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==視覚情報処理過程の3段階== | ==視覚情報処理過程の3段階== | ||
[[File:Inui_Marrs_computational_theory_of_vision_Fig.png|thumb|400px|'''図. Marrの視覚情報処理過程の枠組み''']] | |||
Marrは、視覚情報処理過程を大きく3段階に分けて議論した。すなわち、初期視覚(early vision)、中間視覚(middle vision)、高次視覚(high-level vision)である。Marrの枠組みのなかで最大の特徴は、面の知覚が視覚系の最も重要な機能だとした点である。それまでの知覚観は線や図形といった2次元的な形態を捉えることを中心に議論されてきた。それに対して、Marrは外界の3次元構造を網膜像から推定することが視覚系の最大の特徴であると捉えたのである。ここにひとつの大きな転機が視覚心理学や生理学に訪れることとなった。 | Marrは、視覚情報処理過程を大きく3段階に分けて議論した。すなわち、初期視覚(early vision)、中間視覚(middle vision)、高次視覚(high-level vision)である。Marrの枠組みのなかで最大の特徴は、面の知覚が視覚系の最も重要な機能だとした点である。それまでの知覚観は線や図形といった2次元的な形態を捉えることを中心に議論されてきた。それに対して、Marrは外界の3次元構造を網膜像から推定することが視覚系の最大の特徴であると捉えたのである。ここにひとつの大きな転機が視覚心理学や生理学に訪れることとなった。 | ||
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===高次視覚=== | ===高次視覚=== | ||
最後の段階は、2.5次元スケッチから観察者中心座標系ではなく物体中心座標系における物体の3次元表現である。最終段階である高次視覚ではパターン認識のための物体の表現が作られると考える。つまり物体に座標軸を持つ表現である。中心軸は細く伸びた方向など一般的なルールによって決められると考えられ、それに基づいて各部分間の関係などが記述され可視表面ではない裏の面(感覚可能物sensibilia)も表現されていると考えるのである。2.5次元スケッチは観察者を中心とした表現なので、観察者が移動して視点が変化することによってその表現は変化する。これまで見えていなかった面も見えるようになることもある。3次元表現は物体に座標軸を持つ表現であり、各視点からは見えない面も表現されているのである。したがって物体の位置や姿勢あるいは観察者の位置が変化しでもその表現は不変である。そして物体中心座標で表現された3次元表現は部分と全体が階層的に表された階層的表現であると考えた。 | 最後の段階は、2.5次元スケッチから観察者中心座標系ではなく物体中心座標系における物体の3次元表現である。最終段階である高次視覚ではパターン認識のための物体の表現が作られると考える。つまり物体に座標軸を持つ表現である。中心軸は細く伸びた方向など一般的なルールによって決められると考えられ、それに基づいて各部分間の関係などが記述され可視表面ではない裏の面(感覚可能物sensibilia)も表現されていると考えるのである。2.5次元スケッチは観察者を中心とした表現なので、観察者が移動して視点が変化することによってその表現は変化する。これまで見えていなかった面も見えるようになることもある。3次元表現は物体に座標軸を持つ表現であり、各視点からは見えない面も表現されているのである。したがって物体の位置や姿勢あるいは観察者の位置が変化しでもその表現は不変である。そして物体中心座標で表現された3次元表現は部分と全体が階層的に表された階層的表現であると考えた。 | ||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references> | <references /> | ||
Mather, G. (2015) Computational approaches to perception: Beyond Marr’s (1982) computational approach to vision. In: Eysenck, M.W. and Groome, D. (Eds.) Cognitive psychology : Revisiting the classic studies, SAGE Publications, 38-46. 乾 敏郎 (訳, 2017) 知覚の計算論的アプローチ-Marr(1982)による視覚の計算論的アプローチを超えて. 箱田 裕司, 行場 次朗(監訳)『古典で読み解く現代認知心理学』, 北大路書房, 49-60. | Mather, G. (2015) Computational approaches to perception: Beyond Marr’s (1982) computational approach to vision. In: Eysenck, M.W. and Groome, D. (Eds.) Cognitive psychology : Revisiting the classic studies, SAGE Publications, 38-46. 乾 敏郎 (訳, 2017) 知覚の計算論的アプローチ-Marr(1982)による視覚の計算論的アプローチを超えて. 箱田 裕司, 行場 次朗(監訳)『古典で読み解く現代認知心理学』, 北大路書房, 49-60. |