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== 治療 == | == 治療 == | ||
2009年に改定された[[wikipedia:JA:アメリカ精神医学会|アメリカ精神医学会]](American Psychiatric Association:APA)の治療ガイドライン<ref name="ref21">American Psychiatric Association:Practice guideline for the treatment of patient with panic disorder. Second Edition, 2009. //www.psychiatryonline.com/pracGuide/pracGuideChapToc_9.aspx AmJ.Psychiatry,155[suppl.5]</ref>を始め、[[wikipedia: | 2009年に改定された[[wikipedia:JA:アメリカ精神医学会|アメリカ精神医学会]](American Psychiatric Association:APA)の治療ガイドライン<ref name="ref21">American Psychiatric Association:Practice guideline for the treatment of patient with panic disorder. Second Edition, 2009. //www.psychiatryonline.com/pracGuide/pracGuideChapToc_9.aspx AmJ.Psychiatry,155[suppl.5]</ref>を始め、[[wikipedia:World Federation of Societies of Biological Psychiatry|生物学的精神医学会世界連合]](WFSBPの日本語訳がこれで良いか御確認下さい)(2002)<ref name="ref22"><pubmed>12516310</pubmed></ref>、[[wikipedia:Australian And New Zealand Association Of Psychiatry|オーストラリア・ニュージーランドの精神医学会]]ガイドライン(2003)<ref name="ref23"><pubmed>14636376</pubmed></ref>、[[wikipedia:british association of psychopharmacology|イギリス精神薬理学会]](British Association for Psychopharmacology, BAP)(2005)<ref name="ref24"><pubmed>16272179</pubmed></ref>等、PDに関する各国の主な治療ガイドラインでは、薬物療法とCBTのいずれも有効で、両者とも治療の第一選択として挙げられている。CBTのメリットとしては、薬物療法に比し再発率が低いことであるが<ref><pubmed>17253502</pubmed></ref>、そもそも我が国ではうつ病以外CBTの保険適応がないこと、そのためコスト面での問題があること、さらに現時点では習熟した治療者が不足していること等、実臨床として本格的にCBTを活用するには、残念ながら課題は山積していると言わざるを得ない。一方、薬物療法については、その概念の確立時期よりすでに有効性が示されており、現在も治療の中心的な役割を担っている。以下に、薬物療法について少し述べる。 | ||
=== 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 === | === 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 === | ||
前述の治療ガイドラインでは、薬物療法における第一選択薬は、[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]( | 前述の治療ガイドラインでは、薬物療法における第一選択薬は、[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)を挙げている。本邦でも、2008年に[[wikipedia:JA:厚生労働省|厚生労働省]]こころの健康科学事業「パニック障害の治療法の最適化と治療ガイドラインの策定に関する研究班」により作成されたPDに関するハンドブックがあり、こちらも大筋では前述のガイドラインに一致し、本邦で適応が通っている[[wikipedia:paroxetine|paroxetine]]か[[wikipedia:sertraline|sertraline]]で治療を開始することを推奨している<ref name="ref26">'''竹内龍雄,大野裕,貝谷久宣 他'''<br>パニック障害の治療ガイドライン.パニック障害ハンドブック 治療ガイドラインと診療の実際(熊野宏昭,久保木富房 編<br>pp13-28,医学書院,東京,2008.</ref>。その理由として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬の抗パニック効果としては、前述した三還系抗うつ薬と同等であるとされているものの、三還系抗うつ薬は抗コリン作用や[[wikipedia:JA:心血管系|心血管系]]への副作用が強く、忍容性の面で問題があるからである。また、[[wikipedia:venlafaxine|venlafaxine]]のように、[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬]](serotonin noradrenalin reuptake inhibitor, SNRI)の中にもPDに有効とされる薬剤もあるが<ref><pubmed>19358784</pubmed></ref>,<ref><pubmed>16894619</pubmed></ref>、残念ながらわが国では使用できないのが現状である。 | ||
=== ベンゾジアゼピン系抗不安薬 === | === ベンゾジアゼピン系抗不安薬 === | ||
選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三還系抗うつ薬と共に、高力価の[[ベンゾジアゼピン]]系[[抗不安薬]]もPDに有効である<ref><pubmed>1540759</pubmed></ref><ref><pubmed> 9284865</pubmed></ref>。具体的には[[wikipedia:alprazolam|alprazolam]]、[[wikipedia:lorazepam|lorazepam]]、[[wikipedia:clonazepam|clonazepam]]、[[wikipedia:ja:ジアゼパム|diazepam]]等、である。前述の欧米各国のガイドラインでは、いずれもベンゾジアゼピン系抗不安薬は第2選択薬とされ、選択的セロトニン再取り込み阻害薬等の抗うつ薬の効果が発現するまでの間(通常、治療開始から1カ月間)、PA等を抑えるための補助的な投与に留めるよう、勧告されている<ref name="ref22"><pubmed>12516310</pubmed></ref> <ref name="ref23"><pubmed>14636376</pubmed></ref><ref name="ref24"><pubmed>16272179</pubmed></ref> 。その理由として、眠気や脱力といった副作用や長期投与による依存形成等のためである。一方、前述の厚生労働省の研究班によるハンドブックでは、抗うつ薬の治療開始から効果発現までの期間にはベンゾジアゼピン系抗不安薬の併用によって積極的に症状改善を図るとし<ref name="ref26">'''竹内龍雄,大野裕,貝谷久宣 他'''<br>パニック障害の治療ガイドライン.パニック障害ハンドブック 治療ガイドラインと診療の実際(熊野宏昭,久保木富房 編<br>pp13-28,医学書院,東京,2008.</ref>、その後4〜12週程度の間に徐々に減量し、頓用化を試みるよう指導している。したがって、欧米と我が国ではベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用について若干温度差があるが、これは日本では欧米に比しベンゾジアゼピン系抗不安薬の依存や耐性を示す頻度が少ないためかもしれない。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |