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== 治療とケア == | == 治療とケア == | ||
=== 認知機能障害 === | |||
認知障害に対してはコリンエステラーゼ阻害剤(cholinesterase inhibitors, ChEIs)が有効である<ref name=McKeith2005><pubmed>16237129</pubmed></ref><ref><pubmed>name=McKeith2017><pubmed>28592453</pubmed></ref><ref><pubmed>name=Rolinski2012><pubmed>22419314</pubmed></ref><ref><pubmed>name=Stinton2015><pubmed>26085043</pubmed></ref> 2,3,13,14)。リバスチグミンおよびドネペジルはレビー小体型認知症の認知機能に改善効果がみられることが示されている<ref name=Stinton2015><pubmed>26085043</pubmed></ref> 14)。ガランタミンについては、オープンラベル試験においてレビー小体型認知症の認知機能の動揺改善が報告されている<ref name=Edwards2007><pubmed>17409748</pubmed></ref> 15)。メマンチンはレビー小体型認知症の全般的臨床転帰を改善する可能性があるが、認知機能について明らかな改善は確認されていない<ref name=Stinton2015><pubmed>26085043</pubmed></ref> 14)。 | 認知障害に対してはコリンエステラーゼ阻害剤(cholinesterase inhibitors, ChEIs)が有効である<ref name=McKeith2005><pubmed>16237129</pubmed></ref><ref><pubmed>name=McKeith2017><pubmed>28592453</pubmed></ref><ref><pubmed>name=Rolinski2012><pubmed>22419314</pubmed></ref><ref><pubmed>name=Stinton2015><pubmed>26085043</pubmed></ref> 2,3,13,14)。リバスチグミンおよびドネペジルはレビー小体型認知症の認知機能に改善効果がみられることが示されている<ref name=Stinton2015><pubmed>26085043</pubmed></ref> 14)。ガランタミンについては、オープンラベル試験においてレビー小体型認知症の認知機能の動揺改善が報告されている<ref name=Edwards2007><pubmed>17409748</pubmed></ref> 15)。メマンチンはレビー小体型認知症の全般的臨床転帰を改善する可能性があるが、認知機能について明らかな改善は確認されていない<ref name=Stinton2015><pubmed>26085043</pubmed></ref> 14)。 | ||
=== 行動・心理症状に対する治療 === | |||
レビー小体型認知症の行動・心理症状に対する対応としては、薬物治療を開始する前に、行動・心理症状を悪化させている身体的要因、他の薬剤の影響、非薬物的介入の対象となる心理社会的要因などについて検討する。レビー小体型認知症では抗コリン作用を有する薬剤(総合感冒薬、尿失禁治療薬、三環系抗うつ薬など)や抗不安薬、H2阻害剤、疼痛治療薬(トラマドール塩酸塩、プレガバリン)などによって容易にせん妄が誘発されるので注意が必要である。 | |||
レビー小体型認知症の幻覚、妄想、アパシーなどの精神症状に対してはリバスチグミン、塩酸ドネペジルの有効性が示されている<ref name=Stinton2015><pubmed>26085043</pubmed></ref> 14)。ガランタミンについてはオープン試験において行動・心理症状の有意な改善が報告されている15)。メマンチンについてはレビー小体型認知症の行動・心理症状に対する効果は一定しておらず、メタアナリシスでも行動・心理症状に対する有効性は確認されていない。 | |||
抑肝散や抑肝散加陳皮半夏が認知症の行動・心理症状を軽減する効果があると報告されており、低カリウム血症や浮腫のほかに大きな副作用を生じにくいことから、レビー小体型認知症の行動・心理症状にも使用される。 | |||
顕著な興奮や易怒性を緊急に治療する必要がある場合に非定型抗精神病薬(クエチアピン、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールなど)を考慮する。行動・心理症状に対する抗精神病薬の使用は適応外使用であり、また死亡リスクを高めるなどの危険があることについて使用時には患者と家族に対して説明のうえ同意を得る必要がある。レビー小体型認知症では抗精神病薬に対する過敏性を示すことがあるので、使用する場合でも最小限の用量にとどめる。定型抗精神病薬(ハロペリドールなど)は基本的に使用は避けるべきである。ガイドラインでは、パーキンソニズムを悪化させにくいことから糖尿病がなければクエチアピンの使用が推奨されている<ref name=McKeith2005><pubmed>16237129</pubmed></ref><ref><pubmed>name=McKeith2017><pubmed>28592453</pubmed></ref> 2,3)。リスペリドン、ブロナンセリンなどのセトロニン・ドパミン拮抗薬は抗精神病作用は優れているが、パーキンソン症状の悪化など副作用を生じやすいので、やむを得ない場合に限りごく少量から慎重に使用する。 | |||
抑うつ症状については選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)の使用が推奨されているがレビー小体型認知症における有効性については証明されていない。不眠を伴う場合少量のミルタザピンの眠前投与が有効な場合がある。 | |||
RBDについてはクロナゼパムの眠前使用が有効な場合があるが、ふらつき、転倒のリスクが高まるため、ごく少量から慎重に使用する。その他、ラメルテオンやメマンチンがRBDや夜間せん妄に有効な場合がある。 | RBDについてはクロナゼパムの眠前使用が有効な場合があるが、ふらつき、転倒のリスクが高まるため、ごく少量から慎重に使用する。その他、ラメルテオンやメマンチンがRBDや夜間せん妄に有効な場合がある。 | ||
=== 身体症状に対する治療 === | === 身体症状に対する治療 === | ||
パーキンソニズムに対してはL-DOPAの使用が第1選択となるが、パーキンソン病に比べると治療反応性は劣る。L-DOPA単独で効果が不十分な場合にはドパミン受容体アゴニスト、ゾニサミドなどの追加を考慮するが、精神症状を悪化させる可能性があるので慎重に使用する。トリヘキシフェニジルなどの抗コリン剤は認知症を悪化させるので避けるべきである。 | パーキンソニズムに対してはL-DOPAの使用が第1選択となるが、パーキンソン病に比べると治療反応性は劣る。L-DOPA単独で効果が不十分な場合にはドパミン受容体アゴニスト、ゾニサミドなどの追加を考慮するが、精神症状を悪化させる可能性があるので慎重に使用する。トリヘキシフェニジルなどの抗コリン剤は認知症を悪化させるので避けるべきである。 |