])が関与していることを報告した<ref name=Abdallah2020a><pubmed>32092760</pubmed></ref> 。Hashimotoらのグループも、二つのケタミン異性体の抗うつ効果は、[[TrkB受容体]]拮抗薬でブロックされることから、BDNF-TrkB系が重要であることを報告した<ref name=Yang2015><pubmed>26327690</pubmed></ref>。ケタミンの抗うつ作用におけるBDNF-TrkB系の役割は、多くの研究グル-プから追試されており、ケタミンの持続効果(1週間以上持続)に関与していると推測されている。
 2011年に、米国Southwestern大学の[[w:Lisa Monteggia|Lisa M. Monteggia]]博士(現:[[ヴァンダービルト大学|Vanderbilt University]])らは、ケタミンの抗うつ効果には、[[脳由来神経栄養因子]]([[brain-derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])が関与していることを報告した<ref name= Autry2011><pubmed>21677641</pubmed></ref><ref name=Abdallah2020a><pubmed>32092760</pubmed></ref> 。Hashimotoらのグループも、二つのケタミン異性体の抗うつ効果は、[[TrkB受容体]]拮抗薬でブロックされることから、BDNF-TrkB系が重要であることを報告した<ref name=Yang2015><pubmed>26327690</pubmed></ref>。ケタミンの抗うつ作用におけるBDNF-TrkB系の役割は、多くの研究グル-プから追試されており、ケタミンの持続効果(1週間以上持続)に関与していると推測されている。


===== トランスフォーミング成長因子 =====
===== トランスフォーミング成長因子 =====

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