「味覚受容体」の版間の差分

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==== 苦味受容体(T2Rファミリー)  ====
==== 苦味受容体(T2Rファミリー)  ====


 T2Rファミリーには多種の受容体が存在し、マウスでは30種類ほどある<ref><pubmed> 10761934 </pubmed></ref>。その多種の受容体が同じ細胞に共発現し、ホモ/ヘテロ・オリゴマーを形成して苦味物質を検出する<ref><pubmed> 20212011 </pubmed></ref>。  
 T2Rファミリーには多種類の受容体が含まれ、マウスでは30種類ほどある<ref><pubmed> 10761934 </pubmed></ref>。複数種の受容体が同じ味細胞に共発現し、ホモ/ヘテロ・オリゴマーを形成して苦味物質を検出する<ref><pubmed> 20212011 </pubmed></ref>。  


=== イオンチャネル型受容体  ===
=== イオンチャネル型受容体  ===
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 昆虫において味覚受容体を発現する[[味細胞]]は、口吻、咽頭、跗節や交尾器などの[[感覚子]](sensillum)に存在する<ref name="ref4"><pubmed> 8118845 </pubmed></ref>。進化的には哺乳類とかけはなれた昆虫も、味覚の区分は哺乳類と極めて類似しており、糖や低濃度の塩、脂肪酸に対しては嗜好性を示し、高濃度の塩や苦味などは嫌悪する<ref name="ref5" />。さらに、[[甘味受容体]]の数が、[[苦味受容体]]に比べると少ない点も共通している<ref><pubmed> 21262465 </pubmed></ref>。その一方で、昆虫には食べ物を味わう目的以外に、たとえば脚にある味覚受容器の味覚受容体が、産卵する宿主植物が持つ化学物質や、求愛相手の[[wikipedia:JA:性フェロモン|性フェロモン]]の検知に関わっていることが報告されている<ref><pubmed> 22086342 </pubmed></ref><ref><pubmed> 22632976 </pubmed></ref>。  
 昆虫において味覚受容体を発現する[[味細胞]]は、口吻、咽頭、跗節や交尾器などの[[感覚子]](sensillum)に存在する<ref name="ref4"><pubmed> 8118845 </pubmed></ref>。進化的には哺乳類とかけはなれた昆虫も、味覚の区分は哺乳類と極めて類似しており、糖や低濃度の塩、脂肪酸に対しては嗜好性を示し、高濃度の塩や苦味などは嫌悪する<ref name="ref5" />。さらに、[[甘味受容体]]の数が、[[苦味受容体]]に比べると少ない点も共通している<ref><pubmed> 21262465 </pubmed></ref>。その一方で、昆虫には食べ物を味わう目的以外に、たとえば脚にある味覚受容器の味覚受容体が、産卵する宿主植物が持つ化学物質や、求愛相手の[[wikipedia:JA:性フェロモン|性フェロモン]]の検知に関わっていることが報告されている<ref><pubmed> 22086342 </pubmed></ref><ref><pubmed> 22632976 </pubmed></ref>。  


 ここでは、昆虫で最も味覚受容体の同定が進んでいるショウジョウバエを例に味覚受容体を概説する。口吻の1つの感覚子には、[[糖受容細胞]]、[[水受容細胞]]、[[塩受容細胞]]、[[苦味/高濃度塩受容細胞]]の4種類の味細胞、もしくは、[[糖/低塩受容細胞]]、[[苦味/高濃度塩受容細胞]]の2種類の味細胞が含まれている<ref name="ref4" /><ref><pubmed> 15389687 </pubmed></ref>。現在までに、ショウジョウバエから68種類の7回膜貫通型受容体遺伝子が同定されており、個々の[[味細胞]]が発現する受容体やその一部のリガンドが明らかになってきている<ref><pubmed> 19660932 </pubmed></ref>。その一方で、各味細胞は複数の受容体を発現していて、各受容体がどのようなサブユニットから構成されているのかがはっきりしていないものが多く、また、7回膜貫通型受容体以外にも、ENaCファミリーの[[Pickpocket28]](PPK28)が水受容細胞が低浸透圧を検知するために必須であることや、苦味受容体細胞が[[TrpA1]]遺伝子を発現することが[[wikipedia:ja:ワサビ|ワサビ]]の味を感知するために必要であることが報告されている<ref><pubmed> 20364123 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16647259 </pubmed></ref>。  
 ここでは、昆虫で最も味覚受容体の同定が進んでいるショウジョウバエを例に概説する。口吻の1つの感覚子には、[[糖受容細胞]]、[[水受容細胞]]、[[塩受容細胞]]、[[苦味/高濃度塩受容細胞]]の4種類の味細胞、もしくは、[[糖/低塩受容細胞]]、[[苦味/高濃度塩受容細胞]]の2種類の味細胞が含まれている<ref name="ref4" /><ref><pubmed> 15389687 </pubmed></ref>。ショウジョウバエでは68種類の7回膜貫通型の味覚受容体(gustatory receptor, GR)ファミリーが同定され、糖や苦み物質に対する受容体や、その受容体を発現する味神経が明らかにされている<ref><pubmed> 19660932 </pubmed></ref>。ただし、GRファミリーには、嗅覚受容体なども含まれており、すべてが味覚受容体として機能しているわけではない。GRファミリーに含まれる味覚受容体は、7回膜貫通型のタンパク質ではあるが、少なくとも一部の受容体はGタンパク質共役型として働くのではなく、陽イオンを通すイオンチャネルとして機能する<ref><pubmed> 21709218</pubmed></ref>。
 
その一方で、各味細胞は複数の受容体を発現していて、各受容体がどのようなサブユニットから構成されているのかがはっきりしていないものが多く、また、7回膜貫通型受容体以外にも、ENaCファミリーの[[Pickpocket28]](PPK28)が水受容細胞が低浸透圧を検知するために必須であることや、苦味受容体細胞が[[TrpA1]]遺伝子を発現することが[[wikipedia:ja:ワサビ|ワサビ]]の味を感知するために必要であることが報告されている<ref><pubmed> 20364123 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16647259 </pubmed></ref>。  


 昆虫でも甘味や苦味に対する受容体は7回膜貫通型の構造をとるのだが、哺乳類とは異なり、受容体はGタンパク質共役型でないと考えられている。実際にGタンパク質を欠損させると、味覚応答が部分的に低下する<ref><pubmed> 16121192 </pubmed></ref>。しかしながら、フルクトースに応答する7回膜貫通型受容体に、リガンド結合型イオンチャネルとしての性質があることが報告され、少なくとも一部はGタンパク質共役型ではないと考えられている<ref><pubmed> 21709218 </pubmed></ref>。  
 昆虫でも甘味や苦味に対する受容体は7回膜貫通型の構造をとるのだが、哺乳類とは異なり、受容体はGタンパク質共役型でないと考えられている。実際にGタンパク質を欠損させると、味覚応答が部分的に低下する<ref><pubmed> 16121192 </pubmed></ref>。しかしながら、フルクトースに応答する7回膜貫通型受容体に、リガンド結合型イオンチャネルとしての性質があることが報告され、少なくとも一部はGタンパク質共役型ではないと考えられている<ref><pubmed> 21709218 </pubmed></ref>。  
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