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Tatsuyamori (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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== '''構造''' == | == '''構造''' == | ||
=== 周辺部=== | [[Image:成長円錐3.png|thumb|256x476px|図2 ニワトリ胚DRG神経細胞の成長円錐の微分干渉顕微鏡像(上)とアクチン繊維-微小管の二重蛍光顕微鏡像(下)]] 成長円錐は2次元基質上では扇状に広がった手のような構造で、その形態から[[周辺部]](Peripheral domain)と[[中心部]](Central domain)の2つの部分に大別される(図2、上)。また、周辺部と中心部の境界部分を[[移行帯]](Transition zone)として分類することもある。 | ||
=== 周辺部 === | |||
周辺部は扁平の構造で、成長円錐中央から放射状に伸びた細い指のような[[糸状仮足]](filopodia)の間を、水掻きのような薄いシート状の[[葉状仮足]](lamellipodia)が埋めている(図2)。成長円錐の周辺部は[[アクチン]](actin)繊維に保持されているが、糸状仮足と葉状仮足ではアクチン繊維の形状が異なる。糸状仮足内のアクチン繊維は比較的長い束状の直線的な形状であるのに対し、葉状仮足内では短いアクチン繊維が枝分かれした網目状の構造をしている。また、周辺部には比較的動的な[[微小管]](microtuble)末端も見られる<ref><pubmed> 12105186 </pubmed></ref> 。周辺部のアクチン繊維は糸状仮足、葉状仮足とも[[プラス端]]を外側に向けて配向しており、先端部における単量体アクチンの重合によるアクチン繊維の伸長が糸状仮足や葉状仮足の周辺部への拡大につながり、成長円錐の形質膜を前方に推し進める原動力となっている。 | 周辺部は扁平の構造で、成長円錐中央から放射状に伸びた細い指のような[[糸状仮足]](filopodia)の間を、水掻きのような薄いシート状の[[葉状仮足]](lamellipodia)が埋めている(図2)。成長円錐の周辺部は[[アクチン]](actin)繊維に保持されているが、糸状仮足と葉状仮足ではアクチン繊維の形状が異なる。糸状仮足内のアクチン繊維は比較的長い束状の直線的な形状であるのに対し、葉状仮足内では短いアクチン繊維が枝分かれした網目状の構造をしている。また、周辺部には比較的動的な[[微小管]](microtuble)末端も見られる<ref><pubmed> 12105186 </pubmed></ref> 。周辺部のアクチン繊維は糸状仮足、葉状仮足とも[[プラス端]]を外側に向けて配向しており、先端部における単量体アクチンの重合によるアクチン繊維の伸長が糸状仮足や葉状仮足の周辺部への拡大につながり、成長円錐の形質膜を前方に推し進める原動力となっている。 | ||
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=== 中心部 === | === 中心部 === | ||
中心部は軸索からつながった成長円錐中央部の比較的厚みのある部分で、軸索から伸びている安定な微小管が主な構成成分である(図2)。軸索内の微小管は[[Microtubule-associated proteins]](MAPs)により束ねられているが、中心部では先端部がほどけ、一部の微小管は周辺部に向かって放射状に広がっている。中心部には比較的安定なアクチン繊維も存在し、細胞骨格の他にも[[ミトコンドリア]]や[[小胞体]]などの[[細胞小器官]]、[[膜小胞]]などを多く含んでいる。 | 中心部は軸索からつながった成長円錐中央部の比較的厚みのある部分で、軸索から伸びている安定な微小管が主な構成成分である(図2)。軸索内の微小管は[[Microtubule-associated proteins]](MAPs)により束ねられているが、中心部では先端部がほどけ、一部の微小管は周辺部に向かって放射状に広がっている。中心部には比較的安定なアクチン繊維も存在し、細胞骨格の他にも[[ミトコンドリア]]や[[小胞体]]などの[[細胞小器官]]、[[膜小胞]]などを多く含んでいる。 | ||
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== '''前進運動の分子メカニズム''' == | == '''前進運動の分子メカニズム''' == | ||
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成長円錐は①周辺部先端での糸状仮足の形成・伸長、②糸状仮足間への葉状仮足の流れ込みによる周辺部の拡大、③後方からの中心部の侵入、という3つの過程を繰り返すことで前方へと移動していく。この成長円錐の前方移動の分子メカニズムとして、前方移動の仕組みを自動車の走行に例えた[[クラッチ仮説]]が有力なものとして提唱されている。クラッチ仮説ではアクチン繊維のターンオーバーと成長円錐形質膜上に発現する接着分子、接着分子とアクチン繊維をつなぐ[[クラッチ分子]]、接着分子のリサイクリングが協調して働き、成長円錐が前方移動を行っていると説明される。 | 成長円錐は①周辺部先端での糸状仮足の形成・伸長、②糸状仮足間への葉状仮足の流れ込みによる周辺部の拡大、③後方からの中心部の侵入、という3つの過程を繰り返すことで前方へと移動していく。この成長円錐の前方移動の分子メカニズムとして、前方移動の仕組みを自動車の走行に例えた[[クラッチ仮説]]が有力なものとして提唱されている。クラッチ仮説ではアクチン繊維のターンオーバーと成長円錐形質膜上に発現する接着分子、接着分子とアクチン繊維をつなぐ[[クラッチ分子]]、接着分子のリサイクリングが協調して働き、成長円錐が前方移動を行っていると説明される。 | ||
===アクチン繊維の動態=== | === アクチン繊維の動態 === | ||
周辺部に存在するアクチン繊維は、プラス端を成長円錐先端に、[[マイナス端]]を中心部側に向けて規則正しく配置されており、単量体アクチンのアクチン繊維への付加は主に先端部で、アクチン繊維の解離は主に中心部側で起こる。同時にアクチン繊維全体は[[モータータンパク質]]である[[ミオシン(myosin)Ⅰb]]や[[ミオシンⅡ]]の作用により一定の速度(約5 μm/min)で先端部から中心部へと移動している。そのため、見かけ上、周辺部が運動を停止しているような場合でも、その内部に存在するアクチン繊維は先端部から中心部へと運ばれており、その移動分を補うように先端部では重合、中心部では脱重合が続いている[[(トレッドミル)]]。このような成長円錐における細胞骨格の動態は、Waterman-Storerのグループによって開発された[[蛍光スペックル顕微鏡法]]によって詳細な解析が可能である。 | 周辺部に存在するアクチン繊維は、プラス端を成長円錐先端に、[[マイナス端]]を中心部側に向けて規則正しく配置されており、単量体アクチンのアクチン繊維への付加は主に先端部で、アクチン繊維の解離は主に中心部側で起こる。同時にアクチン繊維全体は[[モータータンパク質]]である[[ミオシン(myosin)Ⅰb]]や[[ミオシンⅡ]]の作用により一定の速度(約5 μm/min)で先端部から中心部へと移動している。そのため、見かけ上、周辺部が運動を停止しているような場合でも、その内部に存在するアクチン繊維は先端部から中心部へと運ばれており、その移動分を補うように先端部では重合、中心部では脱重合が続いている[[(トレッドミル)]]。このような成長円錐における細胞骨格の動態は、Waterman-Storerのグループによって開発された[[蛍光スペックル顕微鏡法]]によって詳細な解析が可能である。 | ||
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アクチン繊維と結合した接着分子は、アクチンの後方移動に伴って成長円錐中心部へと運ばれてしまう。そのために、成長円錐ではその前方移動を恒常的に維持するため、後方へ移動した接着分子を周辺環境から脱着し、再び成長円錐先端部へと輸送し再利用する機構が存在すると考えられている。例えば、アクチン繊維の後方移動により中心部に到達したL1は、[[クラスリン]]依存的[[エンドサイトーシス]]によって膜小胞に取り込まれた後、微小管のガイドによって細胞質内を成長円錐先端部まで輸送され、形質膜に再挿入される。一方、インテグリンは成長円錐形質膜上を中心部から先端部に向かって順行性に移動しうることから、エンドサイトーシス非依存的な接着分子のリサイクル機構も存在すると考えられている。 | アクチン繊維と結合した接着分子は、アクチンの後方移動に伴って成長円錐中心部へと運ばれてしまう。そのために、成長円錐ではその前方移動を恒常的に維持するため、後方へ移動した接着分子を周辺環境から脱着し、再び成長円錐先端部へと輸送し再利用する機構が存在すると考えられている。例えば、アクチン繊維の後方移動により中心部に到達したL1は、[[クラスリン]]依存的[[エンドサイトーシス]]によって膜小胞に取り込まれた後、微小管のガイドによって細胞質内を成長円錐先端部まで輸送され、形質膜に再挿入される。一方、インテグリンは成長円錐形質膜上を中心部から先端部に向かって順行性に移動しうることから、エンドサイトーシス非依存的な接着分子のリサイクル機構も存在すると考えられている。 | ||
== 軸索ガイダンス== | == '''軸索ガイダンス''' == | ||
神経回路の形成過程において、成長円錐は細胞周辺に存在する軸索ガイダンス因子を検出するアンテナとして機能する。すなわち、成長円錐は軸索ガイダンス因子の空間情報を軸索の伸長方向の制御へと変換する上で極めて重要な構造である。成長円錐の運動性は糸状仮足と葉状仮足の伸展と退縮と相関しているが、特に糸状仮足は成長円錐の中でも初めに軸索ガイダンス因子に遭遇する場所であり、軸索ガイダンスにおける成長円錐の旋回運動の制御に重要であると考えられている。糸状仮足は誘引性ガイダンス因子に遭遇すると安定化され、一方反発性ガイダンス因子に遭遇すると退縮する。もし、この応答が成長円錐の前後軸に対し片側で起きると成長円錐はガイダンス因子に対し誘引あるいは反発する方向へと旋回する。このような成長円錐の旋回運動は経路選択や特定のチェックポイントにおいて重要である。 | |||
=== 軸索ガイダンス因子 === | === 軸索ガイダンス因子 === |
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