「アルゴノート」の版間の差分

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== サブファミリー==
== サブファミリー==
 アルゴノートは、発現する組織の違いによってAGOサブファミリーとPIWIサブファミリーに分類される(図B)。AGOサブファミリーメンバーは生殖組織を含む全ての組織で、PIWIサブファミリーメンバーは生殖組織(生殖細胞とそれを取り囲む生殖系体細胞)で特異的に発現する。それぞれのサブファミリーに属するアルゴノートの数は生物によって異なる。
 アルゴノートは、発現する組織の違いによってAGOサブファミリーとPIWIサブファミリーに分類される('''表''')。AGOサブファミリーメンバーは生殖組織を含む全ての組織で、PIWIサブファミリーメンバーは生殖組織(生殖細胞とそれを取り囲む生殖系体細胞)で特異的に発現する。それぞれのサブファミリーに属するアルゴノートの数は生物によって異なる。


 ショウジョウバエは5種類のアルゴノートを持ち、AGO1とAGO2はAGOサブファミリーに、Piwi、Aubergine、AGO3はPIWIサブファミリーに分類される<ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref><ref name=Yamashiro2018><pubmed>29281264</pubmed></ref>  [10, 11, 13](表)。ヒトは8種類のアルゴノートを持つが<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Sasaki2003><pubmed>12906857</pubmed></ref>  [14, 15]、そのうちの4つ(AGO1、AGO2、AGO3、AGO4)はAGOサブファミリーに、残りの4つ(PIWIL1/HIWI、PIWIL2/HILI、PIWIL3、PIWIL4/HIWI2)はPIWIサブファミリーに属する<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref>  [10, 15] (図B)。マウスは、4つのAGOメンバー(AGO1、AGO2、AGO3、AGO4)と、3つのPIWIメンバー(PIWIL1/MIWI、PIWIL2/MILI、PIWIL4/MIWI2)を持つ<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref>  [10, 15] (図B)。マウスのPIWIは全て雄特異的であることを特徴とする。
 ショウジョウバエは5種類のアルゴノートを持ち、AGO1とAGO2はAGOサブファミリーに、Piwi、Aubergine、AGO3はPIWIサブファミリーに分類される<ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref><ref name=Yamashiro2018><pubmed>29281264</pubmed></ref>  [10, 11, 13]。ヒトは8種類のアルゴノートを持つが<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Sasaki2003><pubmed>12906857</pubmed></ref>  [14, 15]、そのうちの4つ(AGO1、AGO2、AGO3、AGO4)はAGOサブファミリーに、残りの4つ(PIWIL1/HIWI、PIWIL2/HILI、PIWIL3、PIWIL4/HIWI2)はPIWIサブファミリーに属する<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref>  [10, 15] 。マウスは、4つのAGOメンバー(AGO1、AGO2、AGO3、AGO4)と、3つのPIWIメンバー(PIWIL1/MIWI、PIWIL2/MILI、PIWIL4/MIWI2)を持つ<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref>  [10, 15]。マウスのPIWIは全て雄特異的であることを特徴とする。


線虫は27種類のアルゴノートを持ち、そのうちの5メンバーはAGOサブファミリーに、3メンバーはPIWIサブファミリーに属する。残りのアルゴノートは線虫特異的でWAGO(Worm-specific Argonaute)と称される<ref name=Ketting2021><pubmed>33992161</pubmed></ref>  [16]。
 線虫は27種類のアルゴノートを持ち、そのうちの5メンバーはAGOサブファミリーに、3メンバーはPIWIサブファミリーに属する。残りのアルゴノートは線虫特異的でWAGO(Worm-specific Argonaute)と称される<ref name=Ketting2021><pubmed>33992161</pubmed></ref>  [16]。
{| class="wikitable"
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|+表. ショウジョウバエ、マウス、ヒトのAGOサブファミリーメンバーとPIWIサブファミリーメンバー
|+表. ショウジョウバエ、マウス、ヒトのAGOサブファミリーメンバーとPIWIサブファミリーメンバー
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| ヒト || AGO1 AGO2 AGO3 AGO4  || HIWI(PIWIL1) HILI(PIWIL2) PIWIL3 HIWI2(PIWIL4)  
| ヒト || AGO1 AGO2 AGO3 AGO4  || HIWI(PIWIL1) HILI(PIWIL2) PIWIL3 HIWI2(PIWIL4)  
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== ドメイン構造と立体構造 ==
== ドメイン構造と立体構造 ==
 全てのアルゴノートは、N、PAZ、MID、PIWIという4つの主要ドメインと、2つのリンカー(Linker-1とLinker-2)を持つ<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Nakanishi2022><pubmed>35736234</pubmed></ref>  [15, 17] (図1)。NドメインはRISC形成に寄与する。PAZドメインはガイド(小分子)RNAの3’末端に、MIDドメインは5’末端に結合する。PIWIドメインはRNaseH様構造をとっており、アルゴノートが標的RNAを切断するためのエンドヌクレアーゼ活性(スライサー活性ともいう)を担う<ref name=Nakanishi2022><pubmed>35736234</pubmed></ref><ref name=Song2004><pubmed>15284453</pubmed></ref>  [17, 18]。その活性中心に相当するアスパラギン酸-グルタミン酸-アスパラギン酸-ヒスチジン(Asp-Glu-Asp-His)の4つのアミノ酸を変異させると、RNA切断活性を示さなくなる。但し、ヒトのAGO3はこの4つのアミノ酸を持つにもかかわらず、エンドヌクレアーゼ活性を示さない。最初に立体構造が解明されたアルゴノートは、超高熱古細菌(Pyrococcus furiosus)のAGOである<ref name=Song2004><pubmed>15284453</pubmed></ref>  [18]。ヒトの4種類全てのAGOと、ショウジョウバエPiwi、カイコ(Bombyx mori)Piwiホモログ(Siwi)の立体構造も既に解かれている<ref name=Matsumoto2016><pubmed>27693359</pubmed></ref><ref name=Nakanishi2022><pubmed>35736234</pubmed></ref><ref name=Yamaguchi2020><pubmed>31913276</pubmed></ref>  [17, 19, 20]。
 全てのアルゴノートは、N、PAZ、MID、PIWIという4つの主要ドメインと、2つのリンカー(Linker-1とLinker-2)を持つ<ref name=Hutvagner2008><pubmed>18073770</pubmed></ref><ref name=Nakanishi2022><pubmed>35736234</pubmed></ref>  [15, 17] (図1)。NドメインはRISC形成に寄与する。PAZドメインはガイド(小分子)RNAの3’末端に、MIDドメインは5’末端に結合する。PIWIドメインはRNaseH様構造をとっており、アルゴノートが標的RNAを切断するためのエンドヌクレアーゼ活性(スライサー活性ともいう)を担う<ref name=Nakanishi2022><pubmed>35736234</pubmed></ref><ref name=Song2004><pubmed>15284453</pubmed></ref>  [17, 18]。その活性中心に相当するアスパラギン酸-グルタミン酸-アスパラギン酸-ヒスチジン(Asp-Glu-Asp-His)の4つのアミノ酸を変異させると、RNA切断活性を示さなくなる。但し、ヒトのAGO3はこの4つのアミノ酸を持つにもかかわらず、エンドヌクレアーゼ活性を示さない。最初に立体構造が解明されたアルゴノートは、超高熱古細菌(Pyrococcus furiosus)のAGOである<ref name=Song2004><pubmed>15284453</pubmed></ref>  [18]。ヒトの4種類全てのAGOと、ショウジョウバエPiwi、カイコ(Bombyx mori)Piwiホモログ(Siwi)の立体構造も既に解かれている<ref name=Matsumoto2016><pubmed>27693359</pubmed></ref><ref name=Nakanishi2022><pubmed>35736234</pubmed></ref><ref name=Yamaguchi2020><pubmed>31913276</pubmed></ref>  [17, 19, 20]。

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