「児童虐待」の版間の差分
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英語名:child abuse 独:Kindesmißhandlung 仏:abus de l'enfant | 英語名:child abuse 独:Kindesmißhandlung 仏:abus de l'enfant | ||
{{box|text= | {{box|text=「児童虐待の防止等に関する法律」(2000年11月施行)では,児童虐待は,保護者が子どもに対して身体的外傷を負わす(身体虐待),わいせつな行為をする(性的虐待),言葉による脅しや目の前の家族に暴力を振るうドメスティックの目撃などにより心理的外傷を負わす(心理的虐待),食事を与えないなどの監護を怠る(ネグレクト)の4分類に定義された。児童相談所対応件数は2020年度に20万を超え,施行前の1999年度と比べ17倍以上と増加の一途を辿っている。虐待を受けた子どもは,怪我や栄養状態だけでなく,感情や行動面,対人関係面においても大きな変化を認め,脳の機能的,器質的変化まで生じさせる。虐待を受けた結果生じる安心,安全感の欠如や人間不信,および過去の出来事の想起や自己評価の低下は,成人後もその生活において大きな影響を与え続ける。早期発見と対応は虐待を受けた子どもと虐待をしてしまう保護者双方に行う必要がある。 }} | ||
== 日本の現状 == | == 日本の現状 == | ||
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== 日本の法律と定義 == | == 日本の法律と定義 == | ||
わが国は平成12年に[[wj:児童虐待の防止等に関する法律|児童虐待の防止等に関する法律]]を施行させ、以後改正を続け、21年4月から施行となった児童虐待の防止等に関する法律によると、児童虐待は'''表'''のように定義されている<ref>[http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/hourei.html 児童虐待に関する法令・指針等一覧]</ref>。 | |||
この前提として、法律の目的が第1条にうたわれている。それによると「この法律は、児童虐待が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことにかんがみ、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資することを目的」としている。 | この前提として、法律の目的が第1条にうたわれている。それによると「この法律は、児童虐待が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことにかんがみ、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資することを目的」としている。 | ||
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#[[乳児揺さぶられ症候群]](Shaken baby syndrome):乳幼児を暴力的に揺さぶり、その後に外傷(多くは頭蓋内出血、[[硬膜]]下出血、頸部の損傷など)が生じる | #[[乳児揺さぶられ症候群]](Shaken baby syndrome):乳幼児を暴力的に揺さぶり、その後に外傷(多くは頭蓋内出血、[[硬膜]]下出血、頸部の損傷など)が生じる | ||
#ネグレクトによる成長障害([[愛情遮断性小人症]]):年齢不相応の低身長、低体重 | #ネグレクトによる成長障害([[愛情遮断性小人症]]):年齢不相応の低身長、低体重 | ||
#出生前虐待 (Prenatal Abuse):[[wj:妊娠|妊娠]]中の女性が、[[麻薬]]・[[覚醒剤]]の濫用、喫煙、[[アルコール]]の大量摂取などによって胎児の健康を害する行為 | #出生前虐待 (Prenatal Abuse ) :[[wj:妊娠|妊娠]]中の女性が、[[麻薬]]・[[覚醒剤]]の濫用、喫煙、[[アルコール]]の大量摂取などによって胎児の健康を害する行為 | ||
#親子心中、棄児、置去児<br>といったものが上げられる。 | #親子心中、棄児、置去児<br>といったものが上げられる。 | ||
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身体面の特徴について列挙すると、低身長・低体重・成長障害、皮膚外傷、[[wj:骨折|骨折]]・[[wj:脱臼|脱臼]]・骨端破壊、[[wj:火傷|火傷]]、頭部外傷、内臓損傷、[[wj:脊椎|脊椎]]損傷・麻痺、[[wj:網膜剥離|網膜剥離]]などの眼症状、栄養障害・飢餓、[[けいれん]]・[[てんかん]]、[[wj:下痢|下痢]]・[[wj:嘔吐|嘔吐]]・[[wj:消化不良|消化不良]]、[[wj:循環障害|循環障害]]、[[wj:凍傷|凍傷]]、歯牙脱落・舌損傷、そして死亡である。 | 身体面の特徴について列挙すると、低身長・低体重・成長障害、皮膚外傷、[[wj:骨折|骨折]]・[[wj:脱臼|脱臼]]・骨端破壊、[[wj:火傷|火傷]]、頭部外傷、内臓損傷、[[wj:脊椎|脊椎]]損傷・麻痺、[[wj:網膜剥離|網膜剥離]]などの眼症状、栄養障害・飢餓、[[けいれん]]・[[てんかん]]、[[wj:下痢|下痢]]・[[wj:嘔吐|嘔吐]]・[[wj:消化不良|消化不良]]、[[wj:循環障害|循環障害]]、[[wj:凍傷|凍傷]]、歯牙脱落・舌損傷、そして死亡である。 | ||
行動面の特徴としては、[[過食]]・[[盗食]]・[[異食]]・[[食欲不振]]といった食事に関した課題がもっともよく認められる。さらに学童期中頃から認められる便尿失禁、あるいは[[常同運動]]や[[自傷行為]]、時に[[緘黙]]傾向も認められる。また[[虚言]]や盗み・万引き、いやがらせ、集団不適応、火遊び・放火、いじめ、器物破損・暴力といった[[行為障害]] | 行動面の特徴としては、[[過食]]・[[盗食]]・[[異食]]・[[食欲不振]]といった食事に関した課題がもっともよく認められる。さらに学童期中頃から認められる便尿失禁、あるいは[[常同運動]]や[[自傷行為]]、時に[[緘黙]]傾向も認められる。また[[wj:虚言|虚言]]や盗み・万引き、いやがらせ、集団不適応、火遊び・放火、いじめ、器物破損・暴力といった[[行為障害]]様言動も顕著である。生活場面では、だらしなさが目立ち、特に女児では性的逸脱行動や繰り返す自傷行為や自殺企図 が認められる。 | ||
精神面の特徴としては、運動・情緒・言語発達の遅れが顕著で、生来性の発達障害との鑑別に苦慮することになる。ほかに抑うつ、無表情、無気力、不眠、神経過敏や気分易変を認め、結果的に学習不振に至ることもある。低年齢では、おちつきがない、人との距離感がとれない、大人の顔色をうかがうといった行動も目立つ。精神症状としては、[[薬物依存]]、性的行動化(売春)、[[抑うつ状態]]、希死念慮、[[不安障害]]、[[対人恐怖]]、転換・解離症状、[[心因性疼痛]]、[[チック]]などが認められる。 | |||
子どもたちの心理的傾向として強調しておくべき点は、対人関係の問題として認められる人との関連性の学びの不在や、虐待する者へのしがみつきといったトラウマ性の体験による結びつきが強く認められる、施設などでは、この体験を再現しようと再三挑発的言動を繰り返し、虐待的人間関係の再現を執拗に試みることが認められる。 | 子どもたちの心理的傾向として強調しておくべき点は、対人関係の問題として認められる人との関連性の学びの不在や、虐待する者へのしがみつきといったトラウマ性の体験による結びつきが強く認められる、施設などでは、この体験を再現しようと再三挑発的言動を繰り返し、虐待的人間関係の再現を執拗に試みることが認められる。 | ||
一方で、情動や感覚の調整障害として、見捨てられ体験、行動で示す激しい怒りや感情(パニック)、自傷行為などもある。基本的に共通している点は、悪いのはいつも自分といった悪い自己イメージや否定的予測である。 | |||
なお、性的虐待を受けた子どもたちの心理は、不本意な性的快感や秘密の共有を強いられるため非常に複雑な心理状態に置かれる。 | なお、性的虐待を受けた子どもたちの心理は、不本意な性的快感や秘密の共有を強いられるため非常に複雑な心理状態に置かれる。 | ||
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いずれにしても被虐待経験は、[[外傷後ストレス障害|心的外傷体験]]となり、長期的後遺症として、「人は暴力による支配で関係を作る」「理不尽ではあっても、支配者には抵抗できない」などの生きる上でのさまざまな誤学習と孤独・孤立感を作り出す。 | いずれにしても被虐待経験は、[[外傷後ストレス障害|心的外傷体験]]となり、長期的後遺症として、「人は暴力による支配で関係を作る」「理不尽ではあっても、支配者には抵抗できない」などの生きる上でのさまざまな誤学習と孤独・孤立感を作り出す。 | ||
虐待が生み出す最大の、そして究極の影響力は、この安全保障のなさを学習し体験することで、それが日々の生活のベースラインとなってしまうことである。 | 虐待が生み出す最大の、そして究極の影響力は、この安全保障のなさを学習し体験することで、それが日々の生活のベースラインとなってしまうことである。 | ||
== 対応 == | == 対応 == | ||