「慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー」の版間の差分

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 現在の日常診療における慢性炎症性脱髄性多発神経炎診断の際には臨床症候と電気生理学的所見が重要視されており、これまでに多くの診断基準が提唱されてきた。中でも有名なものとして、American Academy of Neurology(AAN)の診断基準とEuropean Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society(EFNS/PNS)ガイドラインの診断基準の2つがあり<ref name=Dyck1975><pubmed>1186294</pubmed></ref><ref name=ref2027473><pubmed>2027473</pubmed></ref> [5,6]、現在は後者(EFNS/PNS診断基準)が頻用されている。
 現在の日常診療における慢性炎症性脱髄性多発神経炎診断の際には臨床症候と電気生理学的所見が重要視されており、これまでに多くの診断基準が提唱されてきた。中でも有名なものとして、American Academy of Neurology(AAN)の診断基準とEuropean Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society(EFNS/PNS)ガイドラインの診断基準の2つがあり<ref name=Dyck1975><pubmed>1186294</pubmed></ref><ref name=ref2027473><pubmed>2027473</pubmed></ref> [5,6]、現在は後者(EFNS/PNS診断基準)が頻用されている。


 EFNS/PNS診断基準では先に述べた典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎の他に、非典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎として、遠位部優位型(distal acquired demyelinating symmetric; DADS)、多巣性感覚運動型(multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy; MADSAM)、局所型、純粋運動型、および純粋感覚型の5種類の病型を定義している(表1)<ref name=JointTaskForceofthe2010><pubmed>20433600</pubmed></ref> [6]。多巣性感覚運動型 はEFNS/PNS診断基準が提唱される以前に報告されていたLewis-Sumner症候群と同義であると考えられている[6]。病型別の割合は報告によって異なるが、後方視的な連続106例の検討では、典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎が52%(55例)、遠位部優位型が15%(16例)、多巣性感覚運動型が14%(15例)、局所型が1%(1例)、純粋運動型が4%(4例)、純粋感覚型が14%(15例)であった<ref name=Ikeda2019><pubmed>31227562</pubmed></ref> [7]。
 EFNS/PNS診断基準では先に述べた典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎の他に、非典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎として、遠位部優位型(distal acquired demyelinating symmetric; DADS)、多巣性感覚運動型(multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy; MADSAM)、局所型、純粋運動型、および純粋感覚型の5種類の病型を定義している('''表1''')<ref name=JointTaskForceofthe2010><pubmed>20433600</pubmed></ref> [6]。多巣性感覚運動型 はEFNS/PNS診断基準が提唱される以前に報告されていたLewis-Sumner症候群と同義であると考えられている[6]。病型別の割合は報告によって異なるが、後方視的な連続106例の検討では、典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎が52%(55例)、遠位部優位型が15%(16例)、多巣性感覚運動型が14%(15例)、局所型が1%(1例)、純粋運動型が4%(4例)、純粋感覚型が14%(15例)であった<ref name=Ikeda2019><pubmed>31227562</pubmed></ref> [7]。


 近年、典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎と遠位部優位型の病型を呈する患者の一部で傍絞輪部に存在する155やコンタクチン1に対する自己抗体が検出されることが明らかとなり、これらの抗体陽性例は後述するように従来型の慢性炎症性脱髄性多発神経炎とは異なる病態を有する一群と考えられるようになっている<ref name=Koike2020><pubmed>32410146</pubmed></ref> [2]。
 近年、典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎と遠位部優位型の病型を呈する患者の一部で傍絞輪部に存在する155やコンタクチン1に対する自己抗体が検出されることが明らかとなり、これらの抗体陽性例は後述するように従来型の慢性炎症性脱髄性多発神経炎とは異なる病態を有する一群と考えられるようになっている<ref name=Koike2020><pubmed>32410146</pubmed></ref> [2]。
{| class="wikitable"
|+表1 慢性炎症性脱髄性多発神経炎の病型(EFNS/PNS診療ガイドラインから引用)<ref name=JointTaskForceofthe2010><pubmed>20433600</pubmed></ref> [6]
|-
| '''(1) 典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎(typical CIDP)'''<br>
'''(2) 非典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎(atypical CIDP)'''<br>
  (a) 遠位部優位型(distal acquired demyelinating symmetric; DADS)<br>
  (b) 多巣性感覚運動型(multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy; MADSAM)<br>
  (c) 局所型(focal)<br>
  (d) 純粋運動型(pure sensory)<br>
  (e) 純粋感覚型(pure motor)<br>
|}


== 疫学 ==
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