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== 疫学 == | == 疫学 == | ||
生涯有病率は3~15%(中央値は7.2%)であり、国によって大きく異なるが1、米国での有病率の割合は、アジア人やラテン系アメリカ人では、非ラテン系白人、アフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民より低い<ref name=日本精神神経学会2014>日本精神神経学会. (2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル (高橋三郎, 大野裕, 染矢俊幸, 神庭重信, 尾崎紀夫, 三村將, & 村井俊哉, Trans.). 医学書院. </ref>23。日本における生涯有病率は3.4%、12ヵ月有病率は2.3%であり、遷延性の高さを反映している<ref name=Ishikawa2016><pubmed>26148821</pubmed></ref>24。生涯有病率の性差では、女性では男性よりも生涯有病率が高い。その理由に明白な証拠はないものの、女性には育児を行う年代にも初発のピークがみられることから<ref name=Eaton2018 / | 生涯有病率は3~15%(中央値は7.2%)であり、国によって大きく異なるが1、米国での有病率の割合は、アジア人やラテン系アメリカ人では、非ラテン系白人、アフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民より低い<ref name=日本精神神経学会2014>'''日本精神神経学会. (2014).'''<br>DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル (高橋三郎, 大野裕, 染矢俊幸, 神庭重信, 尾崎紀夫, 三村將, & 村井俊哉, Trans.). 医学書院. </ref>23。日本における生涯有病率は3.4%、12ヵ月有病率は2.3%であり、遷延性の高さを反映している<ref name=Ishikawa2016><pubmed>26148821</pubmed></ref>24。生涯有病率の性差では、女性では男性よりも生涯有病率が高い。その理由に明白な証拠はないものの、女性には育児を行う年代にも初発のピークがみられることから<ref name=Eaton2018 /><ref name=Eaton2012>'''Eaton, W. W., Alexandre, P., Kessler, R. C., Martins, S. S., Mortensen, P. B., Rebok, G. W., Storr, C. L., & Roth, K. (2012).'''<br>The Population Dynamics of Mental Disorders. In Public Mental Health (pp. 125-150). Oxford University Press.[https://doi.org/10.1093/acprof:oso/9780195390445.003.0006 [PDF]]</ref>1,25、危険を忌避する行動が生存に適していた可能性がある。生涯有病率の国別比較では、低所得の国では、高所得の国よりも低い傾向があった(それぞれ5.7%と8.1%)<ref name=World1993>'''World Health Organization (1993).'''<br>The ICD-10 classification of mental and behavioural disorders-diagnostic criteria for research.</ref>26。対象となる恐怖は、動物、高所、閉所、飛行、水、血液、嵐の順に多かった<ref name=Eaton2018 /><ref name=Stinson2007><pubmed>17335637</pubmed></ref>1,27。 | ||
[https://doi.org/10.1093/acprof:oso/9780195390445.003.0006 | |||
多くの患者は恐怖症の発症について特定の理由を思い出すことができない。発症年齢は二峰性を示すが、通常小児期早期に始まり、大多数は10歳前に発症する(中央値は7~11歳の間)。ほとんどが青年期までに発症するが、いずれの年齢においても発症する可能性がある23。女性においては、中年期と老年期にもピークを示す<ref name=Eaton2018 / | 多くの患者は恐怖症の発症について特定の理由を思い出すことができない。発症年齢は二峰性を示すが、通常小児期早期に始まり、大多数は10歳前に発症する(中央値は7~11歳の間)。ほとんどが青年期までに発症するが、いずれの年齢においても発症する可能性がある23。女性においては、中年期と老年期にもピークを示す<ref name=Eaton2018 /><ref name=Eaton2012 />1,25。心的外傷的経験の結果として発症する場合(例えば窒息)は、どんな年齢でもその経験に近い出来事の後にほとんど常に生じる<ref name=日本精神神経学会2014></ref>23。航空機、閉所等の状況性の限局性恐怖症は、嵐、水等の自然環境、動物、血液・注射・負傷を恐怖刺激とする限局性恐怖症より、発症年齢が遅い傾向にある。成人期まで持続した恐怖症では、大多数の人で寛解しない傾向がある。 | ||
危険因子としては、女性、離婚または死別、18歳未満の早婚、教育歴の低さなどが考えられている<ref name=Eaton2018></ref><ref name=Stinson2007><pubmed>17335637</pubmed></ref><ref name=Breslau2011><pubmed>21534936</pubmed></ref>1,27, | 危険因子としては、女性、離婚または死別、18歳未満の早婚、教育歴の低さなどが考えられている<ref name=Eaton2018></ref><ref name=Stinson2007><pubmed>17335637</pubmed></ref><ref name=Breslau2011><pubmed>21534936</pubmed></ref>1,27,28。また、否定的感情、行動抑制といった気質要因、親の過保護、親の喪失、身体的または性的虐待、恐怖の対象や状況との否定的または心的外傷的な経験といった環境要因がある<ref name=日本精神神経学会2014></ref>23。双子研究のメタ解析では、約30%(動物32%、状況25%、血液・注射・負傷33%)の平均遺伝率を持つことから、遺伝的要因が存在する可能性がある<ref name=VanHoutem2013><pubmed>23774007</pubmed></ref>29。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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