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=== 後頭頂葉 === | === 後頭頂葉 === | ||
サルでは、ニューロン活動が示す性質から、後頭頂葉を、腕運動に強く関与するParietal reach region(PRR) | サルでは、ニューロン活動が示す性質から、後頭頂葉を、腕運動に強く関与するParietal reach region(PRR)と、眼球運動(主にサッカード)に強く関与するLateral intraparietal area(LIP)と分けて考えることができる。ムシモールによりPRRを不活性化した場合、両運動のRT相関が弱まることから、目と腕の時間的協調関係にPRRが関与していることが示唆された<ref name=Hwang2014><pubmed>25232123</pubmed></ref>[30]。一方、神経の同期活動に着目した解析により、LIPも両運動の時間的協調関係に関与することが示されている<ref name=Dean2012><pubmed>22365554</pubmed></ref><ref name=Hagan2012><pubmed>22157119</pubmed></ref>[31; 32]。また、より近年の研究によれば、PRRとLIPの連関が、腕運動中に生ずる目への強い抑制効果(前述のgaze-anchoring)と関連することが示唆されている<ref name=Hagan>'''Hagan MA, Pesaran B. (2020).<br>'''Functional inhibition across a visuomotor communication channel coordinates looking and reaching. bioRxiv 2020.06.16.156125. [https://doi.org/10.1101/2020.06.16.156125 DOI]</ref>[33]。また、健常人参加者の後頭頂葉への経頭蓋磁気刺激(TMS)の印加により、目と腕の空間的協調関係が崩れることも報告されている<ref name=VanDonkelaar2000><pubmed>10980038</pubmed></ref>[34]。 | ||
=== 小脳 === | === 小脳 === | ||
従来、小脳は、目と手の協調動作に限らず、関節や効果器間など、多様な協調動作に関与することが多く示されてきた(たとえば文献<ref name=Manto2012><pubmed>22161499</pubmed></ref>[35])。Miallら<ref name=Miall2001><pubmed>11369946</pubmed></ref><ref name=Miall2000><pubmed>11104124</pubmed></ref><ref name=Miall2005><pubmed>16082535</pubmed></ref>[36–38]は、不規則に動く視覚目標を、目と手を用いて連続的に追従するトラッキング課題に着目し、fMRI計測の結果、目と腕の協調関係に小脳が関わることを示した。トラッキング課題において目制御系は、フォワードモデルに基づく手の位置の推定情報を連続的に利用すると考えられており、このフォワード計算に小脳が関与すると解釈することができる。小脳が、目・腕の協調関係、特に時間的協調に関与する考え方は、小脳疾患患者や動物を対象とした実験などでも広く支持されている<ref name=Rizzo2020><pubmed>33292609</pubmed></ref><ref name=Sailer2005><pubmed>15836902</pubmed></ref><ref name=Vercher1988><pubmed>3208854</pubmed></ref>[39–41]。 | 従来、小脳は、目と手の協調動作に限らず、関節や効果器間など、多様な協調動作に関与することが多く示されてきた(たとえば文献<ref name=Manto2012><pubmed>22161499</pubmed></ref>[35])。Miallら<ref name=Miall2001><pubmed>11369946</pubmed></ref><ref name=Miall2000><pubmed>11104124</pubmed></ref><ref name=Miall2005><pubmed>16082535</pubmed></ref>[36–38]は、不規則に動く視覚目標を、目と手を用いて連続的に追従するトラッキング課題に着目し、fMRI計測の結果、目と腕の協調関係に小脳が関わることを示した。トラッキング課題において目制御系は、フォワードモデルに基づく手の位置の推定情報を連続的に利用すると考えられており、このフォワード計算に小脳が関与すると解釈することができる。小脳が、目・腕の協調関係、特に時間的協調に関与する考え方は、小脳疾患患者や動物を対象とした実験などでも広く支持されている<ref name=Rizzo2020><pubmed>33292609</pubmed></ref><ref name=Sailer2005><pubmed>15836902</pubmed></ref><ref name=Vercher1988><pubmed>3208854</pubmed></ref>[39–41]。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == |